2014年11月21日

早くも試されるEUの新たな財政ルール(その2)~どんな政策が必要なのか?~

経済研究部 常務理事 伊藤 さゆり

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  1. 7~9月期のユーロ圏の実質GDP(速報値)は前期比0.2%であった。プラス成長は13年4~6月期から6四半期連続。14年の年間の成長率は3年振りにプラス転化するが、GDPギャップは殆ど縮小せず、デフレ懸念は消えない。
  2. すでにECBは、今後2年間で1兆ユーロ規模の金融緩和の強化を約束、梃入れに動いている。ユーロ圏の財政緊縮は全体ではピークを超え、財政ルールに適合する範囲内で減税による成長促進策を講じ始める国も出始めているが、積極財政に転じる動きはない。
  3. 構造改革は、とりわけ硬直的で高コストとされる労働市場の改革に重点が置かれてきた。製品市場における競争や企業活動を妨げる規制の削減も進んだが、米英に比べれば、欧州大陸諸国は規制が強く、なすべきことは未だ多い。
  4. 投資促進のために、ECBの金融緩和策で時間を稼ぐこと、財政ルールの柔軟で堅実な運用とともに、欧州委員会のユンケル委員長が立ち上げを目指す3000億ユーロの投資計画を、過去2回の期待外れのレバレッジ化計画を教訓に実効性のあるものとすること、これらの政策の歯車を上手く噛み合わせることが強く望まれる。

ユーロ圏、EU28カ国の総固定資本形成~伸び悩む投資の梃入れは出来るか?~

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経済研究部   常務理事

伊藤 さゆり (いとう さゆり)

研究・専門分野
欧州の政策、国際経済・金融

(2014年11月21日「Weekly エコノミスト・レター」)

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