2016年10月03日

【8月米個人所得・消費支出】名目個人消費は前月比横這い。2ヵ月連続で所得の伸びを下回る。

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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1.結果の概要:個人消費は名目が前月比横這い、実質は16年3月以来のマイナス

9月30日、米商務省の経済分析局(BEA)は8月の個人所得・消費支出統計を公表した。個人所得(名目値)は、前月比+0.2%(前月:+0.4%)となり前月から伸びが鈍化、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の+0.2%に一致した。一方、個人消費支出(名目値)は、前月比横這い(前月改定値:+0.4%)と、こちらは+0.3%から上方修正された前月改定値を下回ったほか、市場予想(+0.1%)も下回った(図表1)。価格変動の影響を除いた実質個人消費支出は、前月比▲0.1%(前月:+0.3%)と16年3月以来のマイナスに転じ、市場予想(横這い)も下回った(図表5)。貯蓄率1は5.7%(前月:5.6%)と2ヵ月連続の上昇となった。

価格指数は、総合指数が前月比+0.1(前月:横這い)と前月から伸びが加速したものの、市場予想(+0.2%)は下回った。また、変動の大きい食料品・エネルギーを除いたコア指数は、前月比+0.2%(前月値:+0.1%)と前月から伸びが加速、市場予想(+0.2%)には一致した(図表6)。なお、前年同月比では、総合指数が+1.0%(前月:+0.8%)、コア指数が+1.7%(前月:+1.6%)となり、総合指数、コア指数ともに前月から伸びが加速した(図表7)。
 
1 可処分所得に対する貯蓄(可処分所得-個人支出)の比率。

2.結果の評価:2ヵ月連続、所得対比で消費の伸びは鈍化

(図表1)個人所得・消費支出、貯蓄率 名目個人消費(前月比)は、16年4月以降、底堅い伸びが続いていたが、8月は伸び鈍化が鮮明となった(図表1)。名目個人所得が低い伸びとなったことが影響していると考えられるものの、16年3月をピークに低下していた貯蓄率も2ヵ月連続で上昇しており、所得対比でみても消費者が消費を抑制している姿勢が伺われる。

所得動向に注意する必要はあるものの、米国株式市場が最高値圏で推移する中、最近発表された消費者センチメントは、ミシンガン大学の指数が16年6月以来の高さとなったほか、コンファレンスボードの指数は07年8月以来の高さとなるなど、消費マインドには改善がみられることから、所得対比で消費が抑制されている状況は一時的とみられる。

物価(前年同月比)は、総合指数が4ヵ月ぶりに上昇し、市場予想(+0.9%)を上回る伸びを示したほか、コア指数も16年2月以来の水準に上昇するなど緩やかながら上昇圧力がみられた。もっとも、FRBの物価目標(2%)を下回っており目標達成の目処がたたない状況が持続している。
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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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