2017年02月22日

名古屋オフィス市場の現況と見通し(2017年)

竹内 一雅

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4. 名古屋の新規供給・人口見通し

名古屋駅前では、2015年秋の大名古屋ビルヂングとJPタワー名古屋に続き、2016年以降もシンフォニー豊田ビル、JRゲートタワー、グローバルゲートウエストタワーと大規模オフィスビルの供給が続いている。三幸エステートによると、2015年~2018年の4年間の大規模ビルの新規供給面積(賃貸対象面積)は8万4千坪に達し、それ以前の4年間(2011年~2014年:1万4千坪)の5.8倍に達している(図表-13)。

2016年の名古屋市の人口の転入超過数は5,934人で、近年の最高水準を維持している(図表-14)。名古屋市の転入超過数は実質GDP成長率との相関が高いため6、当面は人口の流入が続くと考えられる。なお、名古屋市の転入超過数を男女年齢別にみると、純流入が最も多い20~24歳で男性が女性を上回っているところに他の都市とは異なる特徴がある7(図表-15)。

名古屋市では転入超過数が高水準で推移していることもあり、生産年齢人口は2014年を底に若干の増加となった(図表-16)。ただし、生産年齢人口は長期的に減少トレンドにあり、今後も減少が続くと予測されている。
図表-13 名古屋の大規模賃貸ビル新規供給計画/図表-14 主要都市の転入超過数/図表-15 名古屋市の男女年齢別転入超過数(2016年)/図表-16 名古屋市の生産年齢人口(15~64才)の現況と見通し
 
6 竹内一雅「名古屋オフィス市場の現況と見通し(2016年)」(2016.2.26)ニッセイ基礎研究所の図表-13を参照のこと。
7 東京都区部、札幌市、仙台市、大阪市、福岡市といった他の主要都市では、20~24歳の転入超過数は女性が男性を上回っている。また、名古屋市では15~19歳の転入超過数は821人にすぎず、東京都区部(9,991人)や大阪市(1,817人)はもちろん、札幌市(1,485人)、仙台市(1,232人)、福岡市(2,002人)をも下回っている。
 

5. 名古屋のオフィス賃料見通し

5. 名古屋のオフィス賃料見通し

名古屋における今後のオフィス供給や人口流入、経済予測などに基づくオフィス需給の見通しから、2023年までの名古屋のオフィス賃料を予測した8

名古屋のオフィス賃料は、需要の強さから大規模ビルの新規供給による二次空室を吸収し、2020年まで上昇が続くと予測された(図表-17)。標準シナリオによると、2016年下期から2020年(下期、以下同じ)までに+5.8%上昇(2016年下期比)した後に下落に転じ、2023年には同▲2.4%になるという結果が得られた。

同様に当面の賃料上昇のピークまでに、楽観シナリオでは+11.4%(2016年下期比)上昇するが悲観シナリオでは今後2016年水準まで回復せずに下落が続くとされ、2023年の賃料は楽観シナリオで同+4.9%、悲観シナリオで同▲11.2%だった。
図表-17 名古屋オフィス賃料見通し
 
8 ニッセイ基礎研究所経済研究部「中期経済見通し(2016~2026年度)」2016.10.14、斎藤太郎「2016~2018年度経済見通し~16年7-9月期GDP2次速報後改定」2016.12.8などを基に、今後の実質GDP成長率見通しを設定した。
 

6. おわりに

6. おわりに

名古屋では2015年から続く名古屋駅前での大規模ビルの相次ぐ竣工による影響で、市況が悪化する懸念が高まっていた。しかし、現在のところ、県外からの新規進出や、郊外や自社ビルからの移転、市内での拡張移転、館内増床などが続き、オフィス市況は好調が続いているという。

名古屋駅前の新築大規模ビルが高い稼働率を達成しただけでなく、それらのビルに入居したテナントの移転元となった伏見地区や丸の内地区のビルでも引き合いは強く、順調に空室は埋まる傾向にあるようだ。

本稿の予測では、すでに賃料水準がかなり高くなっていることもあり、賃料上昇のスピードは高くはないが、景気が堅調に推移する限り二次空室なども解消され、2020年までは賃料の上昇が続くという結果となった。

人口に着目すると、2015年から2016年にかけて、名古屋市の20~24歳の転入超過数は、男性では▲5.5%減少した一方で、女性は+4.1%の増加だった。現在、名古屋駅周辺を中心に進む大規模開発や、商業施設・ホテルなどの開発が、女性の就業機会とともに、都市の魅力を高めることに貢献し始めているのではないかと思われる。

今後も進む大規模再開発が、名古屋の業務・商業機能のさらなる向上とともに、男性と比べて少ない若年女性の純流入の増加と、景気悪化時にも安定的に人口が流入するような、これまで以上に魅力的で繁華性のある街づくりや多様な産業の振興を期待したい。さらに、地区間の二極化の解消のためにも、名古屋駅前以外での再開発や創業支援、人が集まる仕組みの充実など、名古屋駅前地区以外でのさらなる魅力向上が望まれる。
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竹内 一雅

研究・専門分野

(2017年02月22日「不動産投資レポート」)

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