コラム
2015年06月15日

ガチャガチャ式古書店から考える-今、地域に求められる、人と人をつなげる仕組み

社会研究部 准主任研究員   塩澤 誠一郎

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筆者の自宅付近に、無人の古書店がある。無人と聞いて「?」となる読者がほとんどだと思うが、仕組みはこうだ。一坪ほどのスペースの壁一面に本棚が造りつけられ、そこに並べられた本には、「300円」や「500円」あるいは「300円+500円」の値札が貼ってある。購入する場合、店内に設置されたガチャガチャと呼ばれるカプセルトイに値札の数の100円玉を入れてダイヤルを回し、カプセルを出す。カプセルにはビニール袋が入っていて、それに本を入れて持ち帰るのである。

おそらくさほど儲かりはしないと思われるが、店内の様子からは、店主がどこかこの仕組みを楽しんでいる雰囲気が感じられ、筆者は、このようなことを始める人がいることに大変興味を抱いた。

後日、やはり自宅から遠くないカフェに行ったときに、そこにある書棚の本が、無人古書店の店主によるセレクトであることを知った。カフェの店主に聞くと、よく来るお客さんで、大手企業に勤めるサラリーマンだという。本が好きで、自分がセレクトした本をいろいろな場所に並べて、読んでもらいたいという希望を持っているそうだ。

この話を聞いた筆者は、大いに夢を膨らませた。近所のコミュニティセンターに図書室がある。しかし、あまり読みたいと思わせる本が置かれていないのか、本を手に取って読む人は少なく、実体としては中高生の勉強部屋となっている。この図書室を、ブックカフェとしてリノベーションし、本のセレクトを無人古書店店主にやってもらう。週末になると、フェアトレードコーヒーを扱う店が、出張でコーヒーをふるまってくれる。ソファに座り、ドリップしたおいしいコーヒーを飲みながら、読みたいと思っていた、気になる本を読んで休日のひと時を過ごす。

ときには、利用者同士、読んだ本の魅力を語り合うのもいい。もちろん本をセレクトした古書店店主も交えて。こんなことができれば、普段何も意識しない地域が違って見えるだろう。大げさではなく、ここに住んで良かったと思えるくらい地域の魅力が高まるのではないか。

筆者も、いざ実現しようとすると、公共施設をそんな風に使うことに対し、様々な制約があって難しいことは理解している。市の予算が付かなければリノベーションはできない。業者がコーヒーを販売することは、現状ではおそらく認められないだろう。運営する人や現状で満足しているヘビーユーザーの理解を得るのもきっと簡単ではない。

しかし、自分の好きなことを、それに共感する多くの人とリアルに共有したいと思っている人は、実はたくさんいるのではないか。無人古書店店主は、無人とはいえ自ら店舗を借り、リスクを負うことでそれを実現したのだと思う。このような取組をもっと気軽に実現できる仕組みを地域に用意しておけば、より多くの人が自分の好きなことで、それに共感する人とつながっていこうとするはずだ。住民としても、そうした地域は暮らしていて断然楽しいと思う。

超高齢社会を迎えた今、地域社会が様々な課題に自立的に取り組むことが従来以上に求められている。そのためには、今まで地域社会と接点が乏しかった人も含めた、新しい人間関係を育んでいく必要があるのではないだろうか。共感によって人と人をつなげる仕組みは、必ずやそのきっかけになるはずだ。

様々な制約を乗り越えて、その仕組みをどのようにつくるのか、ブックカフェでコーヒーを飲みながら考えてみたい。

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社会研究部   准主任研究員

塩澤 誠一郎 (しおざわ せいいちろう)

研究・専門分野
都市・地域計画、土地・住宅政策、文化施設開発

(2015年06月15日「研究員の眼」)

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