2016年02月29日

札幌オフィス市場の現況と見通し(2016年)

  竹内 一雅

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4. 札幌におけるコールセンター需要

札幌市のオフィス市場にとって、コールセンターは最も重要な業種である。近年、コールセンター需要は増加を続けており、2015年も企業数で+8社(前年比+10.5%)、常用雇用者数で+1,600人(同+6.4%)と着実な増加が見られた(図表-10)。
札幌市では、札幌市役所による支援策4に加え、家賃・賃金の安さや標準語に近い言葉遣いなどの強みからコールセンター事業者からの強い開設需要が続いている。しかし、最近の活発なコールセンター立地に伴い、コールセンターに適したビルでの空室不足が深刻化しつつあり、すでに札幌市外の道内立地が散見され始めている。特に大手アウトソーサーに空室不足の深刻化の認識が強く、今後、コールセンターの大規模需要をとりこぼす可能性が懸念される。
札幌市内では新耐震基準以前(1981 年以前)に竣工したオフィスビルのストックが40%と、主要都市で最も高く築年の経過したビルが多い(図表-11)。過去の市況低迷や最近の建築コストの上昇などが建替えを遅らせていると思われるが、コールセンター需要の一層の取り込みや東京本社企業等のBCPを考慮したリスク分散立地5を促すためにも築古ビルの更新促進は重要と思われる。
 
図表-10 札幌市内コールセンター・バックオフィス企業数・雇用者数/図表-11 国内主要都市における新耐震基準以前(1981年以前)に竣工したオフィスストックの比率
 
4 札幌市では本社機能の移転誘致を強化している。アクサ生命のコールセンターも札幌本社内に設置されている。コールセンター立地への公的補助金としては、札幌市「コールセンター・バックオフィス立地支援制度」などがある。
5 2015年4月にアメリカンファミリー生命保険が、東京本社機能の一部(ITシステム開発)の一部を、災害リスク分散を目的に札幌市に移転する。2014年11月にはアクサ生命保険が災害リスク対応で札幌本社を設立し東京との2本社制を採用した。

5. 札幌の新規供給・人口見通し

5. 札幌の新規供給・人口見通し

札幌は他の主要政令指定都市と比べ、オフィスビルの新規供給が少ない都市である。三幸エステートによると2006年から15年までの供給量は5.4万坪(うち2万坪が2006年)で、これは札幌より人口規模が下回る福岡の8.3万坪、仙台の7.9万坪を下回る。2015年の新規供給は1.6千坪、2016年は全く予定されておらず、供給圧力の低さから2016年もさらなる市況の改善が期待される(図表-12)。
2015年の札幌市の転入超過数は8,106人で2011年以来、8千人以上の水準を維持している(図表-13)。2011年~2015年の累計転入超過数は4.6万人で主要政令指定都市の中で最も多い。札幌市の人口移動では、20代前半の女性の純流入が多い一方、20代から30代男性の純流入が少なく、30代後半以上の各年齢層でも着実な純流入がみられるという特徴がある(図表-14)。
ここ数年は、人口規模の大きい団塊世代が65歳以上となるため、全国的にも生産年齢人口(15~64歳人口)の大幅な減少が続いているが、札幌市では30代後半以上での転入超過などから、2015年の人口は事前の予測ほどには減少しなかった6(図表-15)。
 
図表-12 札幌の大規模賃貸ビル新規供給計画/図表-13 主要都市の転入超過数/図表-14 札幌市男女年齢別転入超過数(2015年)/図表-15 札幌市の生産年齢人口(15-64歳)の人口推移
 
6 札幌市の2015年の生産年齢人口の減少は▲5,342人で、2014年は▲1万5千人以上の減少だった。市外からの順調な転入は、オフィスワーカー数の増加をもたらし、オフィス市況の下支えになると考えられる。

