コラム
2016年01月26日

「幸せ」のライフデザイン-“What”から“How”の時代へ

社会研究部 主任研究員   土堤内 昭雄

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厚生労働省の「新規学卒者の離職状況(平成24年3月卒業者の状況)」をみると、大学卒業後3年以内に離職する人は32.3%とほぼ3人に1人に上る。仕事には自己実現ややりがいも重要で、より適性を活かした仕事を選択することが望ましいが、最初から思うような仕事に就くことは難しい。しかし、多少とも不本意と思われる仕事も、働き方によっては大きな付加価値を生むことができる。何を仕事にするか“What”も大事だが、どのように仕事をするか“How”が極めて重要ではないだろうか。

私は週末に自宅近くの大型スーパーマーケットによく出かける。そこにはレジが20台ほどあるが、たいていどこも長い列ができている。並んでいる間に特にすることもないので、時々、レジ係の動作を観察してみる。レジ係の業務はマニュアル化されており、どのレジに並んでも、まずは両手を揃えて「いらっしゃいませ」、最後に「ありがとうございます」と言う。

どのレジ係もジョブディスクリプションに基づき業務を遂行していると思われるが、実際の所作は千差万別だ。しっかり顧客と目を合わせて挨拶する人もいれば、気もそぞろに形式的に言葉をかける人もおり、仕事の質という点では雲泥の差がある。レジ係にはパートタイム雇用の人が多いが、同じマニュアルに基づく業務を行う場合も、心のこもった対応は扱う商品まで新鮮に感じさせる。そして何よりも従業員自身が活き活きと幸せそうに輝いて見える。

スーパーマーケットでは多くの高級食材も売っている。100グラム2000円の霜降り和牛や1万円を超えるマスクメロンなどもある。高級料理には高級食材が必要だが、高級食材を使った料理が必ずしもおいしい食事とは限らない。仕事上の接待で神経をすり減らしながら高級料理を食べても、あまりおいしいとは感じないだろう。気が置けない仲間と楽しく語りながらの食事は、簡素な素材を使った料理でも旨い。料理も何を食べるか“What”ではなく、どのように食べるか“How”が大切だ。

経済成長が物の豊かさをもたらしてきたが、それが一定の水準を超えると人々の生活満足度や幸福度の向上と一致しない「幸福のパラドクス」が生じる。今、日本では訪日外国人による「爆買い」が話題になっているが、多くの日本の人々が幸せな暮らしを求めてたくさんの物を必要とした大量生産・大量消費の時代は終焉を迎えた。本当に豊かで幸せな暮らしを実現するためには、「何」“What”ではなく、「どのように」“How”が重要な時代になっているのである。“What”から“How”へ、そこには時代と共に移り変わる「幸せ」のライフデザインを描くためのヒントがあるように思う。
 
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社会研究部   主任研究員

土堤内 昭雄 (どてうち あきお)

研究・専門分野
少子高齢化・家族、市民社会・NPO、都市・地域計画

(2016年01月26日「研究員の眼」)

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