2015年06月05日

着実なオフィス賃料上昇、取引は前年同期を上回る水準-不動産クォータリー・レビュー2015年第1四半期

基礎研REPORT(冊子版) 2015年6月号

金融研究部 不動産運用調査室長   加藤 えり子

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消費増税後の経済回復は力強さに欠けるが、不動産市場では、地価の上昇が継続し、オフィス賃料も上昇している。物流、ホテルセクターは高い需要を受け新規供給が活発な状況にある。東証J-REIT指数は第一四半期にマイナスとなったが、物件取得総額は昨年と同水準。不動産取引全般では前年同期を上回る取引額となった。

 

1―経済動向と住宅市場

個人消費の持ち直しと企業収益の改善を背景に、景気は緩やかな回復基調にある。2015年3月の日銀短観では、業況判断指数(DI)が大企業製造業は横ばいとなる一方で、大企業不動産業のDIが33と高水準であったことも影響し、大企業非製造業はやや改善した[図表1]。
   住宅市場は、消費税率引上げによる駆け込み需要の反動の後、建設コストと用地価格の上昇もあり新規着工が継続して抑制されてきたが、持ち直しの兆しが現れ始めている。2015年3月の新設住宅着工戸数は、13ヶ月ぶりに前年同月比プラスに転じ0.7%となった[図表2・3]。



 

2―地価動向

3月に公表された2015年1月公示地価は、全国全用途で▲0.3%と前年の▲0.6%から下落率は縮小し、上昇地点割合は32.9%と前年の30.9%からやや増加した。三大都市圏では昨年に続き約半数の地点(51.6%)で上昇。地方圏は69.3%の地点が下落したものの前年の76.1%からは下落地点割合は縮小した。しかし、住宅地、商業地とも上昇地点割合は2007年および2008年の水準には達していない[図表4]。全国で最も上昇率が高かった商業地は、北陸新幹線の開業の恩恵を受けた金沢駅前で17.1%の上昇、住宅地では避難世帯の流入による住宅需要の高まりから、上位10地点の全てがいわき市となった。東京圏の商業地では、上位10地点のうち8地点を銀座が占めた。



 

3―不動産サブセクターの動向

1|オフィス

東京のオフィス市場では、賃料が緩やかではあるが着実に上昇してきている。三幸エステートとニッセイ基礎研究所が共同で開発した成約賃料データに基づくオフィスレント・インデックスによると、2015年第1四半期の東京都心部オフィス賃料は、Aクラスビル で31,166円/坪、前期比+1.9%と3四半期連続で上昇している[図表5]。Aクラスビルの空室率は、4.8%で6期ぶりの上昇となったが、これはまとまった空室を抱えたビルが竣工した影響による。賃貸市況の改善は地方主要都市でも継続しており、仙台を除く主要都市で空室率の改善が見られた[図表6]。



 

2|賃貸マンション

東京都心のマンション賃料は、上昇基調にある。高級賃貸マンションの空室率は低下傾向が続き、それにともない賃料も上昇、2009年第1四半期の水準を上回った[図表7]。



 

3|商業施設・ホテル・物流施設

継続する円安傾向が後押しし、1月から3月の訪日外客数は各月として過去最高を更新した。3月は前年同月比45.3%増の152万6千人で、初めて単月で150万人を超えた[図表8]。
   前年が消費税率引上げの駆け込み需要が生じていた時期であった影響から、2015年3月の百貨店・スーパー・コンビニエンスストアの販売額は前年同期比では総じてマイナスとなった[図表9]。ただし、消費税率引上げから1年前の販売額と比較すると、2015年3月は各業種で13年3月を上回る。特に百貨店(既存店)では、訪日外客数の増加と免税制度拡充の恩恵を受けている。
   ホテルもまた訪日外客数増加を背景に昨年をさらに上回る稼働率を維持、15年3月は、前年同月比+2.0%の81.7%であった[図表10]。力強い需要を背景に、既存ホテルへの投資が活発化するとともに、ホテル会社やデベロッパーによる新規開発計画も相次いでいる。
   シービーアールイー(CBRE)によると、首都圏の大型マルチテナント型物流施設の15年第1四半期空室率は前期から0.2ポイント上昇し4.0%、近畿圏は5.6ポイント上昇の6.0%となった[図表11]。首都圏では新規供給もあったが、リーシングは順調でわずかな空室率上昇に留まった。近畿圏では竣工物件の影響で空室率が上昇したが、需給が逼迫した状況が続いており、新規開発への着手も複数報じられている。



 

4|J-REIT(不動産投信)・不動産投資市場

2015年第1四半期の東証REIT指数(配当除き)は、昨年末の流れを引き継いで続伸して始まったものの、その後は長期金利の不安定な動きや公募増資の増加に伴う需給悪化などを受けて、前年末比▲1.8%下落した。第1四半期のJ-REITによる物件取得額(引渡しベース)は4,961億円で取得環境は引き続き厳しいものの、取得額は前年同期とほぼ同水準となった[図表12]。
   日経不動産マーケット情報によれば、第1四半期の不動産売買高は1兆4000億円で、金融危機後で最も取引が多い四半期となった。J-REITの上場や増資による物件取得に加え、円安が後押しする海外のファンド・投資家による日本への投資、開発を前提とした土地取得も目立った。



 

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金融研究部   不動産運用調査室長

加藤 えり子 (かとう えりこ)

研究・専門分野
不動産市場・投資分析

(2015年06月05日「基礎研REPORT(冊子版)」)

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