コラム
2015年03月30日

朝方勤務と働き方の改革~日本版夏時間の意義~

櫨(はじ) 浩一

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1――夏時間

先日出張で泊まったホテルの部屋に、「明日から夏時間になり時刻が変わるので、乗り物に乗り遅れないように気を付けてください」という注意喚起の手紙が入っていた。30年以上も前の話だが、初めて海外出張した際に夏時間の始まりに出くわして、街中の時計の時刻がバラバラなので、どちらが正しい時刻なのか混乱したことを思い出した。

外国に行った際に日本とは時差があるので、飛行機が到着した際に現地の時刻に合わせて時計の針を進めたり遅らせたりしなくてはならないのは感覚的にも受け入れられる。しかし、日常生活では時間は常に一定の速度で進んでいくという常識からすると、ある日突然時間がジャンプしたり、逆戻りしたりするというのは何とも変な感じがする。

夏時間に切り替わる瞬間に時計がどうなるのか眺めていると、スマホは午前一時になるはずのところで自動的に午前二時に表示が変わった。しかし、ホテルの部屋の目覚まし時計は自動的には時刻が変わらなかったので、うっかり時刻の設定変更を忘れると寝坊して飛行機に乗り遅れるということもあるだろう。慣れればたいしたことではないだろうが、馴染みのない人間にとってはホテルの気遣いは大変ありがたかった。

2――夏の生活スタイル変革

安倍首相は、明るい時間が長い夏の間は朝早くから働き始め、夕方には家族などと過ごせることができるように「夏の生活スタイル変革」に取組むように指示した、と報じられている。具体的には、午前7時半から仕事を始めて午後4時15分には退庁、午後4時15分以降に会議を入れない、水曜日は午後8時までに消灯して夜間の残業を削減する、などの取り組みを行うそうだ。

夜の余暇時間が長くなることや、明るい時間を有効に使えるので照明の節約になり省エネルギーや地球温暖化防止に役立つ、といった理由で、サマータイムを導入すべきだという動きは昔からあったが、なかなか実現はできなかった。人間の生活の方を1時間早めたり、遅らせたりすれば良いのだから、時計の時刻を変えるサマータイムよりも、こちらの方が日本社会には受け入れやすいだろう。

エネルギーの利用方法が大きく変わってきたため、我々の生活時間を一時間早めてもエネルギーの節約になるとは限らない。しかし、朝方勤務の取り組みの本当の意義は、別のところにあると考える。

3――効率的に働く社会

成果に形が無いサービスの生産性は分かり難い。このため、事務・管理部門や調査や企画という間接部門の生産性の向上が進まず、日本経済の大きな課題とされてきた。深夜まで灯かりが消えない霞が関の長時間労働は、日本の間接部門の効率改善が必要であることの象徴だ。残業できないとなれば、本人がより効率的に働こうとするだけでなく、仕事を頼む側も業務の優先順位の見直しが必要になるはずだ。少々乱暴なやり方であることは確かだが、働き方の効率化のきっかけとなるだろう。

公務員がさっさと帰るのはけしからんなどということは言わないで、これが皆で効率良く働くきっかけになることを期待しようではないか。

(2015年03月30日「エコノミストの眼」)

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櫨(はじ) 浩一 (はじ こういち)

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