コラム
2018年02月06日

キャッシュレス社会の「光と影」-消費者を丸裸にする「ビッグデータ」

社会研究部 主任研究員   土堤内 昭雄

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キャッシュレス化の動きが進んでいる。消費者にとっては小銭を持つ必要がなく、レジの待ち時間も短くなり、日常生活が便利になる。事業者も出納管理が容易で効率的になり、生産性の向上が見込める。しかし、欧州や中国などを旅すると、日本のキャッシュレス化が遅れていることを実感する。国際的にみると、日本は現金決済比率が高く、高額紙幣を中心とした現金流通高の多い現金大国だ。政府はキャッシュレス決済比率を、2027年6月までに4割程度に高めることを目標に掲げている。

キャッシュレス社会では個人の消費行動が詳細に把握される。だれが、どこで、なにを、いくらで、どれだけ買ったかという情報が自動的に名寄せされ、われわれの消費行動はほぼガラス張りになる。消費に関するビッグデータを収集した企業は、AIを駆使してGPSによる位置情報や気象情報なども加えて解析すれば、一人ひとりの消費パターンの予測もできる。緻密なパーソナル・マーケティングやターゲット・マーケティングが有効に行われ、商品やサービスの売上げ向上につながるのだ。

ビッグデータを活用したAIは、さまざまな相関関係を発見する。アメリカの大手ディスカウントストアでは、消費者の購入品目のビッグデータから、女性客の妊娠まで予測することが可能だという。キャッシュレス化はビッグデータの収集を容易にし、消費者行動の予測分析による新たなビジネスを生み出す。ビッグデータの時代には、企業は大量に収集したデータから高い付加価値情報を取り出し、自らの企業価値を最大化することができるのだ。

キャッシュレス化先進国の中国では、コンビニはじめ屋台でもQRコードを使ったモバイル決済が普及している。インターネット利用者数は約7億5,000万人、その96.3%がモバイルインターネット利用者だ(2017年6月現在)。「中国網日本語版」は、『中国では外出時に携帯する現金が100元(約1,700円)以下の人が40%、100元の現金で1週間生活できる人は70%に達する』と伝えている。しかし、中国で日常化したキャッシュレス社会においては、ビッグデータがもたらす負の側面も懸念される。

キャッシュレス化が進むと、利便性の向上と引き換えに個人のプライバシーが脅かされかねない。個人情報が国家に利用され、世論を操作されたり、選挙結果に影響を与えたりする可能性が高まり、国家が市民の日常生活を管理する監視社会に陥る恐れもある。ビッグデータは多くの企業に利用され新たなビジネスチャンスになるが、人民統治の手段にもなるリスクがあるのだ。消費者を丸裸にするキャッシュレス社会には、プライバシーや個人情報の侵害という「影」があることを忘れてはならない。
 
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社会研究部   主任研究員

土堤内 昭雄 (どてうち あきお)

研究・専門分野
少子高齢化・家族、市民社会・NPO、都市・地域計画

(2018年02月06日「研究員の眼」)

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