コラム
2014年05月13日

「男性不況」下の専業主婦願望~理想と現実のギャップ

  押久保 直也

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内閣府の「男女共同参画社会に関する世論調査」(2012年10月)によると、若い女性の間で専業主婦願望が高まっている。「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきだ」と考える人の比率が前回調査(2009年10月)より10.3ポイント上昇の51.6%となり、1997年以来の50%を超える高水準となった(図表1)。特に20代女性では27.8%から43.7%へ15.9ポイントと顕著に伸びており、男女の性別役割に関する伝統的価値観が復活してきている。製造業を中心に雇用環境がリーマンショック後の最悪な状況から大幅に改善したことなどがその背景にあると考えられる。果たしてこの「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきだ」とする伝統的価値観が再び主流となるのであろうか。

1990年代以降、グローバル競争が激化する中、円高対策やコスト削減のため日本の製造業は新興国を中心とした海外に生産拠点を移転させてきた。しかも、最近の新興国は消費マーケットとしての魅力を高めており、製造業の海外シフトは止まる気配をみせていない。その結果、国内では雇用の裾野が広い製造業の正規雇用が大幅に減少し、正社員の給料自体も減少している。さらに、ここ20年もの間、日本経済はデフレで低迷してきたため、非製造業でも人件費削減策として雇用の非正規化を進めている。このような事実を背景に、男性の給料は1997年をピークとして減少の一途を辿っている(図表2)。もはや男性一人の経済力では、一家全員を支えることが厳しい時代(「男性不況」)に突入している。さらに少子高齢化の進展に歯止めがきかない状況下において、日本の国際競争力が地盤沈下している現実を直視すると、「男性不況」は今後ますます深刻化していくことが予想される。
   このような「男性不況」の中、安倍政権は専業主婦世帯の配偶者控除の廃止・縮小の検討を始めており、成長戦略として女性労働力の活用推進を制度面から全力で推し進めようとしている。さらに、国民の税・社会保険料負担が増加し、物価が上昇基調にあることなどを踏まえると、今後、一定以上の生活水準を維持するには多くの世帯にとって共働きが必須条件となってくる。「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきだ」とする男女の性別役割に関する伝統的価値観の増加の動きと現実には大きなギャップがあり、そのような価値観が主流となることはあまり期待できないだろう。
   妻が正社員として勤務するケースと専業主婦になるケースでは夫婦合わせた生涯賃金の格差は2億円弱にも及ぶと言われており、夫一人で家計を支えていくことが厳しい現状を踏まえると、女性側の意識改革(一家の大黒柱としての意識の醸成)が大切になってくる。同時に妻が定年まで仕事を続けられるよう、男性側も育児や家事に積極的に協力していかなければならない。男女の性別役割がボーダレス化し、最近注目を浴びているイクメンや料理男子が世間一般のスタンダードになる日がいずれ来るのではなかろうか。

政府の目指す「女性がより活躍する社会」に日本を変革していくためには、女性の労働環境改善のみならず、夫婦が協力して仕事・育児・家事を平等に分担していくことが必要不可欠だ。そのためにも、男女共に伝統的価値観から脱却する意識改革を行わねばならない。かくいう筆者も大手料理教室に足を運ぶなど料理男子を目指し、日々努力を重ねているところである。


「夫は外で働き、妻は家を守るべきである」という考え方に関する意識の変化/男性雇用者(民間)平均収入の推移


 
 年収800万円の専業主婦世帯よりも夫婦ともに年収400万円ずつ稼ぐ共働き世帯のほうが税制上世帯可処分所得は多い

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研究・専門分野
日本経済、財政

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