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女性の活躍のための社会支出の再配分を!― OECDのSocial spending after the crisisを参考に ―
生活研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 金 明中
先月、OECDは「経済危機以後の社会支出(Social spending after the crisis)」というテーマで、最近のOECD加盟国の社会支出データを発表した1。社会支出とは国が9つの政策分野、すなわち(1)高齢、(2)遺族、(3)障害、業務災害、傷病、(4)保健、(5)家族、(6)積極的労働市場政策、(7)失業、(8)住宅、(9)他の政策分野(生活保護など)、のいずれかに対して支出した金額を合計したものであり、国際比較のために社会支出の対GDP比がよく使われている。
OECD加盟国における社会支出の対GDP比は、2007年の19.2%から2009年には22.1%まで増加した。同期間における日本の社会支出の対GDP比も18.7%から23.0%まで増加し、OECD平均を上回っているが、ヨーロッパの国と比べるとまだ低い水準である(図表1)。
最近、OECD加盟国における社会支出の対GDP比が増加している理由として、経済危機により失業関連手当の利用者が増加したことや、GDPの減少あるいはGDP増加率が減少したことが挙げられる。実際、失業関連手当の対GDP比のOECD加盟国平均は2007年の0.7%から2009年には1.1%まで増加した(日本は0.32%から0.39%まで増加)。また、2007年を100にした際の実質GDPの平均指数は、2009年には96まで低下している(日本は93まで低下)。
政策分野別に見た日本の社会支出の内訳は、「高齢(47.8%)」や「保健(31.3%)」分野が高く、「住宅(0.12%)」や「失業(0.39)」分野が相対的に低かった(図表2)。
日本の高齢者に対する社会支出は、OECD加盟国の中でも高い水準であり、上記の「高齢」分野を含んだ「高齢者関連社会支出2」は全社会支出の59.2%を占めている。全社会支出に占める「高齢者関連社会支出」が日本ほど高い国はイタリア(59.0)のみであり、他の国とは大きな差を見せている(図表3)。日本の「高齢者関連社会支出」が他の国に比べて高い理由としては高齢化率がOECD加盟国の中で最も高く、高齢者のための公的年金の給付や医療費の支出が社会支出の大きな割合を占めていることが挙げられる。
一方、女性の社会進出の増加や、それに伴うワーク・ライフ・バランスや子育て支援などへの関心が高まっている中で、日本でも「家族」分野に関する社会支出は少しずつ増加しているが、社会支出に占める割合は4.2%にすぎずまだまだ低い水準である。また、OECD加盟国と比べた「家族」分野を含んだ「家族関連社会支出3」の対GDP比は1.48%で、OECD平均2.7%を大きく下回っている(図表4)。
従って、今後女性の労働市場への参加や出生率の改善をより実現するためには「高齢者」に偏っている社会支出を見直し、「家族関連社会支出」とのバランスをとる必要がある。
隣国韓国では始めて女性が大統領に当選され、日本でも自民党の新三役に初めて2人の女性が起用されるなど、今後女性の活躍はますます期待されている。優秀な女性が出産や育児の負担により労働市場を離れることなく、仕事と生活が両立できるように政策分野別の社会支出の再配分を考慮すべきである。

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