2016年10月31日

【7-9月期米GDP】前期比年率+2.9%、在庫投資と純輸出が成長を押上げ

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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1.結果の概要:成長率は、前期から大幅に上昇、市場予想も上回る

10月28日、米商務省の経済分析局(BEA)は7-9月期のGDP統計(1次速報値)を公表した。7-9月期の実質GDP成長率(以下、成長率)は、季節調整済の前期比年率1で+2.9%となり、4-6月期(同+1.4%)から大幅に上昇、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の同+2.6%も上回った(図表1・2)。当期の成長率は14年7-9月期の+5.0%に次ぐ高い伸びとなった。
(図表1)米国の実質GDP成長率(寄与度)/(図表2)米国のGDP(項目別)
7-9月期の成長率を需要項目別にみると、個人消費が前期比年率+2.1%(前期:+4.3%)と高い伸びとなった前期から大幅に鈍化したほか、住宅投資が▲6.2%(前期:▲7.7%)と2期連続のマイナスとなった(図表2)。一方、民間設備投資が+1.2%(前期:+1.0%)と2期連続のプラスとなったほか、政府支出も+0.5%(前期:▲1.7%)と前期からプラスに転じた。また、純輸出(輸出-輸入)の成長率期寄与度が+0.83%ポイント(前期:+0.18%ポイント)と大幅に成長を押上げた。さらに、在庫投資の成長率寄与度が+0.61%ポイント(前期:▲1.16%ポイント)と、6期ぶりにプラスに転じ、成長を押上げた。

成長率は、15年10-12月期から3期連続で低成長となっていたが、漸く高い伸びに復したことで米経済の減速懸念は払拭された。もっとも、7-9月期成長率の中身をみると、米経済の成長エンジンである個人消費の伸びが大幅に鈍化する一方、当期は純輸出と在庫投資の合計で成長率が1.44%ポイント押上げられていたことが分かる。在庫投資は当期のプラス寄与はある程度想定されていたものの、今後も在庫投資の積上げが持続するか疑問である。また、純輸出は後述するようにやや特殊要因で持ち上げられていることが大幅なプラス寄与の要因である。このため、当期はやや一時的な特殊要因で持ち上げている点には注意が必要だろう。

もっとも、前述のように当期の結果は、米経済に対する悲観論を払拭するには十分な成長となっており、FRBによる12月の追加利上げは、ほぼ確定的となったと判断できる。
 
 
1 以降、本稿では特に断りの無い限り季節調整済の実質値を指すこととする。

2.結果の詳細:

(個人消費・個人所得)非耐久消費財、サービス消費が鈍化の要因
7-9月期の個人消費は、財消費が前期比年率+2.2%(前期:+7.1%)、サービス消費が+2.1%(前期:+3.0%)と財、サービス消費ともに前期から伸びが鈍化した(図表3)。財消費では、自動車・自動車部品が+16.2%(前期:+9.0%)と2桁の伸びとなったこともあって、耐久消費財が+9.5%(前期:+9.8%)と前期から高い伸びを維持した。一方、衣料・靴が▲0.7%(前期:+4.8%)とマイナスに転じたほか、ガソリンが▲3.5%(前期:▲0.3%)とマイナス幅が拡大したこともあり、非耐久消費財は▲1.4%(前期+5.7%)とマイナスに転じた。また、サービス消費は、医療サービス+2.3%(前期:+7.3%)や住宅・公共料金+2.4%(前期:+4.4%)の伸びが前期から鈍化した。

一方、所得は実質可処分所得が+2.2%(前期:+2.1%)と、小幅ながら前期から伸びが加速した(図表4)。貯蓄率は5.7%(前期:5.7%)と前期から横這いとなった。
(図表3)米国の実質個人消費支出(寄与度)/(図表4)米国の実質可処分所得伸び率と貯蓄率
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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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