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徒歩帰宅訓練、やってみました !~そうか、そうだったのか! 点と点がつながる地上踏査~

川村 雅彦
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25㎞の徒歩帰宅訓練
会社(千代田区の市ヶ谷)から自宅(東京都西部の市部)まで直線距離22㎞・道距25㎞を、還暦を過ぎ膝も完全ではない身体がどこまで耐えられるのか。どのルートがベストで、何時間かかるのか。ある知人は千葉市まで8時間かかったと言い、別の知人は途中で断念して会社に戻ったと言う。
山手線を越すまでが一苦労
この道を歩くのは初めてではあったが、1kmほど行くと、さっそく“ややこしい”陸橋が出てきた。そのため、1分で済むところをあちこちウロウロして15分も費やした。夜ならば、間違いなく迷っていた。ここに限らず、都心部は大きな道路が錯綜し、様々な建物が密集しているため、路上で地図を見ても位置関係がつかみにくい。交差点、特に三叉路は悩ましい。それでも進むしかない。
新宿に近づくにつれ、歩道は狭くないが混み始め、前から来る人も増えてきた。かなり歩きにくい。いろんな外国語も聞こえてくる。新宿って、こんなに人が多いのかと改めて驚いた。実際の災害時には、この何倍にも膨れあがるだろう。
人混みの中を何とか歩いて行くと、前方を塞ぐように横切る「新宿大ガード」が見えてきた。JR山手線など何本もの線路が通るこの大ガードで、靖国通りは終わる。時計を見ると、午後5時半。地下鉄なら3駅だが、5kmの距離を1時間30分かかったことになる。
景色は一転、視界が広がり、ひたすら歩く
ただ、そのまま進むと自宅から北に逸れるので、どこかで玉川上水に沿う五日市街道に入る必要があるが、歩きながら判断せざるを得ない。途中、「五日市街道入口」という交差点もあったが、ここは見切って少し先の三鷹付近で入ることにした。商店街の明かりで、歩道はまだ明るい。
やがて大きな三叉路にさしかかると、思いがけなく「五日市街道方面」の標識が街灯の薄明かりの中でみえた。既に午後9時を過ぎて人通りはなく、想定したルートではないため不安もあったが、意を決してそちらに進んだ。
暫く行くと、武蔵野大学前の五叉路に出た。ここでも悩んだ。しかし、何と幸運なことか、偶然にも「鈴木街道」の小さな看板を発見したのである。これは、日頃通勤で通る自宅のそばの道である。
そうか、ここが始点だったのか。それなら、このまま行けばよい。驚きと同時にほっとして、急に自宅に近づいた気がした。あと5km、急ごう。体調も特に問題ない。住宅街の夜道ゆえ、すれ違う人はほとんどいない。やがて、「都立小金井公園」の北側に出ると、見慣れた地形や建物が増えてきた。
後は時間の問題。そして、10時半、ついに自宅にたどり着いた。途中三回ほどベンチで休憩したが、6時間30分の徒歩帰宅であった。平均時速3.8km。これは人の通常歩速よりやや遅い。
点と点がつながり、新発見の連続
日頃、仕事や生活で当然のように電車に乗る。郊外部では地上の車窓風景があるため、自分がどこにいるかわかる。しかし、都心部の地下鉄では乗り降りの駅名は確認するが、どこをどう走っているのか、ましてや地上ならどの辺りなのか、ほとんど意識したことがない。ここが帰宅困難の一つの盲点かも知れない。
あぁ、ここだったのか、と歩きながら様々な“発見”もあった。細かく言えば切がないが、上述の鈴木街道の発見は、私にとって今回の徒歩帰宅訓練における最大の発見だったと思う。やはり、事前に地上踏査しておくことで、“帰宅”に関する様々な情報を得ることができると確信した。
頭の中の“ナビゲーション・マップ”が必要
災害は会社にいる時に起きるとは限らない。外出先で起きるかもしれない。その意味で、日頃よく行く所からどのように帰宅するかをシミュレートしておくことも必要である。その際役に立つのが、頭の中の“ナビゲーション・マップ”であろう。その範囲を広げ、かつ精度を上げるために、いつかまた会社とは異なる地点から徒歩帰宅してみようと思う。
(参考)東京都防災マップ 帰宅支援対象道路一覧
帰宅ルートの全体イメージは、東京都のホームページ「東京都防災マップ」の帰宅支援対象道路のカラフルな地図を基に事前に決めていた。当日の通信事情がよければ、スマホも役に立つと思う。
(2016年06月10日「研究員の眼」)
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