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- 景気ウォッチャー調査(15年11月)~停滞感は拭えず、4ヵ月連続で50を下回る
1.景気の現状判断DI:停滞感は拭えず、4ヵ月連続で50を下回る
景況感は夏場にかけて足踏みが続き、8月以降原数値が好不況の分かれ目である50を下回るなど、依然停滞感が拭えない。11月調査では、円安による材料価格の高騰や中国の景気減速への懸念が依然根強い中、パリのテロ事件を受け海外情勢への不透明感が一気に高まった格好だ。また、低迷が続く個人消費の下支えとなっているプレミアム付商品券への期待が薄らいでいることに加え、暖冬による冬物衣料品の不振といった特殊要因もあり、景況感は家計動向関連を中心に大きく悪化した。
コメントをみると、インバウンド関連が依然多いものの、プレミアム付商品券関連のコメント数は減少傾向にある(最終頁の図参照)。中国の景気減速や物価上昇などの不安材料がある中で、押し上げ効果が薄らいでおり、景況感は停滞感を一段と強めている。
2.暖冬による冬物不振、テロ事件など海外情勢の悪化が下押し
家計動向関連は、飲食(前月差▲1.6ポイント)、サービス関連(同▲1.4ポイント)が小幅な悪化に留まったものの、小売(同▲5.6ポイント)での大幅な悪化が目立った。コメントをみると、「暖冬の影響で売上が伸びていない。安くて良い物を必要なときに購入する客の様子が顕著である」(中国・商店街)といったように、暖冬による冬物衣料品の不振が影響したほか、「パリのテロ事件後、欧州方面の予約客のキャンセルが相次いでいる。また、新規の予約客が入らない状況である」(東海・旅行代理店)など、パリのテロ事件の影響による観光需要低下が景況感を下押ししたようだ。これまで個人消費の下支えとなっているプレミアム付商品券に関するコメントについては、「10月末までのプレミアム付商品券の影響か、11月に入ってから売上が減っている。街中の人出も減っている。景気刺激策のはずが、平均するとやはり消費は上がらないようだ」(北陸・商店街)といったように、徐々に消費押し上げ効果が薄らいでいる点を指摘するコメントが散見された。
企業動向関連は、製造業(前月差+0.7ポイント)、非製造業(同+0.1ポイント)ともに前月から改善した。製造業では、「中国経済の減速で、中国から破格の輸入品が入ってきており、市場価格が下がるなど混乱している」(近畿・金属製品製造業)など、中国の景気減速の影響を不安視するコメントが目立つ一方で、「各業態の物量が安定していることと、業界を超えた人員不足による人件費高騰の問題は続いているものの、トラック輸送に必要不可欠な燃料費が下がっていることで、収益が良くなっている」(沖縄・輸送業)といったコメントのように、原油価格下落が業績改善に寄与しているなどの好材料も見受けられた。
雇用関連は、4ヵ月ぶりの改善となり雇用情勢が改善基調にあることを改めて示す結果となった。「10月の新規求人数が前年同月比19.5%増と今年度最大の増加率となっている」(南関東・職業安定所)や、「月間有効求人数が69ヶ月連続で前年を上回り、月間有効求職者数が48ヶ月連続で前年を下回った」(北海道・職業安定所)といったコメントからも、労働需給の逼迫した状況が窺える。
3.先行きも不透明感から足踏みが続く
企業動向関連は、「世界的なテロや中国経済の停滞により、市場は不安定となり、全体的に減速に向かう。」(近畿・金属製品製造業)といったコメントからも、企業は海外景気への警戒感を強めていることが窺える。一方、「好材料として原油価格が下がり、燃料コストも下がって見通しが良い部分もある」(北関東・輸送業)など、原油価格下落に伴うコスト低下を好感する声も目立つ。
雇用関連は、「先月同様、中国経済の景気後退に伴って、日本企業にも影響が出始めているのではないかと懸念される」(四国・職業安定所)といったコメントのように、中国の景気減速への懸念が依然根強い一方で、「年末年始商戦を控えて、流通、物流、飲食の人材需要が高まることが見込まれる」(北海道・人材派遣会社)など、年末年始における雇用の拡大を期待するコメントも見受けられた。
個人消費の低迷が続く中、株高やインバウンド効果などが景況感の下支えとなっているが、中国経済の動向など海外情勢の不透明感や物価上昇への懸念もあり、足踏み状態が続いている。個人消費は、名目賃金の伸び悩みなどから本格的な回復に向かうことは期待できず、景況感を押し上げるまでには至らないだろう。新たな押し上げ材料が不在の中、根強い中国景気の先行きや物価上昇への懸念が終息しない限り、景況感の足踏み状態は長引く恐れがあるだろう。また、新たに不安材料となったテロ事件など海外情勢に左右される不安定な状況が予想されるため、今後の動向に注意が必要だ。
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岡 圭佑
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(2015年12月09日「経済・金融フラッシュ」)
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