2014年11月10日

住宅は、賃借と所有のどちらが有利なのか?

  松村 徹

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試算の前提条件によって異なる結論

新築のマイホームを買って賃貸住宅から住み替え、現在より良好な居住環境を実現した場合、住宅ローンを払い終わった時点で、あるいは平均寿命まで生きた時点で、賃貸居住を続けた場合と比べて金銭的にどちらが有利か、つまりより儲かっている、もしくは損が少ないか、というよくある質問です。
   住宅販売会社が主要な広告主になっている雑誌などの場合は、やはりマイホームが有利という結論が多いように思います。ただし、最近は消費者の情報感度が高くなってきたためか、賃借とマイホームをできるだけ客観的に比較しようとする記事も増えています。
   いずれにしても、一定の前提条件のもとでの試算です。たとえば、現在の金利や住宅価格、家賃、所得の水準とそれらが今後どのように変化するかという長期の将来見通し、住宅ローンの種類や頭金の有無と金額、賃借の場合は頭金相当分を金融商品で運用するかしないか、など条件設定次第でいろいろな結論が導き出せます。そもそも30年以上先までの経済見通しはフィクションの世界といってもよいですし、私たちの人生もこれから何があるかわかりません。
   結局、この質問に誠実に答えようとすれば、試算結果は参考程度で、絶対にどちらかが有利ということはないと考えた方がよい、というべきです。


家賃とローンの比較だけでは不公平

ただし、「家賃を支払うより、家賃と同額程度の住宅ローンを返済した方が資産形成もできて有利」というよくあるセールストークは、顧客の判断をミスリードしかねません。
   まず、マイホーム購入のため新たに頭金を用意するのであれば、ローン返済額に加味する必要があります。また、ローンは不確定要素を除くため、全期間固定金利のタイプを想定しているのでしょうか。さらに、マイホーム取得にかかる取得税・登録免許税、毎年の固定資産税・都市計画税、マンションの場合は毎月の管理費と修繕積立金、これらをマイホームに関わる必要経費としてローン返済額に上乗せして家賃と比較すべきです。
   これに対し、家賃の方も、将来の物価上昇による値上げや、物件の経年劣化による下落を加味するのか、家族の成長に合わせて広くて便利な住宅に住み替えるとして水準を引き上げるのかを考慮する必要があります。
   また、「資産形成もできて有利」といいますが、30年以上にわたって値下がりしないマンションは、都心の一等地などのブランドマンションを除けば、ほとんどないといっていいでしょう。
   このように考えれば、その評価損相当額も返済期間で平準化してローン返済額に加味する必要があると思います。しかし、30年以上先の住宅価格の想定はプロでも非常に難しいといえます。


今後、住宅マーケットが大きく変化

また、このような比較は現在の住宅マーケットを前提としています。しかし、不動産を取り巻く環境は少子高齢化やグローバル化などで大きく変化していますから、長期的にみれば住宅マーケット自体が現在の様相とは大きく変わっている可能性があります。
   すでに、住宅総数が住宅需要である世帯数を大きく上回っており、空き家率は年々上昇しています。今後も新築住宅着工戸数が毎年数十万戸規模で積み上がる一方で、世帯数は早晩減少に転じますから、地域的な偏在や個別物件による差はあったとしても、買い手優位、借り手優位が住宅市場のトレンドになる可能性が高いでしょう。
   このように考えれば、借家より有利だったあこがれのマイホームの多くは、これまで以上に大きな値下がりリスクを抱えることになります。これに対し、賃貸住宅市場の競争激化で、大都市を中心に単身世帯や子育て世帯向けの良質な賃貸マンションが増加しており、「借家はマイホームまでの仮住まい」とは必ずしも言えなくなっています。
   人生のはるか先まで想定した金銭的な損得勘定に左右されず、新築のマイホームだけにこだわらず、生活利便性や家族計画、ライフスタイルに合った住まいを、中古住宅や賃貸住宅にも目を向けてじっくり探したいものです。
   この時、住み替えの自由度の高さが重要なポイントです。賃貸居住は、所得や家族構成の変化などに応じての住み替えがマイホームに比べて容易です。マイホームの場合は、売りやすく貸しやすい、つまり流動性の高い住宅を選ぶことが大切です。

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