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- 彼岸の墓参り-“おひとりさま”時代の「お墓」
もうすぐ秋のお彼岸である。先祖のお墓参りに訪れる人も多いだろう。近年では葬儀と墓の多様化が進んでいる。先日、東京都が都立小平霊園に整備を進めている「樹林墓地」の募集をしたところ、500体分の募集に対して16倍を超える応募があったという。特に、夫婦を中心とした二人一組の生前応募枠は30倍を超す人気だったそうだ。
「樹林墓地」とは、「死後は安らかに自然に還りたい」という人の思いに応えるために樹林の下に共同埋蔵施設を設け、直接土に触れる形で遺骨を埋葬するものだ。使用料は遺骨一体あたり13万円あまりで、毎年の管理料はかからない。多くの人が応募する理由は、都市化や少子化が進み、これまでの墓では子孫がその面倒をみることが難しく、死後に子どもたちに迷惑を掛けたくないからだという。
従来の墓は、「○○家の墓」と墓標に刻まれているように、先祖から子孫への承継が前提となっている。しかし、都市化が進み居住地と墓が遠く離れたり、少子化によって世話をする子どもがいなくなれば当然墓の維持管理は困難になる。特に、都市部には「ひとり暮らし」の高齢者が多いために、承継者を必要としない「樹林墓地」などの合葬式墓地を希望する人が増えているのである。
では、今後、少子化が一層進むと無縁墓が増えたり、彼岸の墓参りやお盆の先祖の霊の送り火などはなくなってしまうのだろうか。私は9月3日「研究員の眼*」のなかで『子ども世代に大きなツケを残してはならない』と述べたが、同時に『相互扶助の世代交代が持続可能な社会を創る』とも書いた。それは今日の社会が彼岸にいる人たちのおかげで創られ、その結果、われわれが暮らす此岸(しがん)があることを忘れてはならないと思うからである。
墓には遺骨を収蔵するほかに先祖や故人を偲ぶという重要な意味がある。これからは子どもや家族が少なくなる時代だが、血縁関係の有無に関わらず生前に交流のあった人たちが故人を偲ぶ機会が増えるかもしれない。そしてわれわれ此岸の人間は、彼岸の先祖や故人に対して感謝することにより子孫への責任も明確に自覚できるのではないだろうか。
少子高齢化の進展は、世代の承継を前提とした墓のあり方にも影響を与え始めているが、『世代間の相互扶助が持続可能な社会を創る』ことは、たとえ時代が変わっても変わらないだろう。秋の彼岸を契機に、彼岸と此岸をつなぐ“おひとりさま”時代の「お墓」のあり方について、墓のことだけに
(2012年09月10日「研究員の眼」)
土堤内 昭雄
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