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- 【9月米雇用統計】強弱混じる結果。雇用者数は若干弱かったものの、労働参加率は改善、賃金も伸びが加速した。
2016年10月11日
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1.結果の概要:雇用者数、失業率は予想対比で悪化。
10月7日、米国労働省(BLS)は9月の雇用統計を公表した。非農業部門雇用者数は、前月対比で15.6万人の増加1(前月改定値:+16.7万人)となり、上方修正された前月改定値から低下、市場予想の+17.2万人(Bloomberg集計の中央値、以下同様)も下回った(後掲図表2参照)。
失業率は5.0%(前月:4.9%、市場予想:4.9%)とこちらは前月、市場予想を上回った(後掲図表6参照)。一方、労働参加率2は62.9%(前月:62.8%)と前月から上昇した(後掲図表5参照)。
1 季節調整済の数値。以下、特に断りがない限り、季節調整済の数値を記載している。
2 労働参加率は、生産年齢人口(16歳以上の人口)に対する労働力人口(就業者数と失業者数を合計したもの)の比率。
失業率は5.0%(前月:4.9%、市場予想:4.9%)とこちらは前月、市場予想を上回った(後掲図表6参照)。一方、労働参加率2は62.9%(前月:62.8%)と前月から上昇した(後掲図表5参照)。
1 季節調整済の数値。以下、特に断りがない限り、季節調整済の数値を記載している。
2 労働参加率は、生産年齢人口(16歳以上の人口)に対する労働力人口(就業者数と失業者数を合計したもの)の比率。
2.結果の評価:雇用者数増減、失業率は小幅悪化も、年内利上げ方針への影響は限定的
9月の雇用増加数は、市場予想を下回り、雇用増加ペースの鈍化が続いていることを示したものの、7-9月の月間平均雇用増加数は19.2万人と4-6月(14.6万人)を上回り、1-3月(19.6万人)に近い水準に留まっている。労働市場が完全雇用に近づく中で20万人超の雇用増加ペースを維持するのは難しくなっており、10万人台半ばから後半で雇用の拡大が維持できれば労働市場は堅調と判断して良いだろう。
家計調査では失業率が予想に反して、前月から小幅に上昇したが、労働参加率の上昇にみられるように職探しを再開して労働市場に再参入する人の増加による部分が大きいため、心配する必要はないだろう。今後も失業率の改善が滞る可能性があるが、労働参加率の改善を伴っていれば労働需給のタイト化は持続していると判断できる。
家計調査では失業率が予想に反して、前月から小幅に上昇したが、労働参加率の上昇にみられるように職探しを再開して労働市場に再参入する人の増加による部分が大きいため、心配する必要はないだろう。今後も失業率の改善が滞る可能性があるが、労働参加率の改善を伴っていれば労働需給のタイト化は持続していると判断できる。

このようにみると、9月の結果は雇用者数や失業率と言った雇用統計のヘッドライン数値は労働市場の改善ペース鈍化を示したものの、労働参加率や賃金などで改善が持続しており、ヘッドラインが示すほど悪い結果でなく、強弱混じる結果であったと評価できる。
9月のFOMCでは、年内利上げの条件として更なる労働市場の改善と、新たなリスクが発生しないことが挙げられていた。9月の雇用統計は11月利上げを確信させるほど強い結果ではなかったものの、依然として年内利上げの条件を満たす結果であったとみられる。当研究所は引き続き12月の追加利上げを予想している。
3.事業所調査の詳細:専門・ビジネスの伸びが加速、製造業は2ヵ月連続減少

サービス部門の中では、人材派遣業が前月比+2.3万人(前月比:▲0.1万人)と前月から増加に転じたことから、専門・ビジネスサービスが+6.7万人(前月:+3.1万人)と伸びが加速したほか、医療サービスも+3.3万人(前月:+2.2万人と伸びが加速した。一方、社会扶助関連が▲1.1万人(前月:+2.3万人)と減少に転じた。
財生産部門は、前月比+1.0万人(前月:▲2.5万人)と増加に転じた。製造業は▲1.3万人(前月:▲1.6万人)と2ヵ月連続で減少したものの、建設業が+2.3万人(前月:▲0.5万人)と増加に転じたほか、資源関連が+0.02万人(前月:▲0.3万人)と、僅かながら14年9月以来の増加に転じた。
政府部門は前月比▲1.1万人(前月:+2.3万人)と前月から減少に転じた。内訳をみると連邦政府が+0.4万人(前月:+0.2万人)と前月から伸びが加速した一方、州・地方政府が▲1.5万人(前月:+2.1万人)と前月から減少に転じた。
前月(8月)と前々月(7月)の雇用増(改定値)は、前月が+16.7万人(改定前:+15.1万人)と+1.6万人上方修正された一方、前々月は+25.2万人(改定前:+27.5万人)とこちらは▲2.3万人下方修正された。この結果、2ヵ月合計の修正幅は▲0.7万人の下方修正となった(図表3)。
なお、BLSの公表に先立って10月5日に発表されたADP社の推計は、非農業部門(政府部門除く)の雇用増が+15.4万人(前月改定値:+17.5万人、市場予想:+16.5万人)となり、前月、市場予想を下回った。雇用統計とADP統計は5月から7月にかけて水準の大幅な乖離がみられていたが、8月、9月は比較的小幅な乖離に留まった。
9月の賃金・労働時間(全雇用者ベース)は、民間平均の時間当たり賃金が25.79ドル(前月:25.73ドル)となり、前月から+6セント増加した。一方、週当たり労働時間は34.4時間(前月:34.3時間)と、こちらも前月から0.1時間増加した。その結果、週当たり賃金は887.18ドル(前月:882.54ドル)と前月から増加した(図表4)。
なお、BLSの公表に先立って10月5日に発表されたADP社の推計は、非農業部門(政府部門除く)の雇用増が+15.4万人(前月改定値:+17.5万人、市場予想:+16.5万人)となり、前月、市場予想を下回った。雇用統計とADP統計は5月から7月にかけて水準の大幅な乖離がみられていたが、8月、9月は比較的小幅な乖離に留まった。
9月の賃金・労働時間(全雇用者ベース)は、民間平均の時間当たり賃金が25.79ドル(前月:25.73ドル)となり、前月から+6セント増加した。一方、週当たり労働時間は34.4時間(前月:34.3時間)と、こちらも前月から0.1時間増加した。その結果、週当たり賃金は887.18ドル(前月:882.54ドル)と前月から増加した(図表4)。
(2016年10月11日「経済・金融フラッシュ」)
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経歴
- 【職歴】
1991年 日本生命保険相互会社入社
1999年 NLI International Inc.(米国)
2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
2014年10月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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