コラム
2016年06月14日

“エアレース”にみるマーケティング-「見せない」から「魅せる」工夫を!

社会研究部 主任研究員   土堤内 昭雄

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先日、「空のF1」と呼ばれる「レッドブル・エアレース」が千葉・幕張海浜公園前の海上で行われた。今回は昨年に引き続き日本で2度目の開催だ。一日目の予選は強風のために中止になったが、二日目は最高時速370キロの小型プロペラ機による世界最速モータースポーツを観ようと、約5万人のエアレースファンが詰めかけた。観戦チケットは2日間で35万円のプレミアムスカイラウンジから予選日の5千円の砂浜立見席まで観戦エリアごとに各種用意され、ほとんどが完売したそうだ。

会場近くの高層建物からはコース全体をひと目で見渡せるが、まるで模型飛行機を見ているようだ。海岸沿いの道路に近づくと、高さ25メートルのエアゲートを通過する機体はすごい迫力だ。変化する海の風のなかで、正確なコース取りをしながらタイムと操縦技術を競うレースに多くの人の心が惹きつけられる。エアレースの競技方法やルールがわかると一層面白さが増すだろう。

エアレースは莫大なコストがかかるイベントだ。会場近くに飛行機の発着のための滑走路を確保し、海上にコース設定のためのエアパイロンという巨大なゲートを立てる。会場の海岸には多くの観覧席やテントおよび関係クルーの作業スペースを用意し、映像・通信設備などを設置する。広い会場内では公式記念グッズや特産品の販売、飛行機の展示もあり、大勢の観客の整理・誘導も大掛かりだ。

今年はアジアからただ一人参戦している日本人パイロットの室屋義秀選手が初優勝を飾り、大きな注目が集まった。会場内には890名限定の無料パブリックビューイングのエリアもあるが、海岸沿いの歩道からは多くの人が飛行機を見ていた。タダ見を防ぐためか歩道には目隠しネットが張ってある。確かにコストの高いイベントだけにフリーライダーを排除することは必要だと思うが、歩道や橋梁に目隠しネットを設けることが本当にマーケティングとして有効なのだろうか。

来年以降も同レースが日本で開催されるかは明らかでないが、今後もエアレースが日本で定着・発展するためにはどうすればよいのか。ひとつは会場のレース情報を充実させることなどによりファンが一層レースを楽しめる観戦エリアのプレミアムを高めることだ。

一方で、エアレースファンの底辺を拡大するためには、多くの人に飛行機を見てもらうことが必要だろう。2016年は世界7か国・8都市で行われるエアレースだが、今後、日本社会で人気イベントとして幅広く受け入れられるためには、目隠しネットで飛行機やレース自体を「見せない」のではなく、会場の内外を問わずさまざまな人たちにエアレースを「魅せる」工夫が必要ではないだろうか。

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社会研究部   主任研究員

土堤内 昭雄 (どてうち あきお)

研究・専門分野
少子高齢化・家族、市民社会・NPO、都市・地域計画

(2016年06月14日「研究員の眼」)

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