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韓国における給付付き税額控除制度の現状と日本へのインプリケーション―軽減税率より給付付き税額控除?―

生活研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 金 明中
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韓国における所得税の課税単位は個人単位であるが、勤労奨励税制は世帯単位で該当するか否かの審査がされる。勤労奨励税制の適用対象は導入初期から2014年までには雇用者に限定されていたが、2015年からはその対象範囲が自営業者まで拡大された。但し、事業者登録をしていない事業者や弁護士、弁理士、公認会計士、医師、薬剤師等の専門職事業者は対象から除外される。施行初期に雇用者だけを対象とした理由は自営業者の所得捕捉率が雇用者に比べて低かったからである。
勤労奨励金の申請は定期申請と期間後申請に区分されており、定期申請は毎年5月1日から6月1日までに申し込むことになっている。一方、期間後申請の申請期間は毎年6月2日から12月1日までで、期間後申請をした場合は勤労奨励金と子ども奨励金11が10%ずつ減額され支給される。勤労奨励金の申請は税務署から案内がされる申請案内対象者12の場合、電話(ARS)、携帯電話、モバイルウェブ、インターネットからの申請か税務署を直接訪問して申請することができる13。
勤労奨励金や子ども奨励金を申請するためには次のような四つの基準を満たす必要がある。
(1)世帯基準
- 勤労奨励金:毎年12月31日現在、配偶者または満18歳未満の扶養する子どもがいるか、あるいは申請者が満60歳以上である必要がある。
- 子ども奨励金:毎年12月31日現在、満18歳未満の扶養する子どもがいる必要がある。
・世帯主が扶養する子どもや同居している養子縁組した子ども。しかしながら一定の場合には孫や兄弟姉妹も扶養家族に含まれる14。
・前年度12月31日現在満18歳未満であること。但し重度の障がいがある者の場合年齢制限はない。
・年間の合計所得金額が100万ウォン以下である子ども。
(2)総所得基準
- 勤労奨励金:勤労奨励金を受給するためには前年度の夫婦合算総所得が図表9の基準額未満である必要がある(配偶者と扶養する子どもがいない60歳以上の高年齢者一人世帯は単身世帯として区分して支給)。
11 2015年度からは申請者に扶養する子どもがいる場合に、子ども一人当たり年間最大50万ウォンが支給される子ども奨励金が新しく導入された。
12 前年所得を基準として勤労奨励金や子ども奨励金が受給できると判別された世帯。
13 申請案内対象者でない場合は、インターネットや税務署のみで申請できる。
14 親がいない孫や兄弟姉妹を扶養する者、親(父あるいは母のみがいるケースを含む)がいない孫や兄弟姉妹を扶養する者で、親の年間の合計所得金額が100万ウォン以下で、その父あるいは母が障がい者雇用促進法及び職業リハビリテーション法による重度の障がいがある者あるいは「5.18民主化運動 」関連者補償等に関する法律で障がい等級3級以上に指定された者、父あるいは母のみいる孫を扶養する場合で、その父あるいは母が18歳未満であり、その父あるいは母の年間の合計所得金額が100万ウォン以下である者。
韓国における勤労奨励制度の給付体系の最も大きな特徴としては、勤労所得の水準により給付額が逓増区間(phase-in range)、定額区間(flat range)、逓減区間(phase-out range)という三つの区間に区分されることである。逓増区間(phase-in range)は、勤労所得が増加することにより勤労奨励金が定率で増加する区間、定額区間(flat range)は勤労所得の増加と関係なく最大給付額が支給される区間、逓減区間(phase-out range)は、勤労所得が増加することにより勤労奨励金が定率で減少する区間である。
例えば、単身世帯(配偶者や扶養する子どもがいない60歳以上の高年齢者一人世帯)の場合、年間総給与額等が600万ウォンまでが逓増区間であり、働けば働くほど総所得が増加する。また、年間総給与額等が600~900万ウォンの場合は 70万ウォンが定額支給される。最後に年間総給与額等が900万~1,300万ウォンの場合は年間総給与額等が増加すれば増加するほど勤労奨励金が減額される(図表11)。世帯種類別勤労奨励金の計算方法は図表12の通りである。
(2016年03月15日「基礎研レポート」)

生活研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任
金 明中 (きむ みょんじゅん)
研究・専門分野
高齢者雇用、不安定労働、働き方改革、貧困・格差、日韓社会政策比較、日韓経済比較、人的資源管理、基礎統計
03-3512-1825
- プロフィール
【職歴】
独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年9月ニッセイ基礎研究所へ、2023年7月から現職
・2011年~ 日本女子大学非常勤講師
・2015年~ 日本女子大学現代女性キャリア研究所特任研究員
・2021年~ 横浜市立大学非常勤講師
・2021年~ 専修大学非常勤講師
・2021年~ 日本大学非常勤講師
・2022年~ 亜細亜大学都市創造学部特任准教授
・2022年~ 慶應義塾大学非常勤講師
・2024年~ 関東学院大学非常勤講師
・2019年 労働政策研究会議準備委員会準備委員
東アジア経済経営学会理事
・2021年 第36回韓日経済経営国際学術大会準備委員会準備委員
【加入団体等】
・日本経済学会
・日本労務学会
・社会政策学会
・日本労使関係研究協会
・東アジア経済経営学会
・現代韓国朝鮮学会
・韓国人事管理学会
・博士(慶應義塾大学、商学)
金 明中のレポート
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