2012年07月25日

若年層の生活意識と消費実態~厳しい経済状況の中、生活満足度の高い若者たち、その背景は?

生活研究部 上席研究員 久我 尚子

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■見出し

1――若年層をとりまく厳しい環境?
2――若年層の生活意識
3――若年層の時間の使い方
4――若年層の所得と消費
5――若年層の消費実態
6――まとめ~若年層の生活満足度の高さは目先の時間・所得の不自由のなさ、しかし、その将来は?

■introduction

日本経済の低迷による雇用情勢の悪化、高齢化の進行による社会保障制度の世代間格差。現在の日本では若者たちの将来に対して明るい見通しを持つことは難しい。
若年層の非正規雇用率は、1990年代後半から大きく上昇している(図表1)。2011年時点で15~24歳の半数は非正規雇用者として不安定な立場で働いており、従来は大半が正規雇用者であった25~34歳の男性でも非正規雇用率は15.7%にのぼる。大学・短大卒業者の就職内定率は金融危機以降、低下し(図表2)、就職浪人をする学生も出ている。

若年層の非正規雇用の割合/就職内定率の推移

一方、高齢化はさらに進行する見込みであり、現在は1人の高齢者を3人の現役世代で支える構造だが、2030年には2人で1人、2055年にはほぼ1人で1人を支えるようになっていく。
このような中では若者たちを取り巻く経済状況は厳しくなるばかりだ。
以前、拙稿「若年層の経済的余裕感」にて、若年層の暮らし向きの実感を分析したところ、経済的余裕感は正規雇用者と非正規雇用者の間で二極化していた。余裕を感じているのは正規雇用者の共働き夫婦や独身男性のほか、正規雇用者で比較的高収入の夫をもつ専業主婦であり、非正規雇用者では全般的に余裕のなさを感じていた。また、かつては優雅な印象もあったパラサイト・シングルも、現在では経済的不安を抱えるために結婚に至らない非正規雇用者の、特に未婚男性が多くなっていた。
世代間格差に加え、雇用状態による同世代間の格差。中高年の常識からすれば不憫な状況でしかない。若者たちは買いたいものも買えず、やりたいこともできず、明るい将来も見通せない不満の多い生活を送っているに違いないなどと想像するかもしれない。
しかし、内閣府「平成22年度国民生活に関する世論調査」によると、現在の20歳代の73.5%は今の生活に満足しており、その満足度は中高年よりも高くなっている(図表3の「満足」「まあ満足」の合計)。また、現在の20歳代の満足度は過去の20歳代と比較しても高く、1960年代後半は60%程度、1970年代には50%程度に低下した年もあるが、1990年代後半から70%前後にのぼっている。

年代別にみあた現在の生活における満足度

厳しい経済状況の中、実は生活満足度の高い現在の日本の若者たち。彼らは現在の生活をどのように捉え、どのような消費活動を行っているのだろうか。本稿では内閣府をはじめとした公的調査をもとに、20歳代を中心とした若年層の生活意識や消費行動について報告していく。




(2012年07月25日「基礎研レポート」)

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生活研究部   上席研究員

久我 尚子 (くが なおこ)

研究・専門分野
消費者行動、心理統計、マーケティング

経歴
  • プロフィール
    【職歴】
     2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
     2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
     2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
     2021年7月より現職

    ・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
    ・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
    ・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
    ・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
    ・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
    ・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
    ・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
    ・総務省「統計委員会」委員(2023年~)

    【加入団体等】
     日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
     生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society

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