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- 日銀短観(12月調査)~大企業製造業の景況感は横ばい、先行きは悲観的
2015年12月14日
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3.需給・価格判断:海外需給は悪化、マージンは改善
(需給判断:海外需給は悪化)
大企業製造業の国内製商品・サービス需給判断D.I.(需要超過-供給超過)は前回比横ばい、非製造業では1ポイント低下した。個人消費の伸び悩みが影響したとみられる。一方、製造業の海外での製商品需給は前回から1ポイント低下。新興国の景気減速が影響したとみられる。
先行きについては、国内需給は製造業・非製造業ともに1ポイント低下、製造業の海外需給は1ポイントの上昇が見込まれている。いずれも小動きに留まり、需給の明確な改善は見込まれていない。
中小企業では、国内需給は製造業で1ポイント低下、非製造業では横ばいとなった。製造業の海外需給は3ポイントとかなり低下している。先行きについては、国内需給は製造業・非製造業ともに小幅に悪化する一方、海外需給は小幅に改善しているが、大企業同様、明確な改善は見込まれていない(図表4)。
(価格判断:仕入コスト低下でマージン改善)
大企業製造業の販売価格判断D.I. (上昇-下落)は前回から4ポイント低下、非製造業では横ばいとなった。円安による輸入コスト転嫁の動きは一服しているようだ。一方、仕入価格判断D.I. (上昇-下落)は製造業で6ポイント低下、非製造業でも3ポイント低下しており、引き続き原油などの資源価格下落と円安一服によって仕入コスト増加圧力が緩和した状況がうかがわれる。製造業、非製造業ともに、販売価格D.I.の低下幅を仕入価格D.I.の低下幅が上回ったため、両者の差し引きであるマージン(利鞘)は前回から拡大している。
販売価格判断D.I.の3ヵ月後の先行きについては、製造業では横ばい、非製造業では2ポイントの低下が見込まれている。企業は今後の価格引き上げについて慎重に見ているようだ。一方、仕入価格判断D.I.は製造業で5ポイント上昇、非製造業で1ポイントの上昇が見込まれている。ともに販売価格D.I.が上昇しない一方で仕入価格D.I.が上昇しているため、マージンは縮小に転じることが見込まれている(図表5)。
中小企業の販売価格判断D.I.は製造業が前回から3ポイント低下、非製造業ではまるぽいんとのていか横ばいとなった。一方で、仕入価格判断D.I.は製造業で8ポイント低下、非製造業でも2ポイント低下したため、差し引きであるマージンは、大企業同様、それぞれで拡大している。
先行きについては、販売価格D.I.が製造業で2ポイント低下する一方、非製造業では2ポイント上昇している。一方、仕入価格判断D.I.は製造業・非製造業ともに5ポイント上昇しており、マージンの縮小が想定されている。
大企業製造業の国内製商品・サービス需給判断D.I.(需要超過-供給超過)は前回比横ばい、非製造業では1ポイント低下した。個人消費の伸び悩みが影響したとみられる。一方、製造業の海外での製商品需給は前回から1ポイント低下。新興国の景気減速が影響したとみられる。
先行きについては、国内需給は製造業・非製造業ともに1ポイント低下、製造業の海外需給は1ポイントの上昇が見込まれている。いずれも小動きに留まり、需給の明確な改善は見込まれていない。
中小企業では、国内需給は製造業で1ポイント低下、非製造業では横ばいとなった。製造業の海外需給は3ポイントとかなり低下している。先行きについては、国内需給は製造業・非製造業ともに小幅に悪化する一方、海外需給は小幅に改善しているが、大企業同様、明確な改善は見込まれていない(図表4)。
(価格判断:仕入コスト低下でマージン改善)
大企業製造業の販売価格判断D.I. (上昇-下落)は前回から4ポイント低下、非製造業では横ばいとなった。円安による輸入コスト転嫁の動きは一服しているようだ。一方、仕入価格判断D.I. (上昇-下落)は製造業で6ポイント低下、非製造業でも3ポイント低下しており、引き続き原油などの資源価格下落と円安一服によって仕入コスト増加圧力が緩和した状況がうかがわれる。製造業、非製造業ともに、販売価格D.I.の低下幅を仕入価格D.I.の低下幅が上回ったため、両者の差し引きであるマージン(利鞘)は前回から拡大している。
