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- 営業を強くする!営業職の人材マネジメント
コラム
2012年04月03日
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営業力は、企業の競争優位性に対して甚大な影響を及ぼす。商品やサービスの継続的な差別化が一層難しくなり、めまぐるしく変化する市場に対する迅速な対応が求められるなか、市場と開発をつなぐ営業の役割は従来以上に重要になってきているといえる。こうした営業力の源泉は、人数規模の面でもホワイトカラーの主力部隊である営業職だ。しかしながら、営業職の人材マネジメントには少なからぬ課題が横たわっている。
営業職は人材需要が高いにもかかわらず、仕事と人材のマッチングが難しいといわれる。その要因は大きく2つあり、そこから営業職の人材マネジメントの課題が透けて見えてくる。
第1の要因は、営業職は人材需要の高さに比べて求職者が少ないという点である。営業職は、市場の最前線で顧客と対峙する職種であると同時に、目に見える形で目標達成を求められる職種でもある。したがって、その人材マネジメントには、他の職種とは異なる配慮や工夫が求められる。しかしながら、たとえば産業能率大学の調査結果*をみると、営業の仕事を「続けたくない」という営業職が47.0%にのぼっている。続けたくないと思う人が多い仕事に、求職者が集まりにくいことには容易に納得がいく。つまり、必要な人材を確保し、モチベーションを維持・向上させつつ、定着を促し、育成していくといった人材マネジメントが、営業職についてうまく機能しているとはいえない状況にある。
第2の要因は、「営業の多様性」である。営業を分類する切り口は、取り扱う商品・サービスの特性、企業の業態、顧客の特性(新規顧客か既存顧客か、法人か個人か等)、市場におけるポジション(シェアが大きいかどうか等)、営業の仕方(プッシュ型営業かプル型営業か等)など、実にさまざまである。たとえば同じ分野の商品を営業していても、営業の仕方によって仕事の内容も蓄積される経験も大きく異なる。こうした多様性ゆえに、自社あるいは自分の営業経験は特殊なものであり、その営業でしか通用せず、他の営業で過去の営業経験を活かすのは難しいと考える企業や営業職が少なくない。仮にそうだとすると、営業職のマッチングがうまくいくわけはないし、同じ企業のなかで多様な営業が展開されている場合に、企業内での営業職のキャリア(経験する仕事の関連性、つながり)が「特殊」な営業間でうまく形成できているのかどうかも心もとなくなってくる。
このような課題意識のもと、筆者は先月末(2012年3月)に『営業職の人材マネジメント-4類型による最適アプローチ』(中央経済社)と題する書籍を刊行した。本書では、あえて多様な営業の事例(プラント、注文住宅、X線分析機器、新築マンションのガス設備、ブランド・マーケティング、原料糖、個人向け生命保険、求人広告)を取り上げ、人材マネジメントの拠り所となる仕事内容を詳細に分析した。それぞれの営業の仕事内容はやはり多様だが、意外に共通する点も少なくない。他方、大きな相違点は、営業活動における(1)提案の重要性、(2)社外の関係者・組織との交渉の重要性、の2つだと考え、これらが相対的に重要かどうかという観点から、販売類似型、提案型、交渉・調整型、プロジェクト・マネジメント型の4類型に分類した。さらに、類型別に人材マネジメントの現状や課題を明らかにし、横断的なキャリア形成のあり方等について考察している。
本書は、事例やアンケートの分析に基づく研究書としての「営業本」であり、明日の営業活動に直ちに役立つ本では決してない。ただ、企業の人事担当者や営業職のかたがたが、多様な営業のなかでの自社や自分の営業のポジションを確かめ、営業職の中長期的なキャリア形成をお考えになる際に、多少なりともお役に立ちたいという思いを込めて執筆した。よろしければご高覧ください。
* (注)企業等の営業担当者(経験5年以下)500人を対象として、2009年8~9月に実施されたインターネット調査。
営業職は人材需要が高いにもかかわらず、仕事と人材のマッチングが難しいといわれる。その要因は大きく2つあり、そこから営業職の人材マネジメントの課題が透けて見えてくる。
