2025年03月28日

韓国における最低賃金制度の変遷と最近の議論について

生活研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 金 明中

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■要旨
 
  • 1997年のアジア経済危機以降、韓国社会では労働市場の二極化が進み、貧困と格差が社会的問題として浮上した。
     
  • 韓国政府が貧困と格差の問題を解決する手段の一つとして実施したのが最低賃金制度であり、1988年に導入された最低賃金は2025年には1万ウォンを超えるなど、韓国の労働者の生活を安定させる役割をしてきた。
     
  • 韓国の最低賃金は日本と異なり、産業や地域を問わず全国一律の最低賃金が適用されている。また、韓国における最低賃金制度を含む社会政策の主な特徴は、政権により制度の優先順位が大きく変わることである。
     
  • 最近は、最低賃金制度の実効性を高めるために、使用者側などは日本が実施している地域別最低賃金や特定(産業別)最低賃金の導入が必要だと主張しており、労使の間で対立が続いている。
     
  • 政権により政策の優先度が大きく変わる韓国において最低賃金がどのように変わっていくのか今後の動きに注目したいところだ。/li>


■目次

I.はじめに
II.韓国における最低賃金の概要
  1.最低賃金の歴史
  2.韓国における最低賃金の決定過程
III.日本と比較した韓国の最低賃金の水準
IV.最低賃金と関連した議論
  (1) 進む労働市場の二極化と雇用形態の二極化、解決策は最低賃金の引き上げ?
  (2) 最低賃金に対する議論
V.今後の課題

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年03月28日「基礎研レポート」)

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生活研究部   上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任

金 明中 (きむ みょんじゅん)

研究・専門分野
高齢者雇用、不安定労働、働き方改革、貧困・格差、日韓社会政策比較、日韓経済比較、人的資源管理、基礎統計

経歴
  • プロフィール
    【職歴】
    独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年9月ニッセイ基礎研究所へ、2023年7月から現職

    ・2011年~ 日本女子大学非常勤講師
    ・2015年~ 日本女子大学現代女性キャリア研究所特任研究員
    ・2021年~ 横浜市立大学非常勤講師
    ・2021年~ 専修大学非常勤講師
    ・2021年~ 日本大学非常勤講師
    ・2022年~ 亜細亜大学都市創造学部特任准教授
    ・2022年~ 慶應義塾大学非常勤講師
    ・2024年~ 関東学院大学非常勤講師

    ・2019年  労働政策研究会議準備委員会準備委員
           東アジア経済経営学会理事
    ・2021年  第36回韓日経済経営国際学術大会準備委員会準備委員

    【加入団体等】
    ・日本経済学会
    ・日本労務学会
    ・社会政策学会
    ・日本労使関係研究協会
    ・東アジア経済経営学会
    ・現代韓国朝鮮学会
    ・韓国人事管理学会
    ・博士(慶應義塾大学、商学)

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