- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 男子会で考える、若年層の恋愛離れと今後の動向?
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
先日、家族でディズニーランドへ行った。あるアトラクションに並んでいると、後ろは男子大学生3人組だった。若い男性にとって、ディズニーランドはデートで行くところかと思っていたが、最近こういう若者が増えているそうだ。女子会ならぬ男子会として、カフェでスイーツを食べたり1、旅行で岩盤浴を楽しんだりもするらしい2。また、女性のような行動を取るからといって、ファッションやヘアスタイルに気を使いすぎていることもないようだ。ディズニーランドの3人組もチェックのシャツにチノパン、パーカにデニム、こざっぱりとしたヘアスタイルという男子大学生でよく見かけるごく普通の外見だった。
彼らを見た瞬間、私の頭には日頃、仕事で使っているキーワードやデータがパっと浮かんだ。「異性との交際の消極化」「6割の未婚男性には交際相手がいない3」「しかも、その半分は交際を望んでもいない」「男子会」「男女の趣味のボーダーレス化」「草食系男子」・・・。ディズニーランドの彼らはデータにあらわれる傾向を直に目にしたようで感慨深かった。
ところで、草食系男子という言葉は、2006年にマスコミで使われ出したものだ。「恋愛に縁がないわけではないのに積極的ではない、肉欲に淡々とした男子」4「異性と肩を並べて草を食むような新世代の優しい男子」5などと定義されている。草食系男子は既に浸透した言葉だろうが、最近では「絶食系男子」なるものも存在するらしい。
結婚相談所のオーネットでは独身男性を5つに分類している6。
草食系男子の定義は前述とやや異なるが、この草食系男子と絶食系男子が先の「交際を望んでもいない」に通じるのだろう。なお、同調査によると、恋愛に消極的な男性が多いものの、大半は結婚を望んでいる。しかし、独身でいる理由は、肉食系男子以外では首位は「出会いの機会がほとんどない」であり、次いで「経済・雇用の不安」(絶食系男子は同率首位)や「自分(の恋愛力)に自信がない」(迷走男子)が多い。なお、肉食系男子では「経済・雇用の不安」「自由さ気楽さを失いたくない」が多い。
つまり、結婚できない男性の課題は、まずは「出会い」のようだ。これを解決するために同社のような結婚紹介サービスのほか、最近では婚活支援に乗り出す自治体も多い。今後も恋愛に消極的な若者は増え、このようなサービスは拡大していくのかもしれない。
この先日本はどうなっていくのだろう、とやや不安になるが、ここで思うのは、何ごとにも揺り戻しがあるということだ。例えば、男女雇用機会均等法が整備され女性の社会進出が進んだ頃、結婚をしない選択、子どもを持たない選択は、新しい価値観として、もてはやされたところもあったように思う。しかし、その後(様々な背景はあるが)若年層では結婚をしたい、子どもを持ちたいという意識が高まっている。もしかしたら今は絶食系男子の登場などにより生じている若年層の恋愛離れも、時間とともに中庸に落ち着くのかもしれない。
その時に重要なのは、若年層が恋愛や結婚をするために支障のない経済力を持っていることだ。また、経済力と草食系男子の数は反比例するようにも思う。
いつの時代でも上の世代では若者の待遇改善より、新しい価値観の批判が先行する。しかし、将来の担い手は間違いなく若者であり、若者の経済的自立は優先されるべき課題だ。
(2013年06月07日「基礎研マンスリー」)
このレポートの関連カテゴリ

03-3512-1878
- プロフィール
【職歴】
2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
2021年7月より現職
・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
・総務省「統計委員会」委員(2023年~)
【加入団体等】
日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society
久我 尚子のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/10/10 | 若者消費の現在地(4)推し活が映し出す、複層的な消費の姿~データで読み解く20代の消費行動 | 久我 尚子 | 基礎研レポート |
2025/10/08 | 若者消費の現在地(3)こだわりが生む選択の主体性~データで読み解く20代の消費行動 | 久我 尚子 | 基礎研レポート |
2025/09/29 | 若者消費の現在地(2)選択肢があふれる時代の「選ばない消費」~データで読み解く20代の消費行動 | 久我 尚子 | 基礎研レポート |
2025/09/22 | 若者消費の現在地(1)メリハリ消費の実態~データで読み解く20代の消費行動 | 久我 尚子 | 基礎研レポート |
新着記事
-
2025年10月17日
EUの金融システムのリスクと脆弱性(2025秋)-欧州の3つの金融監督当局の合同委員会報告書 -
2025年10月17日
日本における「老衰死」増加の背景 -
2025年10月17日
選択と責任──消費社会の二重構造(1)-欲望について考える(2) -
2025年10月17日
首都圏の中古マンション価格~隣接する行政区単位での価格差は?~ -
2025年10月17日
「SDGs疲れ」のその先へ-2015年9月国連採択から10年、2030年に向け問われる「実装力」
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年07月01日
News Release
-
2025年06月06日
News Release
-
2025年04月02日
News Release
【男子会で考える、若年層の恋愛離れと今後の動向?】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
男子会で考える、若年層の恋愛離れと今後の動向?のレポート Topへ