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- 年金制度改革のマクロ経済分析 -世代重複モデルによる考察-
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1.
年金制度への不安が広がっている。保険料負担の増加・給付削減により各世代の効用が低下している。更に「将来年金を確実に受け取れるのか」という制度の維持可能性にも疑問が生じており、これが恒常所得の低下となり現在の景気低迷の一因にもなっている。
2.
厚生省は98年10月、99年の財政再計算を控えて年金制度改正案を示した。この中で将来世代の過重な負担を緩和するため、負担の拡大だけでなく将来給付の削減を盛り込み、長期的に安定的な制度の維持を志向している。
3.
しかし事実上賦課方式といえる現行の年金制度では、今後の少子・高齢化、総人口の減少というトレンドの中で、人口変動リスクを回避することができない。このため、 (1)報酬比例部分については賦課方式から積立方式に移行する(民営化)。
(2)最低限度の生活保障は基礎年金で賄い、財源は保険料から消費税に変更する。
という抜本改革案が、経済戦略会議など各方面から示されている。
4.
本稿では上記の抜本的な年金制度改革が実施された場合、それが経済成長率・貯蓄率・利子率などのマクロ経済変数にどのような影響を与えるかを、世代重複モデルによりシミュレーションした。世代重複モデルを用いることにより、世代間の給付と負担のバランスを考慮した厚生分析を行うことが可能になる。
5.
シミュレーションの結果では、(1)報酬比例部分を積立方式に移行することにより、年金の積立金は増加傾向を維持し、成長率や賃金も上昇する。この結果報酬比例部分の給付額も厚生省案より大きくなる。(2)基礎年金を消費税方式に変更すると、将来消費に備えて勤労期間の貯蓄が増加するため、貯蓄率が改善する。このため成長率も短期的に増加するが、長期的な成長経路には大きな変化はない。消費税への変更は、未加入者問題や、第3号被保険者問題の解消など、公平性の観点からみた効果が重要と考えられる。
(1999年03月25日「ニッセイ基礎研所報」)
山田 剛史
山田 剛史のレポート
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