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中期経済見通し(2016~2026年度)
経済研究部 経済研究部
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4. 金融市場の見通し
日銀は2016年9月の金融政策決定会合における枠組み変更で、物価上昇率が「安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続する」というオーバーシュート型コミットメントを導入したが、2%超えのハードルは高く、金融緩和を長期にわたって続けざるを得ない。物価上昇率が2%を超えるのは予測期間終盤の2023年度となり、その段階で量的緩和を停止、数ヵ月の後に長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)も終了し、従来の政策金利である無担保コールレート誘導目標(上限0.10%)を復活する。ただし、この出口戦略にあたっては、長期金利の過度な上昇を回避すべく、債券償還資金の再投資(マネタリーベースの維持)を長期に約束する新たなフォワード・ガイダンスが導入されると予想する。
無担保コールレート誘導目標は、2023年に0.10%(上限)で復活した後、同水準で維持されると見込んでいる。物価上昇率が2024年度以降、再び2%を割り込むことから、利上げの実施には至らない。
長期金利については、日銀が長短金利操作の中で、長期金利の誘導目標をゼロ%程度に据え置くことから、予測期間中盤にかけて、0%を小幅に下回るマイナス圏で推移する。2023年度に長短金利操作が終了した後は上昇基調に入るが、上記の新たなフォワード・ガイダンスの下、急上昇は避けられるだろう。予測期間末で1.3%と予想する。
今後も景気回復が続く米国は2017年以降も年2~3回のペースでの継続的な利上げの実施が見込まれる。現在0.5%(上限)にあるFF金利誘導目標(政策金利)は段階的に引き上げられ、2019年に2.75%で着地する。
現在は低位にある米長期金利も、景気回復や段階的な利上げを受けて上昇基調を辿り、利上げが打ち止めとなる2019年に3.4%まで上昇して落ち着くと見込んでいる。
(ユーロ圏の金融政策と金利)
ユーロ圏では今後も景気回復が続くものの、物価上昇率は「2%以下でその近辺」という物価目標まで距離があるため、当面は金融緩和を継続する。その後、2017年に量的緩和の縮小を開始し2018年には量的緩和を停止、さらにその翌年である2019年にはマイナス金利政策も終了するとともに、小幅な利上げを実施すると見ている。
現行0%に据え置かれているECB市場介入金利(政策金利)は2018年にかけて現行水準で維持されるが、2019年以降は段階的に引き上げられ、2022年に1.50%で着地する。
ユーロ圏の代表的な長期金利である独長期金利も、金融緩和継続によってしばらく底這うが、その後はECBの出口戦略と段階的な利上げを受けて上昇基調となり、利上げが打ち止めとなる2022年に2.0%まで上昇して落ち着くと見込んでいる。
ドル円レートについては、予測期間序盤のうちは、日本の金融緩和が長期化する一方で米国が段階的な利上げを続けることに伴って日米(長短)金利差が拡大、ドルの投資妙味が高まることで、2019年度にかけて1ドル115円まで円安ドル高が進む。
その後、予測期間半ば以降は、米国の金利が頭打ちとなる一方で、日銀金融政策の出口戦略が段階的に進められることで日米金利差が縮小するため、予測期間末にかけて円高ドル安基調が続く見通し。
ただし、予測期間終盤には日本の経常収支赤字化という新たな円安要因が金融政策に伴う円高圧力を緩和する方向に働く。従って、水準としては、予測期間末時点で1ドル106円と、現状の為替レートと比べてやや円安水準で着地すると見ている。
ユーロドルレートについては、当面はECBが金融緩和を続ける一方で米利上げが先行すること、今後は英国のEU離脱交渉がユーロ安に働くことによって、2018年にかけて、一旦ユーロ安ドル高が進行する。しかし、ECBは2017年に緩やかに出口戦略を開始し、米国が利上げを停止する2019年以降も利上げを進めるため、これを織り込む形で2019年からユーロが上昇に転じる。また、予測期間終盤にかけては、基軸通貨ドルの相対的な地位低下を受けて、ドルに次ぐ位置付けにあるユーロは、その主たる受け皿の役割を担うことになり、ユーロドルにやや上昇圧力がかかる。予測期間末には1ユーロ1.20ドル強に上昇すると見込んでいる。
ちなみに、ユーロ円レートは、当面は円とユーロの弱さ比べの様相となる形で方向感が出ないが、ユーロ圏の金融政策正常化が先行することで、予測期間中盤にかけてユーロ高基調となる。その後は日本が金融政策の正常化を進めることから緩やかな円高基調に転じ、予測期間末は128円で着地すると予想している。
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