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サイバーリスク保険の普及-サイバーリスクは、保険でどこまでカバーできるのか?

保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員 篠原 拓也
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2――サイバーリスクとは
1|サイバーリスクは様々な形で進化し、政府や企業等にとって、大きな脅威となりつつある
インターネットの拡大を通じて、世界中で、コンピューター、スマートフォン、タブレットが接続されている。様々な情報が、デジタルデータ化される。そして、日々、膨大な量のデータが、通信されている。政府・自治体、企業、個人にとって、これらの情報を通じた、事業運営や活動が不可欠となりつつある。中でも、企業は、機密情報や顧客情報を多く抱え、その保護や管理に力を入れている。
一方、それらを狙った、サイバー犯罪は様々な形で進化し、中には、政府や企業等にとって、大きな脅威となるものも出てきている。悪意をもって他人のコンピュータのデータやプログラムを盗み見たり、改竄(かいざん)・破壊などを行うことが、その中心となっている。主なサイバーリスクとして、次の図表のようなものが挙げられる。
1 DDoSは、Distributed Denial of Serviceの略。DDoS攻撃は、分散型サービス拒否攻撃を指す。
2|サイバー犯罪による損害額は、世界全体で年間4,000億ドル以上
サイバー犯罪は、世界的に拡大している。2014年に公表された調査報告2によれば、年間の損害は、4,000億米ドル以上とされている3。同報告は、国別の損害額も示している。国内総生産(GDP)に対する損害額の比率で見ると、ドイツが1.60%と高い。次いでオランダが1.50%、ノルウェーが0.64%と、一部のヨーロッパ諸国で高くなっている。主要国では、アメリカは0.64%、中国は0.63%、イギリスは0.16%、フランスは0.11%などとなっている。日本は、0.02%と、他国に比べて低水準とされている。
2 “Net Losses: Estimating the Global Cost of Cybercrime Economic impact of cybercrime II”(Center for Strategic and International Studies, June 2014) より。
3 損害額の見積もりは、幅をもって示されている。少なくとも3,750億米ドル、最大で5,750億米ドルとされる。
3――サイバーリスクの特徴
サイバーリスクによる損害は、様々な形で現れる。例として、企業が攻撃を受けて、機密情報や、顧客情報が漏洩(ろうえい)して、損害を被るケースを考えてみよう。
個人情報の漏洩に対して、被害者への損害賠償のための賠償金が必要となる。もし、顧客との間で訴訟が発生すれば、そのための費用もかかる。原因調査や、再発防止策の策定のためにも、弁護士相談や、臨時雇用職員の人件費、社告のための費用など、様々な負担が発生する。また、その対応のために、通常の業務の一部を一定期間停止することになれば、その間の機会利益の喪失や、工場ライン等の事業維持の費用も発生する。
機密情報については、その流出に伴ない、市場での優位性を失うことや、風評被害を被ることもあり、その場合の損害は計り知れない。
これらの損害は、事案ごとに発生の仕方が異なる。従って、過去の事例のうち、将来の予想の参考になる要素は限られる。このため、サイバーリスクは、予想損害額の見積もりが難しいと言える。
(2016年09月13日「保険・年金フォーカス」)
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保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員
篠原 拓也 (しのはら たくや)
研究・専門分野
保険商品・計理、共済計理人・コンサルティング業務
03-3512-1823
- 【職歴】
1992年 日本生命保険相互会社入社
2014年 ニッセイ基礎研究所へ
【加入団体等】
・日本アクチュアリー会 正会員
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