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- 【7月米FOMC】予想通り、政策金利据え置き。景気判断上方修正も9月利上げの可能性低い
2016年07月28日
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1.金融政策の概要:予想通り、政策金利を据え置き、景気判断を上方修正
米国で連邦公開市場委員会(FOMC)が7月26-27日(現地時間)に開催された。市場の予想通り、FRBは政策金利を据え置いた。
今回発表された声明文では、景気の現状認識について、経済活動や労働市場に加え、家計消費の評価を上方修正した。また、景気見通しについても、経済見通しに対する短期的なリスクが低減したことを示した。一方、ガイダンス部分は前回から表現に変更はなく、次回利上げ時期を示唆する表現は盛り込まれなかった。
今回の金融政策決定に際しては、カンザスシティー連銀のジョージ総裁が0.25%の利上げを主張し、反対票を投じた。
今回発表された声明文では、景気の現状認識について、経済活動や労働市場に加え、家計消費の評価を上方修正した。また、景気見通しについても、経済見通しに対する短期的なリスクが低減したことを示した。一方、ガイダンス部分は前回から表現に変更はなく、次回利上げ時期を示唆する表現は盛り込まれなかった。
今回の金融政策決定に際しては、カンザスシティー連銀のジョージ総裁が0.25%の利上げを主張し、反対票を投じた。
2.金融政策の評価:短期的なリスク低減評価でも、慎重な金融政策運営は継続の見込み
政策金利の据え置きは当研究所の予想通り。前回会合(6月)では金融政策の意思決定において、労働市場の悪化懸念と、BREXITリスクが主要なテーマになっていた。労働市場については、声明文でも触れられているように、6月の雇用が大幅な増加を示したことから一旦懸念は払拭された。一方、BREXITが米経済に与える悪影響について、イエレン議長は投資家のリスク回避姿勢が強まることで、リスク性資産価格が下落することや、安全通貨としてのドルが上昇することを通じて影響する可能性に言及していた。BREXITリスクは顕在化したものの、足元は資本市場、為替市場ともに安定しており、同議長が懸念していた経路からの米経済への影響は限定的となっている。このため、FRBは足元の米景気回復に自信を深めていると判断できる。
もっとも、BREXITについては、EU離脱時期や手続きも含めて不透明な部分が多く、今後資本市場や為替相場が不安定な状況となる可能性も否定できない。実際、声明文の景気見通し部分で、「短期的なリスクが低減」と短期的であることを示した一方、モニタリング項目として世界経済や金融情勢を残したことから、金融政策の意思決定において引き続きBREXITリスクを慎重に判断するとみられる。
当研究所では、BREXITが回避される前提で、9月追加利上げを予想していた。しかしながら、BREXITが現実化したことから、FRBはこれまで以上に慎重な金融政策運営を実施すると予想している。このため、FRBは米景気回復に自信を深めているものの、追加利上げ時期を12月まで先送りすると予想する。
もっとも、BREXITについては、EU離脱時期や手続きも含めて不透明な部分が多く、今後資本市場や為替相場が不安定な状況となる可能性も否定できない。実際、声明文の景気見通し部分で、「短期的なリスクが低減」と短期的であることを示した一方、モニタリング項目として世界経済や金融情勢を残したことから、金融政策の意思決定において引き続きBREXITリスクを慎重に判断するとみられる。
当研究所では、BREXITが回避される前提で、9月追加利上げを予想していた。しかしながら、BREXITが現実化したことから、FRBはこれまで以上に慎重な金融政策運営を実施すると予想している。このため、FRBは米景気回復に自信を深めているものの、追加利上げ時期を12月まで先送りすると予想する。
3.声明の概要
(金融政策の方針)
(フォワードガイダンス、今後の金融政策見通し)
(景気判断)
(景気見通し)
- FF金利の誘導目標を0.25-0.50%の水準に維持(変更なし)
- 政府機関債、MBSの償還分はMBSへ再投資(変更なし)
- 米国債の償還分は米国債へ再投資(変更なし)
- FF金利の正常化が十分に進展するまでこの方針を続けることを見込む(変更なし)
- 長期債を高水準で保有し続けることで緩和的な金融環境を維持する(変更なし)
(フォワードガイダンス、今後の金融政策見通し)
- 金融政策スタンスは依然として緩和的であるため、更なる労働市場の改善や物価の2%への上昇を下支えする(変更なし)
- FF金利の目標レンジに対する将来の調整時期や水準の決定に際して、委員会は経済の現状と見通しを雇用の最大化と2%物価目標に照らして判断する(変更なし)
- これらの判断に際しては、雇用情勢、インフレ圧力、期待インフレ、金融、海外情勢など幅広い情報を勘案する(変更なし)
- 現状でインフレ率が2%を下回っている状況に照らして、委員会は実績と物価目標に向けた見通しを注意深くモニターする(変更なし)
- 委員会は、FF金利の緩やかな上昇のみを正当化するような経済状況の進展を予想しており、暫くの間、中長期的に有効となる水準を下回るとみられる(変更なし)
- しかしながら、実際のFF金利の経路は、今後入手可能なデータに基く経済見通しによる(変更なし)
(景気判断)
- 労働市場が強くなり、経済活動は適度な成長を示した(前回の”経済活動は加速したとみられるものの、労働市場の回復ペースは鈍化した“から上方修正)
- 雇用増加は、5月の軟調な伸びの後に、力強い伸びとなった(今回追加)
- 就業者数と他の労働指標はここ数ヶ月で労働力の活用が増加したことを示している(今回追加)
- 家計消費は力強く増加した(家計消費の伸びを”continue to improve”から”growing strongly”に上方修正)
- 住宅市場は改善が継続(今回削除)
- 設備投資は軟調となっている(変更なし)
- 純輸出からの足かせは弱まった(今回削除)
- インフレ率は、これまでのエネルギー価格や、エネルギー以外の輸入品の価格下落を反映して、2%の長期的な目標を下回り続けている(変更なし)
- 市場が織り込むインフレ率は低位に留まった(”declined”から ”remain lowに小幅な変更)
- ほとんどの調査に基く長期物価見通しは、最近数ヶ月は全般的に変化に乏しい(変更なし)
(景気見通し)
- 委員会は、金融政策スタンスの漸進的な調整により、経済活動は緩やかに拡大し、労働市場の指標が強くなると、現状で予想している(変更なし)
- インフレ率は、エネルギー価格のこれまでの下落もあって、短期的に低水準に留まるとみられる(変更なし)
- エネルギーや輸入価格のこれまでの下落といった一時的な要因が解消することや労働市場の更に強くなることによって、(インフレ率は)中期的には2%に向けて緩やかに上昇すると予測する(小幅な変更)
- 景気見通しに対する短期的なリスクは低減した(今回追加)
- 委員会は、引き続きインフレ動向と世界経済および金融情勢を注視する(変更なし)
(2016年07月28日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1824
経歴
- 【職歴】
1991年 日本生命保険相互会社入社
1999年 NLI International Inc.(米国)
2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
2014年10月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
窪谷 浩のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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