コラム
2014年04月28日

「女性の活躍」と「配偶者控除」-新たな「主婦志向」が模索する女性の社会進出

社会研究部 主任研究員   土堤内 昭雄

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安倍政権の成長戦略のひとつとして「女性の活躍」がある。本格的な人口減少時代を迎え、経済成長のために女性就労の促進が不可欠だからである。政府の税制調査会は、専業主婦世帯の配偶者控除の廃止・縮小の検討を始めた。現行制度では、妻の年収が103万円を超えると、夫の所得控除が減額されるので女性就労を阻害するとされるためだ。また、「女性の活躍」には、就労促進という課題だけではなく、2020年に指導的地位に女性が占める割合を30%程度にするという目標も掲げられている。

では、女性自身は女性の社会進出についてどのように考えているのだろう。内閣府の「男女共同参画社会に関する世論調査」(2012年10月)では、『夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである』に賛成とする回答は51.6%(男性55.2%、女性48.4%)と、2009年の前回調査より10.3ポイント(男性9.4%、女性11.1%)増加している。特に、20~29歳の女性では、27.8%から43.7%へ15.9ポイントも上昇しており、男女の性別役割に関する伝統的価値観を支持するような意識の変化が窺える。

女性の社会進出が進んでいるアメリカにおいても、近年、専業主婦が増えている。アメリカの調査機関のリポート*によると、「18歳未満の子どもがいて外で働かない母親の割合」は、1999年の23%から2012年には29%に増加した。また、高学歴女性の新たな「主婦志向」を描いたエミリー・マッチャー著「ハウスワイフ2.0」(文藝春秋、2014年2月)の「はじめに」には、『キャリアウーマンから新しい主婦へ/親の世代は、企業の中で男性に伍して切磋琢磨し、ガラスの天井をやぶることに価値を置いた。しかし、それが幸せな人生だったか。わたしたちの世代は、企業社会を捨てるのだ』とある。

このような新たな「主婦志向」は、何を意味するのだろう。私は、女性が従来の男性主導の企業社会に組み込まれ、その働き方に同調するような形での社会進出は望んでいないことの現れではないかと思う。彼女たちは、仕事に追われるのではなく、家事や育児を楽しみながら、家族との時間も大切にできる「ワーク・ライフ・バランス」のとれた暮らしや働き方を求めているのではないだろうか。

妻が夫の経済基盤に完全に依存することは、妻と夫双方の人生にとって大きなリスクになり、女性の就労による経済的自立は個人のライフデザインとしても重要だ。しかし、「配偶者控除」の廃止・縮小により女性就労を促進し、「女性の活躍」を図ろうとするならば、男女の賃金格差の是正や仕事と子育てが無理なく両立する就業環境の整備が不可欠だろう。新たな「主婦志向」は、多様な価値観を有するダイバーシティ社会の実現に向けた女性の社会進出のあり方を模索するものではないだろうか。




 
* PEW RESEARCH CENTER “After Decades of Decline, A Rise in Stay-at-Home Mothers(8,April,2014)
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社会研究部   主任研究員

土堤内 昭雄 (どてうち あきお)

研究・専門分野
少子高齢化・家族、市民社会・NPO、都市・地域計画

(2014年04月28日「研究員の眼」)

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