2017年10月13日

中期経済見通し(2017~2027年度)

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(経常収支は2020年代後半に赤字へ)
足もとの経常収支はGDP比で3%を超える高水準の黒字となっているが、中長期的には貯蓄投資バランスによって決定される。部門別の貯蓄投資バランスの推移を見ると、貯蓄超過が続いていた家計部門は2013年度には小幅な貯蓄不足となったが、2014年度には再び貯蓄超過に戻った。一般政府はバブル期に貯蓄超過に転じた局面もあったが、バブル崩壊後は投資超過を続けている。また、企業部門は1998年度から一貫して貯蓄超過が続いている。

家計貯蓄率は高齢化の影響などから長期的に低下傾向が続き、2013年度は消費税率引き上げ前の駆け込み需要で個人消費が高い伸びとなったことからマイナスに転じた。しかし、2014年度に消費増税の影響で消費が大きく落ち込んだことから0.2%と小幅なプラスに転じた後、2015年度、2016年度と消費の伸び悩みが続いため、足もとの貯蓄率は1%台まで上昇している可能性が高い。しかし、先行きは高齢化がさらに進展することから再び低下傾向となり、2023年度以降は家計貯蓄率のマイナスが恒常化することが見込まれる。これに伴い家計部門の貯蓄投資バランスも2020年代半ばには投資超過となることが予想される。

企業部門は、設備投資の伸びが高まることや予測期間終盤には金利上昇に伴い利払い費が増加することから貯蓄超過幅は縮小に向かう。政府は財政赤字の削減が緩やかながらも進展することから投資超過幅は縮小傾向となるだろう。今回の見通しでは、政府の投資超過幅は縮小するものの、家計が貯蓄超過から投資超過に転じ、企業の貯蓄超過幅が縮小する結果、経常収支は予測期間終盤に小幅ながら赤字化すると予想する。
 
家計貯蓄率の見通し/制度部門別貯蓄投資バランス

(第一次所得収支の黒字は高水準が続く)
経常収支の内訳をみると、貿易収支は2015年末頃から黒字を続けているが、中長期的には高齢化の進展に伴う国内供給力の伸び率低下から趨勢的には輸入の伸びが輸出の伸びを上回ることになるため、貿易赤字の拡大傾向が続く可能性が高い。貿易収支は2019年度に赤字に転じた後、予測期間末には赤字幅が名目GDP比で3%程度まで拡大することが予想される。

一方、経常黒字の蓄積による対外資産の増加を反映し、2016年度の第一次所得収支は18.1兆円(GDP比で3.4%)の高水準となっている。日本の対外資産は1990年末の279兆円から2016年末には998兆円まで増加し、対外資産から対外負債を差し引いた対外純資産も2016年には349兆円に達している。2016年度の第一次所得収支は円高の影響で8年ぶりに黒字幅が縮小したが、その後の円安の進展に伴い再び黒字は拡大傾向にある。

今回の予測では、為替レートは2019年度まで円安が続いた後、2020年度以降は緩やかな円高傾向で推移するとしている。このため、第一次所得収支の黒字幅は予測期間中盤にかけて20兆円台まで拡大した後、予測期間後半は黒字幅が徐々に縮小すると予想する。
 
対外純資産残高の推移/経常収支の推移
(訪日外国人旅行者数は2020年には4000万人へ)
一貫して赤字が続いてきたサービス収支は、旅行収支の改善を主因として赤字幅が縮小している。旅行収支は訪日外国人旅行者の急増を主因として2015年に1.1兆円と1996年の現行統計開始以来初の黒字となった後、2016年には1.3兆円へと黒字幅が拡大した。

安倍政権発足後に最初に策定された「日本再興戦略(2013年6月)」では、「2013年に訪日外国人旅行者1000万人、2030年に3000万人超を目指す」としていたが、「日本再興戦略」改訂2014では、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催決定を受けて、「2020年に向けて、訪日外国人旅行者数2000万人の高みを目指す」という目標を追加した。さらに、「日本再興戦略2016」では、訪日外国人旅行者数を「2020年に4000万人、2030年に6000万人」へと目標を上方修正し、訪日外国人旅行消費額の目標は「2020年に8兆円、2030年に15兆円」とした。

