2017年11月20日

貿易統計17年10月-自動車輸出の不調から輸出数量の伸びが鈍化

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.原油高の影響で貿易収支が悪化

財務省が11月20日に公表した貿易統計によると、17年10月の貿易収支は2,854億円と5ヵ月連続の黒字となったが、事前の市場予想(QUICK集計:3,300億円、当社予想は3,345億円)を下回る結果となった。輸出入ともに前年比で二桁の高い伸びが続いたが、原油価格上昇の影響から輸入の伸び(前年比18.9%)が輸出の伸び(同14.0%)を上回ったため、貿易収支は前年に比べ▲1,958億円の悪化となった。

輸出の内訳を数量、価格に分けてみると、輸出数量が前年比3.8%(9月:同4.8%)、輸出価格が前年比9.8%(9月:同8.9%)、輸入の内訳は、輸入数量が前年比3.2%(9月:同▲0.2%)、輸入価格が前年比15.2%(9月:同12.3%)であった。
貿易収支の推移/貿易収支(季節調整値)の推移/輸出金額の要因分解/輸入金額の要因分解
季節調整済の貿易収支は3,229億円の黒字となり、9月の2,666億円から黒字幅が拡大した。輸出が前月比2.0%の増加となり、輸入の伸び(前月比1.2%)を上回った。
原油価格(ドバイと入着ベース)の推移 10月の通関(入着)ベースの原油価格は1バレル=54.8ドル(当研究所による試算値)となり、9月の51.6ドルから上昇した。足もとのドバイ原油は60ドル程度で推移しており、通関ベースの原油価格は11月に50ドル台後半、12月に60ドル台まで上昇することが見込まれる。輸出は底堅く推移しているが、原油価格上昇に伴う輸入価格の上昇を主因として、先行きの貿易収支(季節調整値)は縮小する可能性が高いだろう。

2.自動車輸出(数量)が減少

10月の輸出数量指数を地域別に見ると、米国向けが前年比1.6%(9月:同6.2%)、EU向けが前年比0.6%(9月:同▲1.7%)、アジア向けが前年比7.8%(9月:同9.0%)となった。
地域別輸出数量指数(季節調整値)の推移 季節調整値(当研究所による試算値)では、米国向けが前月比▲7.6%(9月:同0.4%)、EU向けが前月比▲1.1%(9月:同▲0.4%)、アジア向けが前月比▲1.7%(9月:同▲0.1%)、全体では前月比0.5%(9月:同▲2.1%)となった。10月の水準を7-9月期と比較すると、アジア向けは0.4%上回っているが、米国向けは▲6.3%、EU向けは▲0.9%下回っている(全体では0.2%)。

米国向け、EU向けは特に自動車の落ち込みが大きく(米国向けは前年比▲7.2%、EU向けは同▲4.2%、いずれも数量ベース)、輸出全体を大きく押し下げた。大手自動車メーカーが無資格検査問題で生産量を大きく落としたことが影響している可能性がある。
 
7-9月期のGDP速報では、財貨・サービスの輸出が前期比1.5%と2四半期ぶりの増加となる一方、財貨・サービスの輸入が同▲1.6%と5四半期ぶりに減少したため、外需寄与度が前期比0.5%と成長率を大きく押し上げた。

10-12月期は輸出が底堅さを維持するものの7-9月期から伸びが鈍化すること、国内需要の持ち直しを反映し輸入が増加に転じることから、外需のプラス幅は縮小することが予想される。
 
 

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斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2017年11月20日「経済・金融フラッシュ」)

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