第1の要因は、営業職は人材需要の高さに比べて求職者が少ないという点である。営業職は、市場の最前線で顧客と対峙する職種であると同時に、目に見える形で目標達成を求められる職種でもある。したがって、その人材マネジメントには、他の職種とは異なる配慮や工夫が求められる。しかしながら、たとえば産業能率大学の調査結果*をみると、営業の仕事を「続けたくない」という営業職が47.0%にのぼっている。続けたくないと思う人が多い仕事に、求職者が集まりにくいことには容易に納得がいく。つまり、必要な人材を確保し、モチベーションを維持・向上させつつ、定着を促し、育成していくといった人材マネジメントが、営業職についてうまく機能しているとはいえない状況にある。
第2の要因は、「営業の多様性」である。営業を分類する切り口は、取り扱う商品・サービスの特性、企業の業態、顧客の特性(新規顧客か既存顧客か、法人か個人か等)、市場におけるポジション(シェアが大きいかどうか等)、営業の仕方(プッシュ型営業かプル型営業か等)など、実にさまざまである。たとえば同じ分野の商品を営業していても、営業の仕方によって仕事の内容も蓄積される経験も大きく異なる。こうした多様性ゆえに、自社あるいは自分の営業経験は特殊なものであり、その営業でしか通用せず、他の営業で過去の営業経験を活かすのは難しいと考える企業や営業職が少なくない。仮にそうだとすると、営業職のマッチングがうまくいくわけはないし、同じ企業のなかで多様な営業が展開されている場合に、企業内での営業職のキャリア(経験する仕事の関連性、つながり)が「特殊」な営業間でうまく形成できているのかどうかも心もとなくなってくる。
このような課題意識のもと、筆者は先月末(2012年3月)に『営業職の人材マネジメント-4類型による最適アプローチ』(中央経済社)と題する書籍を刊行した。本書では、あえて多様な営業の事例(プラント、注文住宅、X線分析機器、新築マンションのガス設備、ブランド・マーケティング、原料糖、個人向け生命保険、求人広告)を取り上げ、人材マネジメントの拠り所となる仕事内容を詳細に分析した。それぞれの営業の仕事内容はやはり多様だが、意外に共通する点も少なくない。他方、大きな相違点は、営業活動における(1)提案の重要性、(2)社外の関係者・組織との交渉の重要性、の2つだと考え、これらが相対的に重要かどうかという観点から、販売類似型、提案型、交渉・調整型、プロジェクト・マネジメント型の4類型に分類した。さらに、類型別に人材マネジメントの現状や課題を明らかにし、横断的なキャリア形成のあり方等について考察している。
本書は、事例やアンケートの分析に基づく研究書としての「営業本」であり、明日の営業活動に直ちに役立つ本では決してない。ただ、企業の人事担当者や営業職のかたがたが、多様な営業のなかでの自社や自分の営業のポジションを確かめ、営業職の中長期的なキャリア形成をお考えになる際に、多少なりともお役に立ちたいという思いを込めて執筆した。よろしければご高覧ください。
* (注)企業等の営業担当者(経験5年以下)500人を対象として、2009年8~9月に実施されたインターネット調査。
(2012年04月03日「研究員の眼」)
松浦 民恵
松浦 民恵のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2017/04/07 | 「男性の育児休業」で変わる意識と働き方-100%取得推進の事例企業での調査を通じて | 松浦 民恵 | 基礎研マンスリー |
2017/02/20 | 「男性の育児休業」で変わる意識と働き方-100%取得推進の事例企業での調査を通じて | 松浦 民恵 | 基礎研レポート |
2016/12/07 | 「130万円の壁」を巡る誤解-2016年10月からの適用要件拡大の意味を正しく理解する | 松浦 民恵 | 基礎研マンスリー |
2016/11/17 | 再び注目される副業-人事実務からみた課題と方向性 | 松浦 民恵 | 基礎研レポート |
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