- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- >
- 証券市場 >
- “3度目の正直”より気掛かりな、日米株価の下落リスク-バブルではないが、悪いニュースに反応しやすい
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
日米の株価が好調だ。円安の後押しもあって日経平均が米ダウ平均を上回る可能性も出てきた。しかし、日米ともに実力より少し高値圏にある。「衆院選までは下がらない」、「米中間選挙の後は上がりやすい」といった楽観的な経験則も耳にするが、今回は違うかもしれない。
■日経平均は米ダウ平均を上回るか~過去2回はあっさり敗退~
気が付けば日経平均株価は18,000円目前まできた。終値で18,000円を上回れば2007年7月24日以来、実に7年4ヶ月ぶりとなる。日銀の追加緩和、円安の進行、消費再増税の延期(景気悪化懸念の後退)、衆院解散(政権安定期待)、企業業績の改善、原油など資源価格の下落、回復基調にある米国景気など、株価にとってポジティブな材料は数え切れないほどあるので、当然といえば当然だ。
米ダウ平均も連日の最高値更新で18,000ドル目前だ。両者を同じグラフに描くと、アベノミクスが始まって以降、日経平均がダウ平均を追い抜きそうになった場面が2回あった。しかし、いずれもあっさり下落した。今回こそ上抜けて“三度目の正直”となるか、過去2回と同じように米ダウ平均に水をあけられてしまうのか。
■日米ともに下落リスクが高まった
しかし、別の見方をすると気がかりなことがある。図2の雲のような部分はPER(株価収益率)14倍と16倍に挟まれた部分で、筆者はこれを「株価の適正ゾーン」と呼んでいる。いわば、企業業績からみた株価の実力だ(米国についてはダウ平均ベースのデータが入手できなかったためS&P500で代替した)。
これを見ると、過去2回、日経平均がダウ平均に迫りつつ逆転できなかったときは適正ゾーンの上限を飛び出していた。つまり、米ダウ平均と比較する以前の問題として、日経平均そのものが割高だったとみなせる。同じとき米国株は適正ゾーンの範囲内に収まっていたので下落する必然性が乏しかった。こう考えれば当時、日経平均がダウ平均を逆転できず、あっさりと押し戻されたのも合点がいく。
では、今回はどうか。日経平均は適正ゾーンの上限を少し飛び出している(PER=16.3倍)。一方、米国も連日の高値更新でついに上限を越えた(同16.2倍)。日米とも割安さを解消し、高値を警戒すべき水準に達したとみられる。バブルとはいかないまでも、悪いニュースに反応しやすいのではないか。
冒頭に触れた日米株価の逆転が“3度目の正直”となるか興味深いところだが、それよりも、何かをきっかけに日米ともに株価が下落するリスクを懸念するのは筆者だけではなかろう。特に、日経平均は1年前と同じように11月以降の上昇が急ピッチだ。更なる上値を追うか、一旦ゲームから降りて様子を見るか、冷静な判断が求められる。
(2014年12月05日「研究員の眼」)
このレポートの関連カテゴリ

03-3512-1852
- 【職歴】
1993年 日本生命保険相互会社入社
1999年 (株)ニッセイ基礎研究所へ
2023年より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会認定アナリスト
井出 真吾のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/05/07 | 遠のいた日経平均4万円回復 | 井出 真吾 | ニッセイ年金ストラテジー |
2025/01/09 | 日経平均4万円回復は? | 井出 真吾 | 基礎研マンスリー |
2024/12/23 | 日経平均4万円回復は? | 井出 真吾 | 研究員の眼 |
2024/11/06 | 「選挙は買い」は本当か | 井出 真吾 | ニッセイ年金ストラテジー |
新着記事
-
2025年07月04日
米雇用統計(25年6月)-非農業部門雇用者数が市場予想を上回ったほか、失業率が上昇予想に反して低下 -
2025年07月03日
ユーロ圏失業率(2025年5月)-失業率はやや上昇したが、依然低位安定 -
2025年07月03日
IAIGsの指定の公表に関する最近の状況(14)-19の国・地域からの60社全てのIAIGsのグループ名が公開された- -
2025年07月03日
BMIと体型に関する認識のズレ~年齢・性別による認識の違いと健康行動の関係 -
2025年07月03日
私的年金のカバレッジ拡大に向けて
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年07月01日
News Release
-
2025年06月06日
News Release
-
2025年04月02日
News Release
【“3度目の正直”より気掛かりな、日米株価の下落リスク-バブルではないが、悪いニュースに反応しやすい】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
“3度目の正直”より気掛かりな、日米株価の下落リスク-バブルではないが、悪いニュースに反応しやすいのレポート Topへ