2016年03月17日

貿易統計16年2月~輸出数量(季節調整値)は横ばい圏で踏みとどまる

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.季節調整値の貿易収支は4ヵ月連続の黒字

財務省が3月17日に公表した貿易統計によると、16年2月の貿易収支は2,428億円と2ヵ月ぶりの黒字となったが、事前の市場予想(QUICK集計:3,871億円、当社予想も3,871億円)を若干下回る結果となった。輸出は前年比▲4.0%(1月:同▲12.9%)と5ヵ月連続で減少したが、輸入が前年比▲14.2%(1月:同▲17.8%)と輸出の減少幅を上回ったため、貿易収支は前年に比べ6,688億円の改善となった。
輸出の内訳を数量、価格に分けてみると、輸出数量が前年比0.2%(1月:同▲9.1%)、輸出価格が前年比▲4.2%(1月:同▲4.1%)、輸入の内訳は、輸入数量が前年比▲2.3%(1月:同▲5.0%)、輸入価格が前年比▲12.2%(1月:同▲13.5%)であった。
貿易収支の推移/貿易収支(季節調整値)の推移/輸出金額の要因分解/輸入金額の要因分解
季節調整済の貿易収支は1,661億円の黒字となり、1月の732億円から黒字幅が拡大した。輸出(前月比▲2.4%)、輸入(前月比▲4.0%)ともに減少したが、輸入の減少幅が輸出の減少幅を上回ったことが黒字幅の拡大につながった。
原数値の貿易収支は15年9月から赤字と黒字を繰り返しているが、貿易収支には季節性があるため、実勢を判断するためには季節調整値を用いることが適切である。貿易収支は、実態としては15年11月に東日本大震災以降初の黒字となった後、黒字幅の拡大傾向が続いている。
 

2.輸出数量は横ばい圏の動き

地域別輸出数量指数(季節調整値)の推移 2月の輸出数量指数を地域別に見ると、米国向けが前年比▲3.2%(1月:同▲8.4%)、EU向けが前年比10.2%(1月:同▲1.2%)、アジア向けが前年比1.1%(1月:同▲11.9%)となった。
季節調整値(当研究所による試算値)では、米国向けが前月比2.6%(1月:同1.2%)、EU向けが前月比5.7%(1月:同▲1.5%)、アジア向けが前月比▲0.1%(1月:同▲0.0%)、全体では前月比▲0.6%(1月:同0.9%)となった。
年明け以降、海外経済に対して悲観的な見方が広がっているが、16年1、2月の輸出数量指数(季節調整値)の平均を15年10-12月期と比べると米国向けが2.5%、EU向けが2.8%、アジア向けが0.3%高い水準にある。アジア向けはやや弱めだが、米国、EU向けは持ち直しており、全体では横ばい圏の動きで踏みとどまっている。現時点では輸出の失速を起点とした景気の急速な悪化は回避されている。
なお、景気の急減速が特に懸念されている中国向けの輸出数量指数(季節調整値)は15年10-12月期に前期比1.7%と8四半期ぶりの上昇となった後、16年1、2月の水準は10-12月期を1.1%上回り、むしろ持ち直しつつある。

3.貿易黒字はしばらく続くが、定着の可能性は低い

原油価格(ドバイと入着ベース)の推移 2月の通関(入着)ベースの原油価格は1バレル=30.4ドル(当研究所による試算値)となり、1月の37.1ドルから大きく低下した。ただし、ドバイ原油は1月中旬の20ドル台半ばから足もとでは30ドル台半ばまで持ち直しており、通関ベースの原油価格も4月には30ドル台後半まで上昇することが見込まれる。
当研究所では原油価格の持ち直しが続くことを想定しており、円高の進展、海外経済の減速などから輸出は当面横ばい圏で推移すると予想している。このため、貿易黒字はしばらく続くものの、それが定着する可能性は低いと考えている。
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斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2016年03月17日「経済・金融フラッシュ」)

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