コラム
2015年07月08日

日韓比較(3):高齢化率 ―2060年における日韓の高齢化率は両国共に39.9%―

生活研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 金 明中

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前回は日韓における出生率の比較を行ったので、今回は両国における高齢化率を比較してみたい。6月12日に発表された『平成27年版高齢社会白書』によると、2014年における日本の高齢化率は26.0%(高齢者数3,300万人)で2013年(25.1%、高齢者数3,190万人)に比べて0.9ポイントも上昇し、過去最高を更新した。さらに今後も総人口が減少する中で高齢化率は継続的に上昇し、2060年における高齢化率は39.9%に達することが予想されている。特に、後期高齢者の増加が目立っている。2014年現在12.5%である後期高齢者の割合は、団塊世帯のすべてが後期高齢者になる2025年には18.1%に、さらに2060年には26.9%まで上昇し、4人に1人以上が75歳以上という超高齢社会が到来すると見通されている。

図1 日韓における高齢化率の推移と将来推計

では、韓国の高齢化の状況はどうだろうか。2014年における韓国の高齢化率は12.7%で日本の26.0%に比べてかなり低いことが分かる。韓国の高齢化率が日本より低い理由としては、ベビーブーム世代が生まれた時期が日本より遅く、ベビーブーム世代の期間が日本より長かったこと(日本は1947~1949年、韓国は1955~1963年)や、2000年までは日本より高い出生率を維持していたこと、韓国の平均寿命が日本より低い(日本(2013年)→男性80.21歳、女性86.61歳、韓国(2012年)→男性77.9歳、女性84.6歳)こと等が考えられる。しかしながら、2001年以降韓国の出生率は回復の兆しを見せておらず生まれる子どもの数は毎年減少している一方、平均寿命の上昇により高齢者の数は増え続けており、早いスピードで高齢化が進んでいる。つまり、2014年現在12.7%であった高齢化率はベビーブーム世代が高齢者になる2020年から急速に上昇し始め、2060年には39.9%に達すると推計されている。偶然ではあるが、2060年における日韓の高齢化率は39.9%で同一であり、それは韓国の高齢化が日本を上回るスピードで進行した結果である。

図2は、高齢者一人を支える現役世代の数(15~64歳人口/65歳以上人口)の推移と将来推計を日韓でみたものであり、この数値が小さくなることは現役世代の負担が増加することを意味する。例えば、日本の場合1960年には現役世代11.2人が高齢者一人を支えていたが、2014年にはその数が2.4人に減り、さらに2060年には1.3人まで減ると予想されている。韓国の場合は日本より現役世代の減少幅が大きく、高齢者一人を支える現役世代の数は1960年の20.5人から、2014年には5.8人まで急速に低下しており、さらに2060年には1.2人になり、日本を下回ることが見通されている。現役世代の減少や高齢者の増加は、将来、労働力人口の不足や社会保障制度の持続可能性を弱めさせる要因に繋がる。

図2 高齢者一人を支える現役世代の数の推移と将来推計

日本の社会保障制度は韓国より長い歴史を持ち、将来にわたる財政運営について長期間にわたる対策を実施してきた。それでも、予想を上回る少子高齢化の進行により社会保障に対する国庫負担や個人の負担が増加し、若い世代を中心に社会保障制度に対する不安感が払拭されていない。

韓国の場合は日本より深刻な状況である。日本より社会保障制度の歴史が短い韓国は、将来の財政運営を準備する期間が十分ではない状態で急速な少子高齢化という波に直面することになる。韓国政府は財政安定のための制度改革をすぐにでも実施する必要があるが、これに対する国民のコンセンサスを得るのはそう簡単ではない。

今後日韓政府がどのような対策を実施し、少子高齢化の波を超え、社会保障制度の持続可能性を維持させて行くのか、両国の対策に注目するところである。

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生活研究部   上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任

金 明中 (きむ みょんじゅん)

研究・専門分野
労働経済学、社会保障論、日・韓における社会政策や経済の比較分析

(2015年07月08日「研究員の眼」)

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