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- 貿易統計15年1月~貿易赤字はいったん解消へ
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■見出し
・貿易赤字の縮小が続く
・輸出は回復基調を強める
・貿易赤字はいったん解消へ
■要旨
財務省が2月19日に公表した貿易統計によると、15年1月の貿易収支は▲11,775億円の赤字となったが、赤字幅は市場予想(QUICK集計:▲16,813億円、当社予想は▲15,085億円)を大きく下回った。輸出が前年比17.0%(1月:同12.8%)と伸びを高める一方、輸入が前年比▲9.0%(1月:同1.9%)と大幅な減少となったため、貿易収支は前年に比べ16,176億円の大幅改善となった。
原数値の貿易赤字は14年3月以来10ヵ月ぶりに1兆円を超えたが、1月はもともと正月休みの影響で輸出量が少なく貿易赤字になりやすいという季節性がある。季節調整済の貿易収支は▲4,061億円と12月の▲6,207億円から赤字幅が大きく縮小しており、実態としては貿易収支の改善傾向が続いている。
1月の輸出数量指数を季節調整値(当研究所による試算値)でみると、米国向けが前月比4.8%(12月:同2.4%)、EU向けが前月比2.8%(12月:同9.8%)、アジア向けが前月比6.1%(12月:同▲1.2%)、全体では前月比3.4%(12月:同▲0.2%)となった。アジア向けの輸出は2月の旧正月を控えた駆け込み需要により押し上げられている可能性があるが、それ以外の地域向けも高い伸びとなっている。米国経済の好調や円安効果の顕在化などを背景に輸出は回復基調を強めている。
貿易赤字(季節調整値)は原油価格下落に伴う輸入価格の低下を主因として14年秋頃から縮小傾向が続いている。1月の通関(入着)ベースの原油価格は1バレル=63.9ドル(当研究所による試算値)となったが、1月のドバイ原油は45ドル程度まで下がっていたため、通関ベースの原油価格は2月には50ドル程度まで下がることが見込まれる。また、調達価格が原油価格連動型の長期契約となっているため高止まりが続いていた液化天然ガス(LNG)の輸入価格はようやく低下し始めたが、既往の原油価格下落の影響が反映されることにより当面は低下傾向が続く可能性が高い。
輸入価格の低下がしばらく続くことに加え、ここにきて輸出が回復基調を強めていることから、東日本大震災以降4年近くにわたって赤字を続けてきた貿易収支は15年春頃にかけていったん黒字に転換する可能性が高い。ただし、原油価格(ドバイ)は1月の40ドル台半ばを底に足もとでは50ドル台後半まで持ち直しており、先行きも世界経済の回復に伴う需要の持ち直しや採算悪化を受けた生産量の抑制を背景に上昇基調が続くだろう。また、これまで低調な動きが続いてきた輸入数量も国内需要の回復を受けて増加ペースが高まることが見込まれる。このため、貿易赤字はいったん解消するものの、そのまま貿易黒字が定着する可能性は低いだろう。
(2015年02月19日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1836
- ・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員
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