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- 投資の法則は変化したか?(4)-日米株式の写真相場から考える「曜日効果」・「月替り効果」アノマリー
日本株式市場の価格形成は、前日の米国市場の株価推移に大きく左右されることが知られており、米国市場に追随することから「写真相場」とよく言われる。実際、過去30年の日本株式(TOPIX)の日次収益率と前日の米国株式(S&P500)の日次収益率の相関係数(注1)を計算すると、0.40で「かなりの正の相関」があることからも日本市場が米国市場に追随している様子がうかがえる。
これまでに「投資の法則は変化したか(2) ~曜日効果アノマリー(月曜効果等)を再検証する」では「曜日効果(Weekend Effect )」を、「投資の法則は変化したか(3) ~月次サイクルのアノマリーを再検証する」では「月替り効果(Turn of the Month Effect)」を紹介した。今回はこうした効果が日本市場独自の効果かそれとも米国市場の影響によるものか、日本市場の日次収益率を日中収益率(intraday return)(注2)と夜間収益率(overnight return)(注3)に分けて、これらアノマリーの生じる要因を分析した。
今回は日本の株式市場(TOPIX)の過去25年分(1988年~2012年)の日中収益率・夜間収益率を用いて、曜日・月次サイクルに関するアノマリーを検証した。月次サイクルは1ヶ月を6部分、月初(1日-5日)、上旬後半(6日-10日)、中旬前半(11日-15日)、中旬後半(16日-20日)、下旬前半(21日-25日)、月末(26日-31日)に分けて、各期間の収益率の平均を算出した。
「曜日効果」とは、特定の曜日が他の曜日に比べて収益率が高いまたは低いことを言い、「月曜の株安」や「週末の株高」などがある。日本株式市場についてみると、月曜日の収益率が低い「月曜日の株安」現象は観測されるが、過去10年では収益率は負となるものの軽微にとどまっている。日中収益率・夜間収益率に分けてみると、月曜日の日中収益率は25年間通して、統計的に有意(注4)に負で観測された。近年「月曜日の株安」が見られないのは夜間収益率が高いためであった。他方、木曜日以降の収益率を見ると確かに高く「週末の株高」は夜間収益率によるところが大きく、米国市場の株高の影響を受けて日本市場でも観測されていた。実際火曜日から木曜日の日中収益率はかなり小さく、週中は米国市場の影響を大きく受け価格形成されていたことがわかる。
次に「月替り効果」とは、株式市場において月末・月初の収益率が他の期間に比べて高い効果を言う。そこで日本市場の月次サイクルについてみると、日次収益率は月初(1日-5日)・月末(26日-31日)に正の収益率が観測され、特に月末の収益率は統計的に有意(注4)に正であり、「月末のお化粧買い」が観測された。日中収益率・夜間収益率に分けてみると、月末はともに正の収益率が確認できたが、月初は夜間収益率のみ正であり、米国の月初の株高の影響を受けていることがわかる。一方、上旬後半以降(6日-20日)の収益率は負であり、夜間収益率は米国の株高から正になることもあるが、日中収益率は統計的に有意(注4)に負で観測されている。月次サイクルに関する「月替り効果」の要因は月末では日米両者の要因、月初では米国要因であった。月中は日本独自の要因で収益率を押し下げている傾向が観測された。
このように日次収益率を日中収益率と夜間収益率に分けることで、日本市場でアノマリーが生じる要因が日本市場独自要因なのか米国市場の影響によるものなのか理解できよう。曜日別で見ると、日中収益率では「月曜日の株安」が観測されたが、他の日では日本市場独自の株価形成力は弱く、米国市場の影響を強く受けており「写真相場」であることが観測された。月次サイクルでは、「月替り効果」の要因は、日本独自の要因として「月末のお化粧買い」は観測されたが、米国市場の月末・月初の株高の影響を強く受けているものであった。
(2013年03月01日「研究員の眼」)
伊藤 拓之
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