コラム
2013年11月01日

中国共産党の第18期3中全会は歴史に名を残せるか?

経済研究部 上席研究員   三尾 幸吉郎

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中国では11月9~12日の4日間、中国共産党第18期中央委員会第3回全体会議(第18期3中全会)が開催される。昨年11月に開催された第18期全国代表大会(18大)で選出された中央委員(及びその候補)による第3回目の全体会議である。18大の直後に開かれた第1回目の全体会議(第18期1中全会)では、中央委員会総書記、中央政治局常務委員会委員、中央軍事委員会主席、中央規律検査委員会書記などの重要人事が決定された。今年2月に開催された第2回目の全体会議(第18期2中全会)では、全国人民代表大会に推薦する国家指導者の人選や国務院の機構改革・機能転換などが審議・採択されて、国家機構の新組織・新人事が見えてきた。その後、新組織の責任者が順次決定されて新しい指導体制が固まった。そして、今回の第3回目の全体会議(第18期3中全会)では、その新指導部がリーダーシップを取り、改革の全面的深化に関わる重要な問題を検討することになっている。

これまでの3中全会を振り返ると、今から35年前の1978年12月に開催された第11期3中全会では、1976年に毛沢東が亡くなり四人組が失脚して文化大革命が終結した直後だったこともあり、思想を解放し、頭脳を働かせ、実事求是の姿勢で、一致団結して前に向かって進むとの指導方針が確定するとともに、取り組みの重点を社会主義近代化建設へ移行することが決められた。そして、「4つの近代化(四个現代化)(注)」が進んでいった。

また、1993年11月に開催された第14期3中全会では、ソ連崩壊(1991年)で社会主義が深刻な危機に直面する中、当時の最高実力者鄧小平はソ連の失敗の最大の原因は経済にあると整理して、1992年に南巡講話と呼ばれる演説を行い「社会主義にも市場がある」との考えを示した直後だったこともあり、「社会主義市場経済体制を確立する上での若干の問題に関する決定」が採択された。社会主義市場経済体制の基本的な枠組みを制定、近代的企業制度の確立、農村経済体制改革の深化、対外開放の拡大などの方向性が示され、「4つの近代化」はさらに加速していった。

そして、今から10年前の2003年10月に開催された第16期3中全会では、その前年の第16期全国代表大会(16大)で中央委員会総書記に就任した胡錦濤をトップとする指導部がリーダーシップを取って、「社会主義市場経済体制を整備する上での若干の問題に関する中共中央の決定」を採択した。そこでは、中国の経済体制改革は理論と実践の面で重大な進展を遂げたものの、同時に(1)経済構造が不合理、(2)分配関係が不合理、(3)農民収入の伸びが緩慢、(4)就業の矛盾が突出、(5)資源環境の圧力が増大、(6)経済全体の競争力が強くないなどの問題があるとして、社会主義市場経済体制を改善するには「5つの均衡(五个統籌)」を貫徹することが必要とした。5つとは(1)都市発展と農村発展の均衡、(2)社会発展と経済発展の均衡、(3)地域間発展の均衡、(4)人と自然の均衡、(5)国内発展と対外開放の均衡である。これを元とした“科学的発展観”は、その後の18大で、マルクス・レーニン主義、毛沢東思想、鄧小平理論、重要思想「三つの代表」と並ぶ行動指針として党規約(中国共産党章程)に定められ、次の指導部に引き継がれることとなった。

それでは、習近平をトップとした新指導部は、今回の3中全会で審議される「改革を全面的に深化させる上での若干の重大な問題に関する中共中央の決定」で、どのような方向性を打ち出すのだろうか。

まず、中央委員会総書記が交代した直後の3中全会であることもあり、今後約10年に及ぶと思われる在任期間の長さを勘案すれば、政治・経済・社会など幅広い領域における方向性を示すのではないかと思われる。前中央委員会総書記(胡錦濤)の場合にも、就任直後の第16期3中全会では、改革の歴史的経緯を整理した上で、前述の「5つの均衡」の必要性を表明した。そして、公有制経済と非公有制経済、国有企業改革、農村改革、行政改革、財政改革、税制改革、金融改革、対外経済、所得分配制度改革、社会保障システム改善、教育改革、政治改革など様々な論点に関する方向性も示した。

また、筆者は下記の3点に特に注目している。第一に政府と市場の関係をどう整理するかである。新指導部が撲滅しようとする腐敗汚職の根本には、不完全な市場経済に蔓延るレント(利権)の存在があり、監督管理を強化するだけでは限界があり、政府による規制のあり方と市場メカニズムの関係を整理し直す必要がある。それができなければ、守旧派(既得権益層)に反論の余地を残すことになり個別領域でいくら大胆な改革を掲げたとしても実現できない。逆に、それができれば改革が全面的に深化して歴史に名を残す3中全会になるだろう。第二に中央政府と地方政府の関係、地方政府と市場の関係にどこまで踏み込むかである。政府と市場の関係を整理する上では、地方政府と市場の関係にも踏み込む必要がある。また、中央集権化と地方分権化を繰り返した経緯がある中国だが、巨大化した地方政府債務問題の根の深さを考えれば抜本的に見直す時期が来ていると思われる。第三に「新しい4つの近代化」が明記されるか否かである。第11期3中全会の会議公報には「4つの近代化」という言葉が4回も登場したが、新指導部は18大で党規約に定められた工業化、都市化(町を含む)、情報化、農業近代化の推進を「新しい4つの近代化(新四化)」と表現することが多くなってきており、経済発展の現状を踏まえて「4つの近代化」の旗印を刷新する可能性があると思われるからである。

いずれにせよ、今回の3中全会で示される方向性は直ぐに実現できるような簡単な問題ではないが、来年にも検討が本格化すると見られる第13次5ヵ年計画(注)などで具体化することになるだろう。今回の3中全会は、今後の改革が大きく進展するかどうかを占う試金石となりそうである。


 
 (注) 4つの近代化とは、工業、農業、国防、科学技術の4つの分野での近代化の達成を目指した改革の旗印
 (注) 第12次5ヵ年計画(2011-2015年)は2009年2月に検討が本格化し第17期5中全会(2010年10月)で承認された。この経緯を踏まえると、第13次5ヵ年計画(2016-2020年)は、来年2月頃に本格化して再来年に開催見込みの第18期5中全会で承認されると見られる。

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