6. 札幌のオフィス賃料見通し

6. 札幌のオフィス賃料見通し

札幌におけるオフィス供給計画や生産年齢人口の転入超過状況、経済予測7などに基づくオフィス需給の見通しから、2021年までの札幌のオフィス賃料を予測した。
推計の結果、札幌市のオフィス賃料(標準シナリオ)は、今後、2016年(下期、以下同じ)までに2015年比で+5.3%上昇した後、2017年の消費税率の10%への引き上げを契機に下落に転じ、2021年に2015年比で▲8.1%まで下落するが、2022年には上昇し2015年比で▲4.2%になると予測された(図表-16)。
楽観シナリオでは2017年(2015年比+13.6%)まで賃料は上昇し、その後下落するが2021年の同+5.4%を底に上昇に転じ、2022年に同+10.1%という結果だった。悲観シナリオでは、2016年に2015年比+0.6%の上昇となった後に下落し、2021年の同▲24.3%を底として、2022年は同▲22.9%にわずかながら上昇すると予測された。
 
図表-16 札幌オフィス賃料見通し
 
7 推計で利用した経済成長率は以下の経済見通しを参照して設定した。ニッセイ基礎研究所保険研究部・経済研究部「中期経済見通し(2015~2025年度)」(2015.10.9)ニッセイ基礎研究所と斉藤太郎「2016・2017年度経済見通し(16年2月)」(2016.2.16)ニッセイ基礎研究所。なお、消費税率は2017年に10%、2021年に12%に引き上げられると想定している。

7. おわりに

7. おわりに

札幌市のオフィス市況の改善はこれまで、コールセンターによる需要と新規供給の少なさに依存する部分が大きかった。2015年もコールセンターの立地が進んだが、そのために、すでに少なくなりつつあったコールセンターに適したビルの空室不足が深刻化しつつある8。2015年に開設したコールセンターでは、インハウスの中小規模のコールセンターの開設が目立ったようだ。その一方で、コールセンター以外でも、アウトソーシングの事務代行やIT系の開発センターの進出、中小規模を中心に館内増床などが広範囲に見られたことなどから空室率は大きく低下した。現在のオフィス需要の強さは当面続くと考えられる上に、2016年は大型以上のビルの供給がないため、市況の改善がさらに進むことが期待される。
本稿のオフィス市況予測によると、今後は2017年の消費税率引上げと札幌駅前通共同ビルの竣工、2018年の札幌創世1.1.1.区北1西1地区の再開発ビルの供給などにより、成約賃料は2017年から下落が始まるという見通しとなった。ただし、コールセンターを中心とした需要の強さから、オフィスの空室・二次空室は早期に埋まり、賃料の下落幅は大きくないと考えられる。
中長期的に札幌のオフィス市場の成長を図るためには、コールセンター需要のさらなる取り込みに加え、転出超過となっている20代後半の男性の職場不足への対策や、大幅な転入超過が見られる20代の女性や50代以上の中高年の方々の働く場所の確保として、ゲームなどのコンテンツ産業・IT系企業、バイオ産業、インバウンド関連産業等のさらなる起業・誘致・成長は欠かせない。
札幌は主要政令指定都市の中でも築古ビルの比率が高く、建替えがなかなか進展していない都市である。オフィス市場の活性化だけでなく、ビルの耐震性の確保などのBCP対応や省電力、さらには街のにぎわいづくりのためにも築古ビルのさらなる更新が進むことが望まれる。
 
 
8 コールセンターに適したビルの減少に加え、2015年は札幌市の有効求人倍率の上昇も顕著であり、コールセンターでの人材確保が札幌でもしだいに難しくなりつつあるようだ。札幌市の有効求人倍率は、2012年度(平均、以下同じ)の0.63倍から、2014年度は0.95倍に、2015年は1月の0.87倍から11月には1.16倍にまで上昇している。こうした人材確保が困難になる中で、正社員雇用など中核人材の確保・育成も進んでいる。
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竹内 一雅

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(2016年02月29日「不動産投資レポート」)

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