2017年12月07日

オフィス市場は好調継続。リート市場の低迷でJREITによる物件取得が減少。-不動産クォータリー・レビュー2017年第3四半期

基礎研REPORT(冊子版)12月号

金融研究部 不動産市場調査室長   竹内 一雅

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景気回復や堅調な企業業績などからオフィス市場は好調が続いている。都心部にまとまった空室は少なく、東京では竣工予定の大規模ビルの内定率が高まり、地方主要都市には東京を上回る活況の都市もある。訪日外国人客の増加により全国のホテル稼働率は近年の最高水準を維持している。国内での不動産売買額は4四半期連続で前年同期を上回った一方、Jリート市場の低迷でJREITによる物件取得額は大きく減少した。不動産業や個人による貸家業への新規貸出額が前年比でマイナスに転じるなど、わずかずつではあるが融資環境に変化がみられる。

1―経済動向

世界経済の回復に加え、企業業績の持ち直しに伴う堅調な設備投資や消費の回復により、日本経済は着実な回復が続いている。9月までの景気回復期間は58ヶ月に達し、戦後2番目の長さとなった。日経平均株価も、11月7日の終値は2万2,937円に達し、約25年10ヶ月ぶりの高値を記録。

ニッセイ基礎研究所の中期経済見通しでは、2027年度までの実質GDP成長率は平均1.0%で、過去10年平均(0.5%)を上回る。人口減少は外国人の増加などから当初想定よりもペースが緩やかになっていることもあり、今後10年程度は人口減少による経済成長への影響を過度に悲観する必要はないと思われる。

2―住宅着工と住宅販売市場

図表1:首都圏分譲マンション新規販売戸数 住宅着工戸数は堅調な貸家着工に支えられ、年率換算で95万戸を上回る好調が続いている。着工戸数が好調に推移する一方、首都圏の分譲マンション発売戸数は過去数年の最低水準で推移し、契約率も好不調の目安である70%を下回る月が多い[図表1]。マンションは高額物件で契約率・契約戸数とも堅調だが、6千万円以下では契約戸数の減少が顕著となっている。






 

3―不動産サブセクターの動向

図表2:東京都心5区の大規模ビル区別空室率 1│オフィス
主要都市のオフィス市場は極めて好調だ。東京都区部で今後の約一年間に供給される大規模オフィスビルの内定率は66%に達する。既存ビルでも需要は堅調で、大規模ビルの空室率は新宿区と渋谷区で1.00%程度とほぼ満室状態にある[図表2]。当面は市況悪化の懸念はほぼなくなったが、今後の東京都心部での供給増加に伴う二次空室の増加で、Aクラスビルの成約賃料は2018年下期から小調整が始まると思われる。

地方主要都市では東京を上回る活況にある。大規模ビルの空室率は札幌と福岡で東京都心5区を下回る。地方では新規供給が少ないこともあり、今後2~3年は活況が続くと考えられる。
2│賃貸マンション
主要都市のマンション賃料指数は上昇基調にある。賃料が上昇する一方で、首都圏の賃貸物件の成約件数は減少が続いてきたが、7月以降、3ヶ月連続で増加するなど成約状況に底打ちの兆しがみられる。高級賃貸マンションでは需給が逼迫し(空室率は6.0%まで低下)、賃料も上昇が続いている。
図表3:百貨店での外国人観光客による免税売上高および前年比増加率 3│商業施設
小売販売額は4四半期連続の増加となった。百貨店では株式市場の好調から富裕層の高額消費が活況で、気温低下のため晩夏・秋冬物を中心に衣料品も好調だった。外国人客の購買額が、過去最高額(前年同期比+86.4%)を更新した[図表3]。

主要商業地区の店舗需要は概ね堅調だが、退店事例も徐々に増えており、中心部から離れた店舗では後継テナントのリーシングに苦戦するケースもみられるようだ。



 
訪日外国人旅行者数 4│ホテル
訪日外国人旅行者数は増加が続いている[図表4]。2017年の訪日外国人旅行者数は2,850万人程度となる見込みで、国際観光客数受入れ順位は2016年の世界16位から12位程度に上昇すると思われる。




 
図表5:全国宿泊施設の延べ宿泊者増加数 7-9月の宿泊施設への延べ宿泊者数は前年比でわずかな増加にとどまった。外国人宿泊者数は大幅に増加したが、日本人宿泊者数が減少したためだ[図表5]。ホテル供給が増加する中でも、主要都市の客室稼働率は昨年を上回る高水準で推移している。全国平均の客室単価(ADR)や一室当り売上高(RevPAR)も上昇した。

政府は民泊の解禁日を2018年6月15日に決定するとともに、民泊運営等におけるルールを定めた施行令・施行規則を公布した。民泊の解禁に伴い、観光庁は民泊の宿泊状況について、来年度より家主からの情報を元に宿泊日数などを公表することとした。

 
5│物流施設
物流施設への需要はEコマース企業を中心に幅広い業種で増加している。2017年は大阪圏で過去最大の供給があり、空室の増加が懸念されていたが、1月~10月の需要量は昨年一年間の2倍に迫る過去最大規模となっている。ただし、新規供給が続く中で、次第に湾岸部での空室が長期化するなど地域格差が顕在化し始めているようだ。東京圏でも来年から大量供給が予定されており、地域や物件による競争力の格差拡大が懸念される。

物流現場での人手不足は深刻で、労働力の確保に優れた物件へのテナント評価が高まっている。

4―J -REIT(不動産投信)・不動産投資市場

図表6:東証REIT指数 1│J-REIT(不動産投信)
東証REIT指数(配当除き)は、これまでの市場拡大を支えてきたJリート投信からの資金流出が継続したことから、6月末比で▲2.4%下落した。年初からの下落率は▲11%と、好調な国内株式(+10%上昇)とのリターン格差がさらに拡大した[図表6]。リート市場の低迷(投資口価格の下落)や不動産利回りの低下を背景に、7-9月の物件取得額は前年同期比▲42%と大きく減少した。

 
図表7:国内不動産売買額 2│不動産投資市場
7-9月の不動産売買額は4四半期連続で前年同期を上回った[図表7]。売買の特徴は、リートによる物件取得が前年比で減少した中で、三菱地所物流リート投資法人の新規上場などにより、物流施設の活発な取得が見られたことだ。

不動産投資における資金環境は良好な状態が続いているが、わずかながら変化も見られ始めた。不動産業や個人による貸家業に対する新規貸出額が前年比で減少に転じた。融資環境の変化の中で、堅調な住宅着工を支えてきた貸家の好調もこれまでとは異なる動きが現れる可能性もある。
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金融研究部   不動産市場調査室長

竹内 一雅 (たけうち かずまさ)

研究・専門分野
不動産市場・投資分析

(2017年12月07日「基礎研REPORT(冊子版)」)

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