2016年の訪日外国人旅行者数が前年比21.8%の2404万人となり、2017年も前年比で二桁の伸びとなることが見込まれる(1~8月までの平均は前年比17.8%)。訪日外国人旅行者数は2018年に3000万人を超えた後、東京オリンピック開催年の2020年には政府目標の4000万人を突破する可能性が高い。一方、円高の影響や中国人を中心とした「爆買い」が一巡したことなどから一人当たり消費額は2016年に入ってから前年比で減少が続いているため、訪日外国人旅行者の消費額はやや伸び悩んでいる。2016年の訪日外国人消費額は3.7兆円で、2020年の訪日外国人旅行者数が4000万人となった場合、訪日外国人消費額が8.0兆円となるためには、2017年以降の一人当たり消費額が年平均で6.4%伸びる必要がある(2016年は前年比▲11.5%)。訪日外国人旅行者数の政府目標は達成される可能性が高いが、訪日外国人消費額については目標達成のハードルはかなり高い。

旅行収支の黒字幅は2016年の1.3兆円から2027年には4.9兆円まで拡大するだろう。旅行収支の受取額は2016年の3.3兆円、GDP比0.6%から2027年には7.7兆円、GDP比1.2%まで拡大すると予想する。
 
訪日外国人旅行消費額の要因分解/訪日外国人旅行者数と旅行収支の予想


(財政収支の見通し)
2014年度の消費税率引き上げによって、国・地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)の名目GDP比は2013年度の▲5%台から2015年度には▲3%程度まで改善した。

今回の予測では、2019年度、2024年度にそれぞれ消費税率を2%引き上げ、予測期間末の消費税率は12%になるが、軽減税率の導入により食料(酒類、外食を除く)の税率は8%に据え置かれることを想定している。このため、税率1%引き上げによる消費税収の増加は従来の約4分の3にとどまる。支出面では、高齢化に伴う社会保障給付の着実な増加が続く中、東京オリンピック開催に向けて公共投資の伸びが高まることが見込まれる。

安倍政権発足後、景気の回復基調が続く中でも経済対策による補正予算が毎年編成されている。補正予算の編成が恒常化していることも財政再建を遅らせる一因となるだろう。また、2014年度は消費税率引き上げによって実体経済は低迷したものの、大幅な円安や原油価格下落によって企業収益が堅調を維持したことなどから、税収への悪影響は比較的小さかったが、次回以降の増税時にも外部環境が改善する保証はない。消費税率引き上げによって消費税以外の税収がある程度低迷することは避けられないだろう。また、東京オリンピック開催後の2021年度には景気が一時的に低迷し(2021年度の実質GDP成長率は▲0.1%を予想)税収が落ち込むため、財政収支が悪化するだろう。

政府は2020年度までに基礎的財政収支を黒字化するという目標を掲げてきた。しかし、安倍首相は衆議院解散を表明する9/25の記者会見で、消費税率10%への引き上げに伴う増収分の一部を幼児教育の無償化などに充てるとし、2020年度の基礎的財政収支の黒字化目標の達成は困難になると明言した。2019年度の消費税率引き上げに伴う財政収支の改善は限定的にとどまる可能性が高い。

基礎的財政収支は2027年度でもGDP比▲2.2%の赤字となり、財政収支の黒字化は実現しないと予想する。

この結果、すでに約1000兆円となっている国・地方の債務残高は2027年度には約1400兆円まで増加するだろう。一方、債務残高の名目GDP比はすでに約200%となっているが、今後10年間は名目GDPが比較的高い伸びとなるため、上昇ペースは緩やかになることが見込まれる。

なお、予測期間の前半は長期金利がほぼゼロ%で推移することにより、利払い費が抑制された状態が続くが、債務残高の拡大が続く中で予測期間末にかけては長期金利が緩やかに上昇するため、利払い費(ネット)を含む財政収支は基礎的財政収支に比べ改善ペースが遅くなるだろう。
国・地方の財政収支(対名目GDP比)/国・地方の債務残高
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