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住宅取得に対する消費税率引き上げの影響-2013、2014年における戸建注文住宅の動向
基礎研REPORT(冊子版) 2016年2月号

社会研究部 都市政策調査室長・ジェロントロジー推進室兼任 塩澤 誠一郎
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1――はじめに
2――消費税の影響
消費税率引き上げが、住宅の質に与えた影響を、平均延べ床面積の推移でみると、平均延べ床面積が最も小さい20代は、2012年度から直線的に低下しており、30代は20代よりゆるやかではあるが同様に低下している。40代は2012年度の133.2㎡から2013年度は134.1㎡とやや上昇し、2014年は反転して、2012年を下回る131.5㎡となっている。
これに対し、50代は、2012年の138.3㎡から、2013年が142.4㎡、2014 年が144.3㎡と直線的に上昇している。[図表4]
このように、資金力のない低年齢層は、延べ床面積を縮小させることによって、資金的負担を調整していたと読み取れる。
3―消費税率引き上げに伴う負担軽減措置の効果
「住宅ローン減税」2は、消費税率の引き上げに対応して、平成25年度税制改正で適用期間が延長されるとともに、最大控除額が200万円から400万円に倍増され、住民税からの控除上限額も引き上げられるなど、大幅に拡充された。
「住宅ローン減税」が、住宅取得に効果があったかどうかを問う設問では、「大きい効果があった」と「まあ効果があった」との合計「効果あり」は、全体が、2013年に79%、2014年に83.2%で、4.2ポイントの増加である。
40歳未満では、2013年80.7%、2014年86.9%で、6.2ポイントの増加であり、全体に比べ、40歳未満に効果が高い結果となっている。[図表5]
「すまい給付金」3は、「住宅ローン減税」の効果が及びにくい低収入層に対し、住宅ローン減税とあわせて、消費税率引き上げによる負担の軽減を図るために導入された制度である。
すまい給付金が、住宅取得に効果があったかどうかを問う設問を見ても、2014年全体の「大きい効果があった」が15%、「まあ効果があった」が33.9%であるのに対し、40歳未満では、「大きい効果があった」が16.2%、「まあ効果があった」は37.6%と高くなっている。[図表6]
このように、「住宅ローン減税」、「すまい給付金」は、消費税増税に伴う負担軽減措置として導入されたが、比較的年収の低い低年齢層に、より効果が高かったことがわかる。
4――おわりに
2012年以降、建築費の高騰が続いており、今後も続くことになれば、消費税率の引き上げと相まって、取得資金負担がさらに高まり、取得を手控える層も増える可能性が高く、住宅の質のさらなる低下も懸念される。
低年齢層には、子どもの出生や成長を動機に住宅取得を検討する人も多い。住宅取得を手控える人が増えたり、取得できても、住宅の質が低下したりするならば、将来の日本を支えるために必要不可欠な少子化対策、次世代育成等に対しても、多大なマイナスの影響を及ぼすと考えられる。
「住生活の基盤である良質な住宅の供給」という住生活基本法の基本理念から遠ざかる状況にならないよう、現行の負担軽減策が十分かどうか、2015年以降の住宅取得の動向を見ながら、十分検証する必要があるだろう。
消費税率引上げの資金計画への圧迫感が8割にも達するという調査結果を見ると、住宅取得を望む収入の低い低年齢層を中心に、さらなる負担軽減策が期待されていると考えられる。
期待感の高い住宅取得という観点だけでなく、少子化対策、次世代育成等への影響という観点からも、年収の低い低年齢層に対する最も効果的な負担軽減策が検討・導入されることを期待したい。
(2016年02月08日「基礎研マンスリー」)

03-3512-1814
- 【職歴】
1994年 (株)住宅・都市問題研究所入社
2004年 ニッセイ基礎研究所
2020年より現職
・技術士(建設部門、都市及び地方計画)
【加入団体等】
・我孫子市都市計画審議会委員
・日本建築学会
・日本都市計画学会
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