2015年09月09日

欧州経済見通し~ユーロ圏:回復続くも、スピードと投資が不足/英国:利上げタイミングは外部環境も考慮~

経済研究部 常務理事 伊藤 さゆり

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【要旨】

  1. ユーロ圏経済は、金融緩和とユーロ安、原油安、先進国経済の堅調、成長指向の財政運営に支えられた緩やかな回復が続いている。主要国では水準ではドイツ、ペースではスペインが好調。イタリアには、幾らか明るい材料が見られるようになったが、フランスの回復が遅れ気味だ。
  2. 中国経済の減速や資源国・新興国経済の不安など外部環境の悪化による下振れリスクは増大しているが、ユーロ圏の消費主導の緩慢な回復は続き、15年の実質GDPは前年比1.5%、16年は同1.6%と予測する。
  3. 16年9月の段階で、ECBが、インフレ率が中期目標に整合的なパスに調整されたと判断することは難しく、16年10月以降も資産買入れを継続することになるだろう。
  4. 英国では13年以降、前期比0.7%と順調な回復が続いている。伸び悩んでいた賃金も、ここにきて持ちなおしているが、インフレ率は、エネルギー価格の下落とポンド高でゼロ近辺で推移している。15~16年は2%台半ばの成長が予想され、GDPギャップも解消するが、国際金融・経済環境からの下振れリスクの見極めも必要なため、BOEの利上げ開始は16年入り後となろう。

金融緩和、ユーロ安、原油安効果もあり輸出、消費は堅調だが、投資の回復は遅れている~ユーロ圏の実質GDP(需要項目別指数)~

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経済研究部   常務理事

伊藤 さゆり (いとう さゆり)

研究・専門分野
欧州の政策、国際経済・金融

経歴
  • ・ 1987年 日本興業銀行入行
    ・ 2001年 ニッセイ基礎研究所入社
    ・ 2023年7月から現職

    ・ 2011~2012年度 二松学舎大学非常勤講師
    ・ 2011~2013年度 獨協大学非常勤講師
    ・ 2015年度~ 早稲田大学商学学術院非常勤講師
    ・ 2017年度~ 日本EU学会理事
    ・ 2017年度~ 日本経済団体連合会21世紀政策研究所研究委員
    ・ 2020~2022年度 日本国際フォーラム「米中覇権競争とインド太平洋地経学」、
               「欧州政策パネル」メンバー
    ・ 2022年度~ Discuss Japan編集委員
    ・ 2023年11月~ ジェトロ情報媒体に対する外部評価委員会委員
    ・ 2023年11月~ 経済産業省 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 委員

(2015年09月09日「Weekly エコノミスト・レター」)

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