1996年01月01日

高齢社会に向けた住宅・地域づくり

土堤内 昭雄

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<要旨>

  1. 我が国の高齢化は、出生率の低下や平均寿命の伸びを背景に急速に進展している。今後の高齢社会では、経済活力の低下や社会保障費の増加、社会資本整備の遅れなど多くの課題が想定される。これら課題を解決するためには将来の高齢社会を正確に見通して、新たな人口構造に対応した適切な社会経済システムを構築する必要がある。特に、人生80年時代の高齢期を豊かに生きるための社会システムとして、これからの高齢社会に向けた住宅・地域づくりを考えることが重要である。
  2. 我が国の人口構造は、戦後少子化と高齢化が進展してきたが、今後は少子化が安定する一方で高齢化の進展はなお著しい。そして生産年齢人口が減少傾向にあることから勤労世帯への社会的負担は一層重くなることが予想される。また、世帯規模は縮小化し、高齢世帯が増加し、高齢世帯の中でも単身者と夫婦のみ世帯の比率が高くなる。地域的には高齢人口の増加数も高齢世帯の増加率も東京圏で著しい。そして我が国の高齢化は国際的に見ると、長寿国故に今後の高齢化率が極めて高く、また高齢化のスピードが著しく速いことが特徴である。そこでこのような日本型の高齢社会に対応した住宅・地域づくりを進める必要がある。
  3. このような高齢社会において高齢者がイキイキと暮らせる住宅づくりの基本条件は、(1)高齢期の居住形態に適した住宅であること、(2)高齢者の生活特性を考慮した安全かつ安心して暮らせる住宅であること、そして(3)そのような住宅に誰もが経済的に居住可能であることである。つまり高齢者単身・夫婦のみ世帯をはじめとした多様な居住形態に適した加齢対応の住宅をすべての所得階層の高齢者が居住できるように供給することが重要である。
  4. 高齢者がイキイキと暮らせる地域づくりのための基本条件は、(1)高齢者が無理なく安心して働ける環境と(2)安心して老いることのできる環境をつくることである。今後は勤労世帯への負担が一層増大することから高齢者の就業は社会的な要請となりつつあり、高齢化が進展する中で経済活力を維持するためには高齢者の知的ストックを活用することが不可欠である。職住の適切配置の地域構造に転換を図り、各都市施設はもちろんのこと地域レベルでのバリアフリー化を進め、電子ネットワークを活用する事により高齢者の在宅勤務や在宅医療を支援していくことも有効である。また、何らかの日常生活の支援が必要になった場合、できる限り在宅における自立的な生活を支援する在宅生活支援センターや住宅の延長線上で暮らせる複合型介護センターを地域の中に組み込むことが重要である。
  5. 21世紀の高齢化は、とりわけ20世紀の都市化によって都市に住む多くの中堅勤労者に多大な影響を与える。今後はこのような高齢社会に向けた住宅・地域づくりが個人・社会双方にとって持続的成長を可能にする新たな日本型高齢福祉社会といえよう。

(1996年01月01日「調査月報」)

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