販売価格判断D.I.の3ヵ月後の先行きについては、製造業では横ばい、非製造業では2ポイントの低下が見込まれている。企業は今後の価格引き上げについて慎重に見ているようだ。一方、仕入価格判断D.I.は製造業で5ポイント上昇、非製造業で1ポイントの上昇が見込まれている。ともに販売価格D.I.が上昇しない一方で仕入価格D.I.が上昇しているため、マージンは縮小に転じることが見込まれている(図表5)。
中小企業の販売価格判断D.I.は製造業が前回から3ポイント低下、非製造業ではまるぽいんとのていか横ばいとなった。一方で、仕入価格判断D.I.は製造業で8ポイント低下、非製造業でも2ポイント低下したため、差し引きであるマージンは、大企業同様、それぞれで拡大している。
先行きについては、販売価格D.I.が製造業で2ポイント低下する一方、非製造業では2ポイント上昇している。一方、仕入価格判断D.I.は製造業・非製造業ともに5ポイント上昇しており、マージンの縮小が想定されている。
4.売上・収益計画:15年度収益計画は売上で下方修正、利益で上方修正
15年度収益計画(全規模全産業)は、売上高が前年度比0.5%減(前回は0.4%増)、経常利益が5.4%増(前回は3.3%増)となった。売上が下方修正される一方、利益は上方修正されている(図表6~8)。売上が伸びない中で経常利益が上方修正されたのは採算の改善を織り込んだためだ。下記のとおり、事業計画の前提となる為替レートがやや円安方向に修正されたうえ、原油などの資源価格下落が反映されたものと考えられる。ただし、製造業では、年度下期の採算悪化が強く織り込まれたため、非製造業の上方修正が全体の上方修正に繋がった形となっている。
15年度想定為替レート(大規模製造業)は119.4円(上期120.84円、下期118.00円)と、前回の117.39円から2円程度、円安ドル高方向に修正されている。今回調査時点では、前回調査時点と比べて為替の実勢がやや円安となったうえ、前回までは実勢に比べて若干円高水準での計画だっただけに、実勢を反映する動きが出た。
なお、今回の下期想定レートも、足元の実勢である121円程度よりは円高水準であるが、かなり距離感が詰まってきた。米国は今月にも利上げに向かうとみられるが、為替レートの先行きに対する市場の見方は、昨今やや分かれている。筆者は円安基調継続とみるが、そうなった場合は、次回以降の収益計画において一段と円安が織り込まれていくことで、大企業・製造業を中心に上方修正が入るだろう。
15年度想定為替レート(大規模製造業)は119.4円(上期120.84円、下期118.00円)と、前回の117.39円から2円程度、円安ドル高方向に修正されている。今回調査時点では、前回調査時点と比べて為替の実勢がやや円安となったうえ、前回までは実勢に比べて若干円高水準での計画だっただけに、実勢を反映する動きが出た。
なお、今回の下期想定レートも、足元の実勢である121円程度よりは円高水準であるが、かなり距離感が詰まってきた。米国は今月にも利上げに向かうとみられるが、為替レートの先行きに対する市場の見方は、昨今やや分かれている。筆者は円安基調継続とみるが、そうなった場合は、次回以降の収益計画において一段と円安が織り込まれていくことで、大企業・製造業を中心に上方修正が入るだろう。
(2015年12月14日「Weekly エコノミスト・レター」)
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経歴
- ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所
・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)
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