2018年03月07日

マイナス金利の「逆風」をしのぐ生保各社の創意工夫-2017年生保各社の新商品・新サービス戦略を振り返る

基礎研REPORT(冊子版)3月号

  小林 雅史

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1―はじめに

近年の超低金利の環境の下で、2017年4月に、標準利率が1%から0.25%に引き下げられた。2013年4月の引き下げ(1.5%⇒1%)以来、4年ぶりの標準利率の引き下げとなった。

マイナス金利など異常な低金利下においても、新規契約の保険料負担をなるべく抑制するため、従来から、配当方式による予定利率の区分、一部商品の保険料率改定見送り、逆に保障性商品の保険料引き下げといった対応が行われてきたが、昨今では標準利率より予定利率を少しでも高めに設定し、新規契約の保険料負担を軽減しようとする傾向が強くなっていることは別稿1で紹介したとおりである。

マイナス金利下で保険料の引き上げという「逆風」をしのぐために行った生保各社の商品・サービス面での様々な創意工夫を紹介することとしたい。
 
1 小著「標準利率の引き下げと生保会社の対応-経営努力による新規契約保険料引き上げの抑制」『保険・年金フォーカス』、2017年4月5日、ニッセイ基礎研究所ホームページ参照。
 http://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=55433?site=nli 

2―新商品

1|健康増進に向けた新商品
少額短期保険業から健康年齢連動型医療保険が発売された後、ネオファースト生命から、2016年12月、生保初の実年齢に代えて健康年齢を使用した「カラダ革命」(7大生活習慣病入院一時給付保険)が発売された。契約時には実年齢を用いて保険料を算出するが、3年ごとの更新時に健康診断等の検査項目結果などに基づいて算出した健康年齢を用いて保険料を決定する仕組みであり、健康年齢が若いほど保険料が安くなる2

さらに2017年10月、同社は契約時から健康年齢により保険料を決定する「ネオde健康エール」(特定生活習慣病入院一時給付保険)を発売した3

2017年8月、東京海上日動あんしん生命はNTTドコモと共同開発した、顧客の健康増進活動に応じて保険料をキャッシュバックする業界初の医療保険「あるく保険」を発売した。腕に装着するウエアラブル端末と専用のスマートフォンアプリを使用して毎日の歩数を計測し、1日平均8000歩を目標とし達成状況に応じて2年に1度、健康増進還付金(キャッシュバック)がもらえる仕組みであり、8月から関東近辺のドコモショップ32店舗で先行販売、11月から一般販売を開始した4
 
2 「7大生活習慣病入院一時給付保険『からだプラス』を販売開始」、2017年4月3日、ネオファースト生命ホームページ。
3 「契約時より『健康年齢』の結果で保険料を決定!『ネオ de 健康エール』発売!」、2017年8月9日、ネオファースト生命ホームページ。
4 「新商品『あるく保険』発売のお知らせ~お客様の健康増進活動に応じて保険料をキャッシュバックする業界初の商品~」、2017年4月3日、東京海上日動あんしん生命ホームページ。
2|その他の新商品
2016年4月、日本生命が長寿時代のニーズに応えるトンチン性を高めた個人年金「グランエイジ」を発売したが、2017年3月には第一生命5が、10月には太陽生命6、かんぽ生命7が同様の個人年金を発売した。

大同生命は2017年7月、2016年4月に保険適用された難病による歩行機能を改善するロボットスーツHAL着用を保障する業界初の特約「HALプラス特約」を発売した。医療保険の既契約、新契約に無料で付加することができ、対象となる8つの難病に罹患し、ロボットスーツHAL着用の場合、100万円を給付する8
 
5 「“長生き”のための新しい個人年金保険 第一生命のとんちん年金『ながいき物語』の発売について」、2017年3月16日、第一生命ホームページ。
6 「太陽生命、人生100歳時代に備える保険『100歳時代年金』を発売!~ “元気に長生きする”シニアを応援する新しい保険~」、2017年8月29日、太陽生命ホームページ。
7 「新商品 "医療特約 その日からプラス" "新ながいきくん 低解約返戻金プラン" "長寿のしあわせ"の販売開始」、2017年9月15日、かんぽ生命ホームページ。
8 「業界初 創業115年記念商品『HALプラス特約』の発売!ロボットスーツHALによる難病治療を保障する生命保険」、2017年5月8日、大同生命ホーム ページ。
このほか、2017年4月、日本生命は法人向け新商品「プラチナフェニックス」(傷害保障重点期間設定型長期定期保険)を発売した。第一保険期間中の疾病死亡による死亡保険金を低く設定することで保険料を抑えながら効率的に企業経営者の保障を準備できる商品となっている9

一方、就業不能保険の分野では、ライフネット生命、住友生命、東京海上日動あんしん生命、朝日生命などが商品を発売してきたが、2017年10月、日本生命は「もしものときの・・・生活費」(就業不能保険)を発売した*10。今後、就業不能保険が生命保険の標準装備となるかどうかが注目される商品である。

さらに、2016年に日本生命から発売された「ニッセイ出産サポート給付金付3大疾病保障保険 ChouChou!」は特定不妊治療費用などを補填する商品であり、2017年の日経優秀製品・サービス賞「日経ヴェリタス賞」を受賞した。最近では出生児の20人に1人が体外受精で産まれており、そうしたニーズに応えるものである。
 
9 「法人向け新商品 プラチナフェニックス ニッセイ傷害保障重点期間設定型長期定期保険の発売について」、2017年3月16日、日本生命ホームページ。
10 「新商品 もしものときの・・・生活費の発売について」、2017年8月10日、日本生命ホームページ。

