コラム
2013年06月03日

「歩きスマホ」のリスク社会 -あなたも加害者や被害者になるかも・・・

社会研究部 主任研究員   土堤内 昭雄

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5月20日の本欄で『携帯を持たない私は、やがて絶滅危惧種になるかもしれない』と書いた。それほど携帯電話やスマートフォン(スマホ)は日本社会に拡がっている。特に、スマホの普及は著しく、最近では歩きながらスマホを使用している「歩きスマホ」も日常的によく見かける。

スマホの場合、携帯電話に比べ画面に注意が集中して周囲の状況が分かりにくい。その結果、自ら躓いたり転倒したり、さらには駅ホームからの転落や自動車との接触など、非常に危険な状況が生じている。その上、他の人にぶつかったり、お年寄りや子どもなど移動弱者に危害を加えたりする可能性も高く、スマホは「歩く凶器」とまで言われることがある。

先日、通勤途上のJR駅の上り階段で、目の前の「歩きスマホ」の女性が急に立ち止まった。私はもう少しで激しくぶつかるところだった。もし、あれが下り階段だったら、私は彼女を転倒させ、転倒した彼女が近くの人たちを巻き込む大きな人身事故の発端になっていたかもしれない。その中に高齢者や妊娠中の女性などが含まれていれば、取り返しのつかない事態となっていたことだろう。

このようにスマホが普及した今日、我々は被害者であり、同時に加害者になるリスクの中で暮らしている。今年4月にヤフージャパンが行った『法律や条令での「歩きスマホ」の規制が必要か』を問うネットアンケート結果では、75%が「必要だと思う」と回答している。アメリカ・ネバダ州では「歩きスマホ規制条例」が昨年成立、違反者には85ドルの罰金が課されるという。

「歩きスマホ」の事故防止のためには、価値観により評価が異なる「マナー」ではなく、路上喫煙禁止条例のように客観的に合意の得られる条例等で「ルール化」することが必要だ。これを「マナー」として対応している以上、法的な責任の所在があいまいになってしまうからである。一方、ハード的にもスマホメーカーは、自動車の追突防止装置のような「歩きスマホ」の安全対策を考えて欲しいものだ。

スマホはその名のとおり、スマート(賢明)な意思疎通のためのツールであり、スマホを使う人は「歩きスマホ」による事故が、自分にとってだけではなく、他者や社会にとって如何に重大な影響を与えるのかを慮ることが必要だ。私は、スマホを持たなくても、「歩きスマホ」の被害者はおろか、加害者にさえなりうることを改めて実感し、最近リスク回避のために駅の階段では十分な「人間距離」をとるようにしている。自動車が普及し利便性を享受してきた一方で、それが「走る凶器」と言われた一昔前を思い起しつつ、「歩きスマホ」のリスク社会をスマートに生きる方法を模索したいと思うのである。




 

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社会研究部   主任研究員

土堤内 昭雄 (どてうち あきお)

研究・専門分野
少子高齢化・家族、市民社会・NPO、都市・地域計画

(2013年06月03日「研究員の眼」)

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