- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 経営・ビジネス >
- 企業経営・産業政策 >
- 日本はハムレット型、韓国はドン・キホーテ型、今後はハム・キホーテ型で対応せよ!
日本はハムレット型、韓国はドン・キホーテ型、今後はハム・キホーテ型で対応せよ!
生活研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 金 明中
韓国経済が経済危機をより早く乗り越えた要因としては「大統領制に基づく強いリーダーシップ」、「設備や技術革新に対する大胆な投資」、「インドや中国など新興国に対する長期間にわたる投資や現地ニーズへの的確な対応」、「ウォン安の持続」等が挙げられているが、筆者が注目したいのは、日本企業の課題としてしばしば指摘される「企業のスピード経営」である。
企業経営におけるスピードの速さを古典に例えると、日本は「ハムレット型」、韓国は「ドン・キホーテ型」に似ているのではないかと思う。
ハムレットは、叔父によって父親が殺されたことを知り、狂気を装い復讐を誓う。しかし、復讐を躊躇し先送りしたせいで、自分を含め、母であるガートルードや恋人だったオフィーリアも死を迎えるという悲劇的な結末になる。考えすぎて行動を遅らせた結果である。
一方、騎士道小説を読みすぎたせいで妄想に陥ったドン・キホーテは、世の中の不正を正すために旅に出る。風車を巨人だと思い込んで戦ったり、羊の群れを敵と勘違いして蹴散らすなど失敗を繰り返す。後先考えずに行動した結果である。
戦後、日本の経済成長の背景には、日本人固有の誠実さや忍耐力に基づく緻密な計画、そして長期間にわたる研究や議論があったと考えられる。しかしながら、最近グローバル化の進展とともに国際競争が激しくなってからは、「緻密な計画や議論等がむしろ決断の遅さにつながり、企業競争力を弱めた」と指摘され、決断の早さが頻繁に要求されている。
一方、韓国企業はドン・キホーテのように、失敗を恐れず前にどんどん進める経営方式をとってきた。サムスン電子やLG電子、そして現代自動車など韓国を代表とする大手企業の成功事例が後を絶たず、まるで韓国のすべての企業が勝ち組のように紹介された。しかしその裏側にはドン・キホーテのような経営方式の展開で失敗を味わった企業(例えば1995年に既に飽和状態だと言われていた韓国の自動車市場に進出し、失敗した旧サムスン自動車)等もたくさんあり、より慎重な行動が求められている。
すなわち、慎重なハムレット型も猛進するドン・キホーテ型もそれぞれ長所・短所はある。従って、今後はある程度考えたら、素早く行動に移す日韓混合型とも言える「ハム・キホーテ型」で対応するのはどうだろうか。
(2012年01月25日「研究員の眼」)
生活研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任
金 明中 (きむ みょんじゅん)
研究・専門分野
高齢者雇用、不安定労働、働き方改革、貧困・格差、日韓社会政策比較、日韓経済比較、人的資源管理、基礎統計
03-3512-1825
- プロフィール
【職歴】
独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年9月ニッセイ基礎研究所へ、2023年7月から現職
・2011年~ 日本女子大学非常勤講師
・2015年~ 日本女子大学現代女性キャリア研究所特任研究員
・2021年~ 横浜市立大学非常勤講師
・2021年~ 専修大学非常勤講師
・2021年~ 日本大学非常勤講師
・2022年~ 亜細亜大学都市創造学部特任准教授
・2022年~ 慶應義塾大学非常勤講師
・2024年~ 関東学院大学非常勤講師
・2019年 労働政策研究会議準備委員会準備委員
東アジア経済経営学会理事
・2021年 第36回韓日経済経営国際学術大会準備委員会準備委員
【加入団体等】
・日本経済学会
・日本労務学会
・社会政策学会
・日本労使関係研究協会
・東アジア経済経営学会
・現代韓国朝鮮学会
・韓国人事管理学会
・博士(慶應義塾大学、商学)
金 明中のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2024/11/26 | ニッセイ景況アンケート調査結果-全国調査結果 2024年度調査(2024年9月) | 金 明中 | ニッセイ景況アンケート |
2024/11/21 | なぜ日本の出生率は韓国より高いだろうか | 金 明中 | 研究員の眼 |
2024/07/09 | 日本の少子化の原因と最近の財源に関する議論について | 金 明中 | ニッセイ基礎研所報 |
2024/06/13 | 【アジア・新興国】韓国の生命保険市場の現状-2022年と2023年のデータを中心に- | 金 明中 | 保険・年金フォーカス |
公式SNSアカウント
新着レポートを随時お届け!日々の情報収集にぜひご活用ください。
新着記事
-
2024年12月11日
貸出・マネタリー統計(24年11月)~企業の定期預金シフトが顕著に、個人の動きはまだ鈍い -
2024年12月11日
Investors Trading Trends in Japanese Stock Market:An Analysis for November 2024 -
2024年12月11日
ノンメディカルな卵子凍結-東京都では計4千5百人が卵子凍結を実施済、現在パートナーがいない健康な30歳~40歳代が将来に備える傾向- -
2024年12月10日
投資部門別売買動向(24年11月)~事業法人が大幅買い越し~ -
2024年12月10日
2025年はどんな年? 金融市場のテーマと展望
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
-
2024年04月02日
News Release
【日本はハムレット型、韓国はドン・キホーテ型、今後はハム・キホーテ型で対応せよ!】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
日本はハムレット型、韓国はドン・キホーテ型、今後はハム・キホーテ型で対応せよ!のレポート Topへ