2016年07月11日

ギリシャ危機2015-緊迫の3週間を振り返る

経済研究部 上席研究員   伊藤 さゆり

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2015年夏、ギリシャ情勢は、予想を大きく超える劇的な急展開を辿った。以下に15年6月下旬から7月中旬まで、事態の変化に応じて執筆した4本のレポートを時系列で並べた。重要な動きとともに、その時々の筆者の考えを述べた部分にも下線を引いた。3週間余りの緊迫した情勢を振り返っていただけるのではないかと思う。
 
「ギリシャ危機2015」は、6月末の期限目前での支援協議決裂、銀行の一時休業と資本規制の導入、支援条件への是非を問う国民投票での圧倒的多数の「NO」というプロセスを経て、第3次支援プログラムの合意で終息した。しかし、ギリシャの政府の債務があまりに大きく(図表1)、支援条件があまりに厳しかったため、危機再燃のリスクを強く意識せざるを得なかった。
 
早ければ今夏の「ギリシャ危機2016」も想定できた。昨年同様、7月20日にECBなどが保有する23億ユーロの国債償還を控えるが、ギリシャの改革が難航し、新たな支援が凍結されたままになっていたからだ。
 
しかし、幸い、5月24日のユーロ圏財務相会合(ユーログループ)で、年金や税制改革、民営化基金創設などの取り組みを認め、6月中に75億ユーロの支援を実行する方針が固まり、今夏の危機再燃は回避される見通しとなった。懸案の債務再編についても、24日のユーログループで、元本削減はしない大原則を維持しつつ、ギリシャの改革の進捗状況に合わせて、短期、中期、長期で実施する負担を軽減する案を協議した。債務再編を条件としてきたIMFの支援参加にも道が拓かれつつある。
 
「ギリシャ危機2015」終息後、EUにはシリアなどから大量の難民が流入、地中海をわたる難民のEUへの流入ルートの前線に位置するギリシャの地理的な重要性が改めて認識された。他方、大量の難民を受け入れたドイツでは、EUに流入する難民をコントロールすることが、最重要な政治課題となった。難民危機が、支援を巡るギリシャとドイツの力関係を微妙に変えた可能性がある。
 
経済データを見る限り、「ギリシャ危機2015」の景気や雇用への影響は当時予想されていたよりも軽微だったようだ。しかし、実質GDPは、16年1~3月期の段階でも世界金融危機前の水準を25%余り、雇用は15%余り下回っている(図表2)。ユーロ離脱懸念を背景とする預金の流出も止まったものの、水準は回復しておらず(図表3)、資本規制の解除にも至っていない。
 
ギリシャの歳入のGDP比の水準は、EU・IMFによる支援開始からこれまでに、10%も引き上げられている(図表4)。大規模な財政緊縮によるギリシャ経済と社会の疲弊を憂慮する思いは、4本のレポートを執筆した当時も現在も変わっていない。
図表1 ギリシャの一般政府債務残高/図表2 雇用と実質GDP/図表3 ギリシャ市中銀行の民間預金残高とギリシャ中央銀行の資金供給残高/図表4 ギリシャの一般政府歳出入

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経済研究部   上席研究員

伊藤 さゆり (いとう さゆり)

研究・専門分野
欧州経済

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