2010年12月02日

法人企業統計10年7-9月期~設備投資が3年半ぶりに増加も、企業収益の回復ペースは大きく鈍化

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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■見出し

・3四半期連続の増収増益も回復ペースは鈍化
・設備投資が3年半ぶりに増加
・7-9月期・GDP2次速報は1次速報とほぼ変わらず

■introduction

財務省が12月2日に公表した法人企業統計によると、10年 7-9月期の全産業(金融業、保険業を除く、以下同じ)の経常利益は前年比54.1%(4-6月期:同83.4%)と4四半期連続の増加となった。
増収増益は3四半期連続となったが、売上高の伸びが4-6月期の前年比20.3%から同6.5%へと大きく鈍化したことを主因として、増益率は2四半期続けて低下した。売上高は製造業(前年比25.9%→同12.2%)、非製造業(前年比18.1%→同4.1%)ともに伸びが鈍化した。製造業は円高の進展、海外経済の減速を背景として、それまで好調だった輸出が大きく減速したことが響いた。
季節調整済の経常利益は前期比+0.0%(製造業:前期比3.3%、非製造業:同▲1.6%)となった。かろうじて6四半期連続の増加となったが、伸び率は09年7-9月期の前期比40.4%をピークに低下傾向が続いている(09年10-12月期:前期比35.8%→10年1-3月期:同5.3%→4-6月期:同3.0%)。企業収益は、09年度中はV字回復を続けたが、10年度に入り回復ペースが緩やかになっている。経常利益(季節調整値)は最悪期(09年1-3月期)からは3倍近い水準にまで回復しているが、ピーク時(07年1-3月期の16.0兆円)に比べれば7割強にとどまっている。
売上高経常利益率は全産業ベースで3.2%となり、前年よりも1.0ポイント改善したが4-6月期(前年差1.3ポイント)に比べれば改善幅は縮小した。製造業が前年差2.3ポイント(4-6月期は同3.6ポイント)、非製造業が前年差0.3ポイント(4-6月期は同0.4ポイント)となった。
製造業は人件費、変動費、減価償却費、金融費用の全てが利益率の改善要因となっているが、非製造業は1-3月期以降、変動費が売上高の伸びを上回り利益率の押し下げ要因となっている。
企業収益は回復を続けているが、輸出の減速を主因とした売上高の伸び悩みなどからここにきてそのテンポは緩やかになっている。10年度下期は輸出の減速傾向がさらに強まることに加え、エコカー補助金終了後の自動車の反動減など国内需要も低迷が見込まれることから、企業収益の減速傾向はさらに強まることが予想される。10-12月期の経常利益は前年比ではプラスを維持するものの、前期比では7四半期ぶりにマイナスとなる可能性が高いだろう。

(2010年12月02日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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