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人口減少未来における成長視点-世界の高齢者市場を射程に入れたイノベーション
基礎研REPORT(冊子版) 2015年8月号

生活研究部 上席研究員・ジェロントロジー推進室兼任 前田 展弘
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日本の人口は2008年(1億2808万人)をピークに減少局面に入った。市場を支える産業界(企業)の立場からこの局面を展望すると、「人口減少=市場及び経済の縮小」とネガティブに捉えられやすい。実際、日本の未来を悲観視する産業界の人は少なくない。しかしながら、世界の高齢者市場を展望すれば、見方は一変するであろう。世界の高齢者人口は爆発的に増加していく。
1――世界は高齢化と人口爆発、高齢者市場はとてつもない規模の市場へ拡大
経済成長において必要な要素は“イノベーション”と“市場の拡がり”だ。「市場=人口」と捉えたときに、国内市場は全体として縮小していくが、その中でも、高齢者市場は拡大し続けていく。少なくとも2040年まで増加していく見通しである。さらに世界に目を転じれば、世界の人口は爆発的に増加を続け、その中で高齢者人口も増え続けていく。世界各国も日本と同様に高齢化が進んでいくためだ。その規模は日本とは比較にならない大きさである。
2015年の日本の高齢者人口は約3400万人であるが、世界の高齢者人口は「6億人」、うちアジアだけで3.2億人である。さらに、例えば2030年では、日本の高齢者人口は約3700万人であるものの、世界の高齢者人口は「9.7億人」、2050年には「14億人」に達する見通しである 。経済成長をはかっていく上で、何でもグローバルに展開すればよいということを主張するつもりはないが、世界にはとてつもなく大きな高齢者市場が待ち構えていることは確かである。日本は「高齢化最先進国」であり、国内の高齢者市場において成功できたイノベーションの事例(モノ・サービス等)は、そのまま世界で通用する可能性が高い。これから重要なことは、如何にイノベーションを生み出せるか、とりわけ高齢者市場においてどのようなイノベーションを創出できるかだ。
2――高齢者市場開拓に向けたイノベーションの視点
その視点は様々考えられるが、重要で期待されるイノベーションは、「豊かな長寿を支援し創造する商品サービス」の開発と考えている。言い換えれば、高齢期の「安心」と「生きがい」を提供するサービス等だ。既存の事例で挙げれば、介護ロボット、超小型電気自動車(高齢者の移動サポート)、サービス付高齢者向け住宅、ユニバーサル食品、生活支援・見守りサービス等は「安心」に貢献するものであろうし、旅行や高齢者向けスポーツ、高齢者の参加と交流を促すサービス等は「生きがい」に貢献することであろう。いくつかの事例は確認できるが、高齢者の不安とニーズに応える商品サービスの開発視点はまだまだ数多くある。高齢期の将来不安を「希望」に変えるような商品サービスが待たれている。筆者も微力ながら、そのようなイノベーションの具体策づくりに貢献していきたい。
(2015年08月07日「基礎研マンスリー」)
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生活研究部 上席研究員・ジェロントロジー推進室兼任
前田 展弘 (まえだ のぶひろ)
研究・専門分野
ジェロントロジー(高齢社会総合研究学)、超高齢社会・市場、高齢者就労問題、ライフデザイン、高齢者のQOL/well-being
03-3512-1878
- 2004年 :ニッセイ基礎研究所入社
2009年度~ :東京大学高齢社会総合研究機構 客員研究員
2022年度~ :東京大学未来ビジョン研究センター 客員研究員
2021年度~ :慶応義塾大学ファイナンシャル・ジェロントロジー研究センター 訪問研究員
2023年度 :早稲田大学Life Redesign College(人生100年時代の大学)講師
内閣官房「一億総活躍社会(意見交換会)」招聘(2015年度)
厚生労働省「生涯現役地域づくり普及促進事業有識者委員会」委員長(2024年度)
財務省財務総合政策研究所「高齢社会における選択と集中に関する研究会」委員(2013年度)、「企業の投資戦略に関する研究会」招聘(2016年度)
東京都「東京のグランドデザイン検討委員会」招聘(2015年度)
神奈川県「かながわ人生100歳時代ネットワーク/生涯現役マルチライフ推進プロジェクト」代表(2017-19年度)
生協総研「2050研究会(2050年未来社会構想)」委員(2013-14、16-18年度)
全労済協会「2025年の生活保障と日本社会の構想研究会」委員(2014-15年度)
一般社団法人未来社会共創センター 理事(全体事業統括担当、2020年度~)
一般社団法人定年後研究所 理事(2018-19年度)
【資格】 高齢社会エキスパート(総合)※特別認定者、MBA 他
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