3―新サービス

1|スマートフォンなどの新技術や宅配便などを活用した新サービス

2016年7月、生保で初めてLINEビジネスコネクトを活用し、LINE上で保険プランナーとの保険相談サービスを開始したライフネット生命は、2017年1月、LINEおよびFacebook Messengerでのチャットボットによる自動応答を活用した保険診断および保険料見積りサービスの提供を開始した*11。

さらに、アクサダイレクト生命は、2017年8月、百十四銀行の高松ローンプラザに生保初の顔認証での保険料試算機能を持つ人型ロボットPepperを導入した*12。

このほか、三井住友海上あいおい生命では、2017年5月、生保初のスマートフォンで再生したバーチャル・リアリティ(仮想現実)映像を利用した先進医療関連の情報提供を開始した 。

メットライフ生命は、2017年11月、業界初の給付金請求専用アプリ「かんたん給付請求」の提供を開始した*13。
 
 
11 「ライフネット生命保険 LINEおよびFacebooMessengerで自動応答による保険診断・見積りが可能に」、2017年1月23日、ライフネット生命ホームページ。
12 「アクサダイレクト生命、百十四銀行にPepperを導入~業界初の顔認証による保険料試算機能で、保険購入ニーズを喚起~」、2017年8月7日、アクサダイレクト生命ホームページ。
13「国内生命保険業界初『バーチャル・リアリティ』で先進医療関連の情報提供を開始」、2017年5月22日、三井住友海上あいおい生命ホームページ。
こうした新技術のほか、既存の宅配便、郵便局ネットワークを活用したサービス導入の動きもある。

2017年3月には、第一生命がヤマト運輸と連携し、近隣に第一生命オフィスがなく訪問しづらいエリアの顧客に第一生命からのリーフレットなどを届け、配達状況をフィードバックする取り組みを開始するとプレス発表した15(日本生命も2017年9月同様の取り組みを実施16)。

2017年6月には、日本生命が郵便局の窓口ロビーに設置した機器を通じた、遠隔での対面サービスによる保全手続きの実証実験を開始した17
 
15 「第一生命保険株式会社とヤマト運輸株式会社が連携し、地域のお客さまに『安心』をお届け~地域・社会貢献に資する新たな取組みを開始~」、2017年3月11日、第一生命ホームページ。
16 「高齢のお客様への情報提供サービスの充実について~ヤマト運輸株式会社によるリーフレット等のお届けをスタートします~」、2017年9月14日、日本生命ホームページ。
17 「郵便局ネットワークを活用した地域共通インフラ構築に向けた実証実験の実施」、2017年6月13日、日本生命ホームページ。
2|健康増進サービスの推進
損保ジャパン日本興亜ひまわり生命は2016年9月からアプリを中心とした健康関連サービスとして「Linkx(リンククロス)」を展開しているが、2017年4月から、健康状態および生活習慣改善に向けたダイエットアプリ「Linkx reco(リンククロス レコ)」、散歩アプリ「Linkx aruku(リンククロス アルク)」の提供を開始している18。2017年11月には、医療用入院一時金特約などの新発売と同時にLinkx会員向けに家事代行サービスの提供を開始19するなど、サービスを拡充している。

楽天生命は、2017年2月、生保初のスマートフォンを活用した女性向けヘルスケアサービスとなる、無料の体調管理アプリ「楽天キレイドナビ」の提供を開始した20
 
18「パートナーや友人と続けられるダイエットアプリ新登場!!リンククロス レコ~毎日4つの簡単なタスクで体型改善~」、「継続的な散歩で健康促進を図る新アプリ リンククロス アルク 全国約300コースの散歩コースを当社の社員が歩いて作成」、2017年3月30日、損保ジャパン日本興亜ひまわり生命ホーム ページ。
19 「新商品『医療用入院一時金特約』と『医療用通院特約』の発売および家事代行会社とパートナーシップ契約締結」、2017年11月2日、損保ジャパン日本興亜ひまわり生命ホームページ。
20 「国内生保初、スマホを活用した女性向けヘルスケアサービスを開始~体調管理アプリ『楽天キレイドナビ』で、女性の健康増進をサポート~」、2017年1月23日、楽天生命ホームページ。
また、2017年3月の日本生命による健康診断やがん検診の受診による「健康サポートマイル」の提供21、2017年6月の明治安田生命の株式会社FiNCと共同開発した企業の健康経営をサポートするプログラム「MY健康増進サービス」の提供22など、健康増進サービスはさまざまなかたちで提供されている。
 
21 「ご契約者様向けのヘルスケアポイント『健康サポートマイル』の導入について」、2017年3月22日、日本生命ホームページ。
22 「中小企業向け健康経営支援プログラム『MY健康増進サービス』の提供開始について」、2017年6月21日、明治安田生命ホームページ。
3|地方自治体との包括連携協定
各地方自治体に拠点網や営業職員を抱える生保会社と地方自治体との包括連携協定締結の動きも進んでいる。

日本生命においては、2016年4月の埼玉県との包括連携協定の締結をはじめとして、岐阜県、愛知県、滋賀県など19の都道府県と協定を締結している。

4―おわりに

2017年の中間決算において、海外子会社などを含む連結ベースでは、一部生保会社において増収を確保したものの、単体ベースではマイナス金利の下で多くの生保会社が減収となっている。

一方、生保会社の経験死亡率や国民死亡率の改善状況等を踏まえ、2018年4月から標準生命表が改定される見通しである。

生命保険各社は、標準生命表改定への対応も急がれるところであり、引き続きその動向を注視していきたい。

小林雅史が2018年2月4日に永眠しました。これまでのご厚誼に深謝いたします。当レポートは小林が生前執筆した最後の原稿を一部編集し掲載いたしました。

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小林 雅史

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(2018年03月07日「基礎研REPORT(冊子版)」)

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