2015年12月25日

家計調査15年11月~11月の消費関連指標は総じて弱め

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.3ヵ月連続の減少

総務省が12月25日に公表した家計調査によると、15年11月の実質消費支出は前年比▲2.9%(10月:同▲2.4%)と3ヵ月連続の減少となり、事前の市場予想(QUICK集計:前年比▲2.3%、当社予想は同0.0%)を下回る結果となった。前月比でも▲2.2%(10月:同▲1.3%)と3ヵ月連続の減少となった。

月々の振れが大きい住居、自動車などを除いた実質消費支出(除く住居等)は前年比▲2.9%(10月:同▲2.4%)、前月比▲1.8%(10月:同▲0.4%)といずれも3ヵ月連続の減少となった。

実質消費支出の動きを項目別に見ると、設備修繕・維持などの住居(前年比18.4%)は高い伸びとなったが、気温が高めに推移し冬物衣料が不振だったことなどから、被服及び履物が前年比▲13.8%の大幅減少、テレビ、パソコンの落ち込みなどから教養娯楽が前年比▲5.8%の減少となるなど、10項目中8項目が減少(2項目が増加)した。

実質消費水準指数(除く住居等、季節調整値)は前月比0.7%(10月:同▲1.6%)と2ヵ月ぶりに上昇したが、10月の落ち込みを考えると戻りは弱い。10、11月の指数平均は7-9月期を▲2.2%下回っている。
 
消費者支出の推移/消費水準指数の推移(前回増税時との比較)

2.11月の消費関連指標は総じて弱め

家計調査の実収入と毎月勤労統計の現金給与総額 家計調査の消費支出はサンプル要因から実態よりも弱い動きとなっているとの指摘がある。確かに、家計調査(勤労者世帯)の実収入(名目)は9月が前年比▲1.5%、10月が同▲0.6%、11月が同▲1.4%と減少が続いており、毎月勤労統計の現金給与総額の伸びを大きく下回っている(毎月勤労統計の11月分は未公表)。逆に、15年2月から8月までは家計調査の実収入の伸びが大きく上回っていた。両者の定義が異なること、実収入と消費支出が必ずしも連動するわけではないことには留意が必要だが、足もとの家計調査はサンプル要因により弱めに出ている可能性がある。

もともと家計調査は振れの大きい統計であるため、消費の基調を判断するには月々の振れを均してみること、他の消費関連統計の動きと合わせてみることが必要である。
家計調査以外の11月の個人消費関連指標を確認すると、商業動態統計の公表は12月28日だが、すでに発表されている百貨店売上高は訪日外国人向けの売上増は続いてものの、平均気温が高く冬物衣料が不振だったことや、土・日・祝日の数が前年よりも少なかったことなどから前年比▲2.7%(店舗調整済)と8ヵ月ぶりのマイナスとなった。また、持ち直しの動きが続いていた自動車販売台数(軽自動車を含む)は、11月には前年比▲7.6%と10月の同▲4.0%から減少幅が拡大し、季節調整値(当研究所による試算値)では4ヵ月ぶりに減少した。11月の消費関連指標は総じて弱めだった。

雇用所得環境の改善を背景に個人消費は緩やかに持ち直していると判断されるが、足もとの消費関連指標は想定を下回る動きとなっている。12/8に公表した経済見通しでは、GDP統計の個人消費は15年7-9月期の前期比0.4%に続き10-12月期も同0.4%の増加を予想していたが、本日の家計調査の結果を受けて10-12月期の減速は避けられない状況となってきた。12月の消費関連指標の結果次第では2四半期ぶりの減少となる可能性もあるだろう。
 
百貨店売上高の推移/新車販売台数(含む軽自動車)の推移
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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2015年12月25日「経済・金融フラッシュ」)

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