2016年11月01日

米国では、人々はどのように生命保険に加入しているのか(1)~リムラ&ライフハプンズの保険バロメータースタディより-生命保険加入率と加入者の充足度の状況-

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b.米国では団体生命保険が重要な役割を果たしている 
個人と生保会社が契約を結ぶ形態の個人保険だけで80%に及ぶ高い加入率が達成されているわが国と異なり、米国では個人生命保険の加入率は41%(「個人生命保険のみに加入している26%」+「個人生命保険・団体生命保険、両方に加入している15%」)と低い。

米国では歴史的に、人々が生命保険による保障を獲得する上で団体生命保険が重要な役割を果たしてきた。第二次世界大戦時、政府による賃金統制がしかれたことを受け各企業が優秀な人材を確保するために賃金とは別建ての給付として団体生命保険を相次いで導入するようになり、労働組合が賃金に代わる要求事項として団体生命保険の提供を要求するようになったことがその第一歩である。1949年には最高裁判所が、団体保険を団体交渉の対象とすることを認める判決を下したこともあって、以降、労使協定の中で団体生命保険が広く導入されることとなった。そのような経緯を経て今日、米国の多くの被雇用者は雇用主が提供する団体生命保険により家族への保障を獲得することができる。

なおLIMRAおよび生命保険文化センターは、それぞれ、ここで使用した個人ベースの加入率とは別途、世帯ベースの世帯加入率に関する調査結果を米国(LIMRA) 70%、わが国(生命保険文化センター、個人年金を含む)89.2%と発表している1
 
1 LIMRA “Life Insurance Ownership in Focus U.S. Household Trends — 2016”および生命保険文化センター『平成27年度「生命保険に関する全国実態調査」』より
2|団体生命保険と個人生命保険 
表1は年齢階層別、年収階層別に見た生命保険加入率の状況である。これを基にもう少し、米国における団体生命保険と個人生命保険の関係を見ていきたい。
表1 年齢階層別、年収階層別に見た生命保険加入率の状況
a.低年齢層、低年収層の加入率が極端に低い 
「①個人生命保険のみに加入している」、「②団体生命保険のみに加入している」、「③個人生命保険・団体生命保険、両方に加入している」という三つの態様を合計した④の「全体加入率」を見ると、年齢階層別では年齢階層が高くなるほど、年収階層別では年収階層が高くなるほど、加入率が高くなっている。また、低位層と高位層の加入率の差が大きい。

特に、年齢階層別では「18歳~35歳」が51%、年収階層別では「5万ドル未満」が41%と、極だって低い加入率を示していることが眼を引く。

もちろん20代半ばまでの独身若年層の生命保険加入率が低いこと、所得が少ない層が生命保険に加入するには困難が伴うことは容易に想像がつくが、両階層と他の階層の加入率には10%を超える格差が生じている。
 
b.団体生命保険が被雇用者の死亡保障の基本形態 
米国では団体生命保険が、中間層、一般世帯の死亡保障ニーズに応える第一番の生命保険商品という位置づけを与えられている。

表1の⑦は「②団体生命保険のみに加入している」加入率と「③個人生命保険・団体生命保険、両方に加入している」加入率を合計した「団体生命保険の加入率」である。

これを見ると、「⑦団体生命保険の加入率」では各年齢階層間で大きな相違がないことが分かる。総合的な「④生命保険加入率」が低い「18歳~35歳」層でも「⑦団体生命保険の加入率」は35%あり、「36歳~51歳」の40%や「52歳~64歳」の35%と比べて大差がない。

退職者の割合が高率になる「65歳以上」層において、勤務先企業・団体から提供を受ける「⑦団体保険の加入率」が小さくなることは当然であるし、一部に学生等の若年非就職者を含む「18歳~35歳」層や一部に退職者を含む「52歳~64歳」層の「⑦団体生命保険の加入率」が、全対象者が就業年齢である「36歳~51歳」の40%より若干低い35%であることは理解しやすい。

次に、年収階層別に「⑦団体生命保険の加入率」を見ると、「5万ドル未満」15%、「5~9.99万ドル」38%、「10万ドル以上」52%と、年収の高まりとともに加入率が高くなる。これは、年収の高い大手企業・団体ほど、被雇用者に対して、団体生命保険の提供が行われているということを示しているものと考えられる。

また、年収「5万ドル未満」層において⑦の数値が極端に小さくなっているのは、この階層の中に就職前の学生等の若者や団体生命保険を福利厚生として提供していない小規模の企業・団体に勤務している人たちが含まれていることが主な理由と思われる。

(2016年11月01日「保険・年金フォーカス」)

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