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普通の家計の貯蓄額はいくらか?-1805万円それとも997万円?
基礎研REPORT(冊子版) 2016年7月号

櫨(はじ) 浩一
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1――平均値は平均的ではない
平均という言葉には「よく見かける」、「典型的な」という意味合いが込められており、「平均的なサラリーマン」とか「平均的な家計」という言い方をする。身長がクラスの平均値の近くの人は、身長の順番に並べば大体真ん中あたりに位置する。テストの点数なども平均点であれば、成績の順位はクラスの真ん中あたりで、ごく普通の成績という評価になる。しかし資産や所得については、金額が平均値だということは平均的だということではない。
2――普通の家計の貯蓄は997万円
ビル・ゲイツ氏がいるレストランにいた客の金融資産保有金額の平均値を計算しても、普段レストランに来る客がどれくらいの資産を持っているのかという問いの答えにはならない。教科書には、こうしたときには平均値ではなく中央値(金額の多い方から並べてちょうど真ん中の人の保有額)を使うべきだと書いてある。レストランに最初にいた客の資産額はそれぞれ異なっているだろうが、平均値の75億ドルと比べれば、4番目に多い人でも、5番目の人でも、資産保有額はほぼ同じと言っても良いくらいの差だろう。
家計調査で見た家計の貯蓄額は、最初に述べたように平均で1805万円だ。しかし、保有している貯蓄額の多い順に世帯を並べたときに真ん中になる世帯の貯蓄額(中央値)は997万円となっており、平均値の1805万円を大きく下回っている。これは高額の貯蓄を持っている世帯が、平均を押し上げてしまうためだ。
3――もっと中央値に注目を
米国商務省が発表している家計の所得や貧困に関する資料では、中央値が最も重要な統計数値として扱われているのに比べると、日本では中央値はほとんど注目されることがない。2015年平均の家計調査の結果について、マスコミ報道で中央値に言及されたものは見かけない。そもそも日本の統計で中央値が発表されているものはほとんど無いのが実情だ。
平均所得や平均貯蓄額といった平均値が、標準的な世帯の状況を表しているわけではないという点について、日本では十分認識されているようには見えない。政府がもっと多くの指標について中央値を公表するよう努力するとともに、統計について正しく理解できるように学校での教育に力を入れることが、正しい認識を広める第一歩となると考える。
(2016年07月07日「基礎研マンスリー」)
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